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全米各地でGPSに10メートル以上の誤差が発生、犯人はオーロラだった

  • 2026.9.4
全米各地でGPSに10メートル以上の誤差が発生、犯人はオーロラだった
全米各地でGPSに10メートル以上の誤差が発生、犯人はオーロラだった / Credit:Canva

アメリカのエアロスペース・コーポレーション(The Aerospace Corporation)などの研究チームは、2025年11月の巨大磁気嵐の夜、オーロラが明るさを増すたびに、その真下でGPSが狂っていたことを突き止めました。

乱れはほぼ東海岸から西海岸に及ぶ帯に広がり、場所によっては位置の誤差が10メートルを超えていました。

誤差を生んだのは、オーロラの下でGPSの電波が星のようにまたたいたことでした。

しかも舞台は、GPSにとっての「安全地帯」とされてきた中緯度です。

論文では、広い経度にわたる中緯度の強いまたたき(振幅シンチレーション)は一度も報告されていないと記述されています。

はるか上空で光っているだけのオーロラは、どうやって地上の電波をまたたかせたのでしょうか。

研究内容の詳細は2026年8月29日に『Geophysical Research Letters』にて発表されました。

目次

  • その夜、オーロラが南まで伸びてきた
  • オーロラの縁で、電波がまたたいていた
  • あと半年ずれていたら、5億ドル被害が出てきた

その夜、オーロラが南まで伸びてきた

その夜、オーロラが南まで伸びてきた
その夜、オーロラが南まで伸びてきた / 2025年11月の太陽嵐の際に観測されたオーロラ/image:Earth Science and Remote Sensing Unit, NASA Johnson Space Center)

カーナビやスマホの地図で、現在地の点が走ってもいないのに隣の道路へ飛ぶ。

そんな経験は誰にでもあるはずです。

たいていは数秒で元に戻り、原因も高いビルやトンネルなど身近なものです。

ずれがその程度で済むのは、頭上が静かだからです。

GPSの電波は、衛星から地上に届くまでに上空の電気を帯びたガスの層(電離圏)を必ず通ります。

この層にムラができると電波は乱れますが、そうした乱れが起きる場所は、昔から北極圏と赤道付近と相場が決まっていました。

アメリカ本土のような中緯度は、GPSにとって安全な場所だと考えられてきたのです。

しかし2025年11月11日の夜は違いました。

太陽から吹きつけた嵐が地球の磁場を激しく揺さぶり、地磁気の乱れを示す指標(Kp指数)は最大値の9に達しています。

普段は北極圏に近い空でしか見られないオーロラが、この夜は南のフロリダ州中部まで見えうる範囲を広げました。

安全地帯とされてきた空に、オーロラそのものが南下してきたのです。

人々が歓声を上げて見上げたその光の下で、GPSの電波に何が起きていたのか。

研究チームは、カナダ南部に置かれたオーロラ観測カメラの映像と、アメリカとカナダ全土に散らばるGPS受信機のデータを突き合わせました。

オーロラの縁で、電波がまたたいていた

オーロラの縁で、電波がまたたいていた
オーロラの縁で、電波がまたたいていた / Credit:Canva

映像には、東西に長く伸びたオーロラの帯が南へ張り出す様子が写っていました。

オーロラは、宇宙から降り注ぐ粒子が上空の空気にぶつかって光る現象です。

降ってきた粒子は、ぶつかった空気から電子を叩き出します。

そのため光る帯の真下には電子がぎっしり詰まった帯ができ、この夜はほぼ西海岸から東海岸まで横たわっていたのです。

問題は、この電子の帯の南の縁でした。

縁では電子の濃さが崖のように急に落ち込み、そこに差し渡し数百メートルほどの細かなムラが次々に生まれていました。

このムラだらけの層を電波が通り抜けたときに起きることは、夜空の星がまたたく理由とよく似ています。

星の光は、空気のゆらぎを通り抜けるうちに強まったり弱まったりして、目にはまたたいて見えます。

オーロラの下を通るGPSの電波も、ムラをくぐるうちに同じように強まったり弱まったりしていました。

星のまたたきも電波のまたたきも、専門用語では同じ「シンチレーション」と呼ばれます。

GPS受信機は、衛星から届く電波をつかまえ続け、届くまでのわずかな時間差から自分の位置を割り出しています。

その電波が激しくまたたけば、受信機は信号を追いきれなくなり、時間差の読み取りも乱れます。

こうして生まれたのが、10メートルを超える位置のずれでした。

犯人がオーロラだという証拠は、時刻に残っていました。

西経94度の空では、11月12日の午前2時30分、3時7分、4時42分(世界時、アメリカ中部ではまだ11日の夜)にオーロラがひときわ明るく光っています。

そのたびに近くの観測点では電子の濃さとムラが最大になり、GPSの誤差が跳ね上がっていました。

しかも、その帯は止まっていませんでした。

オーロラの帯は秒速およそ340メートル、時速に直せばおよそ1200キロの勢いで南へ広がっていました。

その縁が通り過ぎる場所で、電波が乱れていたわけです。

こうして乱れが研究者の言う「強い」水準に達した範囲は、西経80度から120度という大陸をほぼ横断する帯に及びました。

中緯度でも、磁気嵐のときに電波のタイミングが小刻みに揺らぐ現象(位相シンチレーション)が起きることなら珍しくありません。

しかし、タイミングではなく強さそのものが明滅するまたたきとなると、話は変わります。

中緯度での観測例は一地点での報告が数えるほどしかなく、大陸をまたぐ規模で捉えられたのは今回が初めてです。

あと半年ずれていたら、5億ドル被害が出てきた

あと半年ずれていたら、5億ドル被害が出てきた
あと半年ずれていたら、5億ドル被害が出てきた / Credit:Canva

10メートルのずれは、GPSに命を預ける産業にとって致命傷になります。

論文によれば、GPSで農機を導く精密農業や自動運転車では、誤差が1〜2メートルを超えただけで壊滅的な問題が起こりえます。

今回の乱れは、その限界の5倍以上でした。

示される現在地は、畑なら別の畝へ、道路なら反対車線へ飛びかねません。

実際、2024年5月の磁気嵐は、農作業の季節に、しかも農機が動く昼にGPSを狂わせました。

このときアメリカの農家が被った損失は、5億ドルを超えたと見積もられています。

2025年11月の嵐は、幸いにもその季節を外れていました。

論文は、同じ嵐が農作業の季節に来ていれば、アメリカの農業と運輸に大きな損失が出ていてもおかしくなかったと述べています。

太陽の活動がまだ盛んな今、次の巨大磁気嵐は他人事ではありません。

研究チームは、オーロラの帯が持つエネルギーや南へ広がる速さ、そして粒子の降り込みがどんな大きさの構造を作るのかを把握することが、次の嵐でGPSの混乱を減らす鍵になると結論づけています。

オーロラが本来の空を離れ、南まで広がってきたとき、その光は足元の地図が狂い始めているサインでもあるのです。

元論文

Impacts of Mid-Latitude Ionospheric Dynamics on RF Applications During the November 2025 Superstorm Event
https://doi.org/10.1029/2026GL124645

ライター

ナゾロジー 編集部

編集者

ナゾロジー 編集部

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