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NHKが進める、攻めたドラマ作り:SF編

  • 2026.9.7

社会性のある題材や実験的な手法を取り入れ、ドラマでも高い評価を得るNHK。特に近年顕著なSFについて、局内のキーパーソンと、それぞれに精通する物語の作り手との対談を通じて掘り下げた。

photo: Jun Nakagawa / text: Kazuaki Asato / edit: Emi Fukushima

NHK よるドラ『きれいのくに』
BRUTUS

NHKの総力を集結して、未来を夢見るSFを作る

2025年冬、日本SF史に残るであろう大作がNHKで放送される。その名も『火星の女王』。火星に人類が住む2125年を舞台にした本格SFドラマだ。直木賞作家でSF小説の名手である小川哲さんが、本作のために小説を書き下ろした。

ディレクターの西村武五郎さんは、整形手術が一般化した近未来が舞台の『きれいのくに』(2021年)や、民主主義とAIの共存を描いた『17才の帝国』(22年)などの話題のSF作を手がけてきた演出家だ。盤石の布陣による壮大な作品が、今NHKで生まれる理由を2人に聞いた。

西村武五郎

小川さんにオファーしたのは2022年でしたね。以前、SFドラマを作る際にリサーチとして読んだ小川さんの短編集『嘘と正典』に度肝を抜かれたんですよ。「音楽を通貨とする島」や「共産主義をなかったことにするCIA」など、世界観がすごいなと。

小川哲

当時の僕は『地図と拳』で直木賞を取る前で、この段階で目をつけてくれるとは、西村さんはセンスがいいなと思いました(笑)。

西村

シナリオハンティングのため、H3ロケットの打ち上げを見に、脚本家の吉田玲子さんも一緒に種子島にも行きましたね。

小川

無事打ち上がったかと思いきや、失敗だったんですよね。

西村

あの時は頭を抱えました。というのも『火星の女王』は、JAXAの火星探索計画、通称「MMX計画」を見据えた企画でした。その衛星にはNHKのスーパーハイビジョンカメラも搭載される予定で。そうするとニュース番組で「今日の火星」といった映像が流れ、火星が身近な存在になることを見越していたんです。ところがH3ロケットの失敗で、MMX計画は延期になった。

小川

火星の映像も物語に組み込んでいましたが、書き換えましたね。

西村

なんとか形にしてもらい、本当に感謝しきれないです(笑)。

ハードSFを下支えする部署を横断した協力体制

小川

執筆に当たって、NHKのサイエンスチームと話せたのはありがたかったです。『火星の女王』の舞台は2125年。地球と火星の間を人と物資、情報が行き交う世界ですが、その世界観を描くためには、公転周期に合わせて地球と火星の距離を正確に把握しなくちゃならないし、ロケットの性能も知る必要があった。そこをサイエンスチームが教えてくれ、場合によっては専門家の方につなげてくれました。

西村

NHKの部署で、ドラマ部と科学部は同じフロアで隣り合ってるんですよ。だから気になることがあったらすぐに聞ける。種子島に行けたのも彼らのおかげです。

小川

自分一人だったら、こんなに緻密な小説はなかなか書けない。

西村

NHKには、膨大なアーカイブがあり、取材力もある。その財産を使えるから、歴史もののドラマやドキュメンタリーは、上質なものが作れるんですね。僕も『未解決事件 File.08 JFK暗殺』(20年)を撮りました。でも自分にも子供が生まれて、親になったからなのか、過去のロマンだけじゃなく、未来の夢も見せたくなったんです。

小川

これまでの100年だけじゃなく、これからの100年。

西村

NHKは「少年ドラマシリーズ」で、SFを扱ってきた歴史もありますしね。ただ、日本のドラマでは、オリジナルでSFの世界観を構築してきたことがあまりなく、そこは小川さんの力を借りました。小説家は世界を生み出す想像力が桁違いなので。

小川

人間ドラマは、吉田さんの脚本が担ってくれた面が大きいです。

西村

NHKの部署を超えた関係性と、小川さん、吉田さんとのコラボレーションがなければ、この大作は作れなかったです。

西村武五郎が手がけた、本格SFドラマ

NHK放送100年特集ドラマ『火星の女王』
放送100年特集ドラマ『火星の女王』  総合/2025年12月〜全3回で放送予定/物語の舞台は2125年。10万人が火星に移住した世界に、未知の力を持った謎の“物体”が現れる。主演は台湾生まれのスリ・リンと、菅田将暉。
NHK 土曜ドラマ『17才の帝国』
土曜ドラマ『17才の帝国』  総合/2022年5月~6月放送/斜陽国家・日本を立て直すべく、AIによって選ばれた17歳の真木亜蘭(神尾楓珠)を総理大臣に据えた実験都市が生まれる。NHKオンデマンドで配信中。
NHK よるドラ『きれいのくに』
よるドラ『きれいのくに』  総合/2021年4月~5月放送/整形手術が一般化し、成人男女の顔が2パターンになった不条理な世界を生きる高校生たちを描いたジュブナイルSFドラマ。脚本は劇作家の加藤拓也が担当。NHKオンデマンドで配信中。</figcaption>  総合/2021年4月~5月放送/整形手術が一般化し、成人男女の顔が2パターンになった不条理な世界を生きる高校生たちを描いたジュブナイルSFドラマ。脚本は劇作家の加藤拓也が担当。NHKオンデマンドで配信中。

profile

NHKドラマディレクター・西村武五郎
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西村武五郎(NHKドラマディレクター)

にしむら・たけごろう/2004年NHK入局。ドキュメンタリー制作等を経て、ドラマディレクターに。大河ドラマ『龍馬伝』『いだてん』、朝ドラ『あまちゃん』『まれ』を担当したほか、SF作も精力的に制作している。

profile

作家・小川 哲
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小川哲(作家)

おがわ・さとし/1986年千葉県生まれ。2015年に「ユートロニカのこちら側」でデビュー。17年の『ゲームの王国』(早川書房)で日本SF大賞を受賞。22年の『地図と拳』(集英社)で直木賞を受賞した。

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