1. トップ
  2. エピソード
  3. 彼女が毎週買う同じミルクティーを半年飲み続けた俺が、言えずにいたこと

彼女が毎週買う同じミルクティーを半年飲み続けた俺が、言えずにいたこと

  • 2026.9.5
ハウコレ

「本当は、何が好きなの」と聞かれて、俺は半年そらし続けた答えを口にしました。冷蔵庫の景色が変わるまでの話です。

冷蔵庫の扉が閉まる音を合図に、俺は飲みかけのグラスを流しへ運びました。

初めて泊まった日の1本

彼女と同棲を始めて半年。2人で暮らす部屋の冷蔵庫には、初めて泊まった頃から同じ銘柄のミルクティーがありました。あの日、食事のときに出されたグラスを、俺は何も言わずに飲みました。正直に言えば、あの甘さは得意ではありません。それでも、切らさず補充されるのを見て、彼女の好物なのだと思い込みました。最初に黙って飲んでしまった手前、その後も冷蔵庫にあれば注いで飲むのが当たり前になっていきました。

口にできなかった本音

彼女が補充する手つきを見るたび、これは俺のぶんも考えて買ってくれているのだと思い、味の話を切り出せませんでした。冷蔵庫の中身に注文をつければ、俺が来る前から続く彼女の暮らしを塗り替えてしまう気がしたのです。ある日、「これ、いつも同じだね」と言ったのが、俺の精いっぱいでした。彼女は「ただの習慣だよ」と返し、その1本を冷蔵庫の一番手前に置き直しました。俺はいつものようにグラスに注ぎ、最後まで飲み干しました。本音を言うより、飲むほうが楽だったのです。

「本当は、何が好きなの」

数日後、冷蔵庫の前に立っていた彼女が振り返って聞きました。「本当は、何が好きなの」。ごまかす答えなら半年分持っていました。でも、彼女はまっすぐ俺の返事を待っていました。「実はこれ、あんまり得意じゃないんだ」。言ってから、続けました。「君の好きな物だと思ってた」。彼女は驚いた顔をして、それから、あの銘柄が誰の好物だったのかを話してくれました。半年の間、冷蔵庫の中で行き違っていたのは、たった1本の飲み物でした。

そして...

次の買い出しには2人で行き、俺は炭酸水を、彼女は初めて選ぶ果実のジュースをかごに入れました。帰って扉を開けると、種類の違う2本が並んでいました。好みを口に出せば、それだけで済む話でした。半年間、言わずに合わせ続ける必要はなかったのだと、今は思っています。

(20代男性・営業職)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ