1. トップ
  2. カルチャー・教養
  3. 「印象派の先駆者 ウジェーヌ・ブーダン展―瞬間の美学、光の探求」が山梨県立美術館で開催中

「印象派の先駆者 ウジェーヌ・ブーダン展―瞬間の美学、光の探求」が山梨県立美術館で開催中

  • 2026.9.26

「今推しの展覧会」

フリーキュレーターのSEIJIです!

最近は、美術館の展覧会に様々な工夫やサプライズを感じます。そんな美術館の現在をコラムにしてお届けする「今推しの展覧会」。今回、私をググッと惹き付けたのは、空の描写がとても美しいと感じたこの展覧会です。

《干潮》1884年 サン=ロー美術館 © Musée d'art et d'histoire de Saint-Lô, Pierre-Yves Le Meur

日本では約30年ぶりの再来。空の王者と呼ばれた「印象派の先駆者 ウジェーヌ・ブーダン展―瞬間の美学、光の探求」が山梨県立美術館で開催中!

「印象派の先駆者」と呼ばれるウジェーヌ・ブーダンを紹介した山梨県立美術館の展覧会は、日本では約30年ぶりとなる開催。

ウジェーヌ・ブーダンの故郷であるフランス・ノルマンディーをはじめ各地を旅し、空や雲、海、牛の群れや浜辺に集う人々などを、瑞々しい色彩と軽快な筆致で描き出した作品は、大気や光の様子を鋭敏な感覚でとらえています。これは、本当にすごい。

戸外での制作を重視し、常に変化する自然の「瞬間」を表現しようとするウジェーヌ・ブーダンの制作に向かう姿勢は、印象派の巨匠となる若きクロード・モネに大きな影響を与えたのです。

《ブーダン夫人とモネ一家》1875-77年頃 ウジェーヌ・ブーダン美術館、オンフルール Honfleur, musée Eugène-Boudin /Henri Brauner

「空の王者」と呼ばれたウジェーヌ・ブーダンの作品約100点を展示

同展では、油彩、素描、パステルなど約100点で、フランス風景画の発展に寄与したウジェーヌ・ブーダンの魅力を新たな視点から問い直しています。

ウジェーヌ・ブーダンは、常に変化を続ける故郷のノルマンディー地方の空を鋭敏な感覚で描き続け、風景絵画で知られるジャン=バティスト・カミーユ・コローから「空の王者」と呼ばれたのです。

また、海景画も当時から高い人気を誇り、帆船の浮かぶ海や各地の港の情景はウジェーヌ・ブーダンの代名詞とも言える作品です。

《ベルク、出航》1890年 ランス美術館(inv. 907.19.34) C. DEVLEESCHAUWER©

8つの切り口でウジェーヌ・ブーダンの作品を紹介

今回の展覧会では、ウジェーヌ・ブーダンの作品を「海景」「空」「風景」「建築」「動物」「人物」「素描」「版画」の8つの切り口で紹介しています。

海景 海景画家の誕生

フランス・ノルマンディーの港町に生まれ育ったウジェーヌ・ブーダン。画業の初期には海の絵は主軸ではありませんでしたが、1860年代後半から多くの海景画の注文に応えるようになります。ブーダンは各地の港町を訪れましたが、トルーヴィル、ディエップ、フェカンなど自然の要素の残る中規模の港を好んだようです。

《ヴェネツィア、サン・ジョルジョ・マッジョーレ》1895年頃 ランス美術館(inv. 907.19.38) C. DEVLEESCHAUWER©

空 瞬間の美学、光の探求

詩人シャルル・ボードレールはウジェーヌ・ブーダンの空の習作に注目し、ジャン=バティスト・カミーユ・コローは「空の王者」、ギュスターヴ・クールベは「熾天使」と呼んでウジェーヌ・ブーダンの空の表現を称賛しました。

とらえがたい雲や光の動きを観察したブーダンの「瞬間」への探求は、故郷の海沿いの変わりやすい空を相手に展開されました。

風景 バルビゾン派からの学び

19世紀、バルビゾン派の画家たちを中心に自然主義的な風景画が隆盛をむかえますが、バルビゾン派の画家たちはノルマンディー地方もよく訪れており、ウジェーヌ・ブーダンはバルビゾン派の画家たちから風景画を学んだのです。

農民や荷車が行き交う道や、水辺の景色を対岸の建物や橋とともに描く構図は、バルビゾン派からの学びの成果といえるでしょう。

《コルドリーの道、トルーヴィル》1878年 ブーローニュ=シュル=メール市立美術館 © coll. Musée Boulogne-sur-Mer Ville de Boulogne-sur-Mer

建築 旅する画家が見た風景

ウジェーヌ・ブーダンは木造や石造りの建築物も描いています。妻との結婚を機に繰り返し訪れたブルターニュや、オランダ、ヴェネツィアで、その土地の建物を作品にしました。

不定形の雲や光の描写を得意とし、自分では堅固な対象を描くことは困難と言いつつも、自然の中の建築物を生涯描き続けました。

動物 身近なものへの眼差し

ノルマンディー地方は牧畜でも知られています。 1880年代以降、この地に広がる豊かな牧草地で飼育される牛の群れを繰り返し描きました。

人物 戸外の群像表現

ウジェーヌ・ブーダンは、自然の中の人物像を描くことに関心を持っており、浜辺の海水浴客や漁師、川辺で洗濯をする女性などをたびたび描きました。

《水飲み場の牛の群れ》1880年 ランス美術館(inv. 907.19.33) C. DEVLEESCHAUWER©

素描 版画

ウジェーヌ・ブーダンにとって素描は対象の本質を理解するための手段でした。「樹々、空、船、海」と「人物研究」という2つのテーマで約40点を展示しています。

版画ではウジェーヌ・ブーダン自ら制作した版画は2点のリトグラフと1点のエッチングが知られるのみですが、今回の展示では版画のもととなる素描のリトグラフやエッチング10点を紹介しています。

ウジェーヌ・ブーダンを知るイベントも!

また同展では、展覧会に合わせてギャラリートークやワークショップを開催。「空の王者」ウジェーヌ・ブーダンを知ることができたり自分で絵を描いたりと、楽しい機会になることでしょう!

担当学芸員によるギャラリートーク

10月10日(土) 14:00~15:00

集合場所:特別展示室入口

申込不要。参加無料、ただし特別展チケットが必要。

ワークショップ「光と色の絵を描こう」

10月18日(日)10:00~15:30

15名 ※参加無料

申込方法:電話で申し込み。詳細はURLを確認ください。

山梨県立美術館外観

日本では「天高く馬肥ゆる秋」と言われ、高く澄んだ空が美しいと感じる秋の季節。自然が豊かな“芸術の森公園”に立地し、園内から富士山や八ヶ岳など山梨の山々の景色を眺めることができる山梨県立美術館で、「空の王者」ウジェーヌ・ブーダンの美しい空の作品に触れてみてはいかがでしょう。

「いいアートとの出会いは、きっとあなたの心を豊かにしてくれるでしょう」by SEIJI。

展覧会の期間は11月3日(火・祝)まで。展覧会の詳細は下記のURLからご覧ください。

https://www.art-museum.pref.yamanashi.jp/exhibition/2026/75158.html

プロフィール/SEIJI(小太刀正史)

フリーキュレーター。MeDEL個人事務所主催。学芸員の目線から美術館の情報を発信する活動を始める。自身もオブジェ作家として活動歴あり。

OBJECT東京展入選 From A The art日本オブジェ部門佳作 日本文化デザイン会議

ETDA展参加など

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ