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「内緒だぞ、従兄弟には言わんでくれよ」帰省すると、枕の下に入っていた祖父からのお札。大人になって気づいた意味とは

  • 2026.9.7
「内緒だぞ、従兄弟には言わんでくれよ」帰省すると、枕の下に入っていた祖父からのお札。大人になって気づいた意味とは

帰省すると、枕の下にお札が入っていた

父は三人兄弟の真ん中で、一人だけ東京に出た。

私は、その息子にあたる。

子どものころ、盆と正月になると、父と二人で田舎の祖父母の家へ帰った。

古い家で、廊下を歩くたびに床がきしんだ。

玄関に着くと、祖母はいつも私の頭を撫でながら笑った。

「また大きゅうなったなあ。部屋はいつものところでええな」

泊まる部屋も、敷いてもらう布団も毎回同じだった。

そして夜になると、私はこっそり枕の下へ手を入れた。

そこには決まって、お札が何枚か入っていた。

指先に紙の角が触れると、「今回もある」とうれしくなった。厚みだけで、多いか少ないかまで何となく分かった。

当時の私は、それを特別なことだとは思っていなかった。祖父母の家に泊まれば、枕の下にお金が入っている。どこの家でもそうなのだと、本気で思っていたのだ。

祖父が枕の下へ手を入れるところを見た

あるとき、一度だけ祖父がそのお金を入れているところを見た。

私は縁側にいて、祖父が私の泊まる部屋へ入っていくのが見えた。

布団を直すようにしゃがんだあと、枕の下へ手を入れている。

何をしているのか分かって、思わず見ていると、祖父と目が合った。

祖父は少し困ったような顔をして、声を落とした。

「内緒だぞ。従兄弟には言わんでくれよ」

それだけ言うと、何事もなかったように部屋を出ていった。

祖母も同じようにしていたのだと思う。翌朝、台所ですれ違っても、祖母が聞くのはいつもと変わらないことだけだった。

「よう寝られたか」

私も理由を聞いたことはない。

朝になると、起き上がる前にまず枕の下を確認する。そして父には見せず、帰りの電車で窓のほうを向きながら、そっと財布へ移した。

父も一度もそのことには触れなかった。

大人になって初めて、普通ではないと知った

二十代のなかば、友人三人と実家の話をしていたときだった。

私は何気なく、昔から当たり前だと思っていたことを口にした。

「帰省するとさ、枕の下にお金が入ってるだろ。普通」

一人が箸を止めた。

「いや、入ってないけど」

別の友人もすぐに言った。

「そんなの初めて聞いたぞ」

残った一人も同じ反応だった。

三人にそろって驚かれ、私はそこで初めて、あれがどこの家でもあることではなかったと知った。

祖父母はもう、ずいぶん前に亡くなった。田舎へ行くのも、今では冠婚葬祭のときくらいになった。

それでも、あの部屋に泊まると、寝る前につい枕の下へ手を入れてしまう。

何もないことは分かっている。

祖父が隠していたのは、お札だけではなく、東京に出た息子と、その子どもに何かしてやりたいという気持ちだったのかもしれない。

今も、あの枕は同じ場所にある。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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