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トム・ブラウン布川ひろきのエッセイ連載「おもしろおかしくとんかつ駅伝」/ 第30回「辞めた芸人」

  • 2026.8.31

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お笑い芸人としてブレイクする確率を計算した人がいて、確率的には東大に入るより難しいという数字だったというのを聞いたことがあります。

まぁ(芸人からすれば)当然東大生の方がすごいのですが、理論上はということです。なので、やはりブレイクできずに辞める人の方が圧倒的に多いです。

僕の所属している事務所ケイダッシュステージでも僕らと一緒に入ったのが7組くらいいたのですが、今も現役でやっているのは僕らとブチギレ氏原・サカモトというYouTubeやTikTokで頑張っているゴンゴールというコンビだけです。ほぼほぼ辞めてしまうという現実があります。仕方ないです。

ただ、辞めたからといって人生が終わるわけではありません。むしろ、辞めた後の方が長いのです。僕はここ何年か前から、よく辞めた芸人さんに会ったりしています。お笑い辞めた後何をしているのかが気になるというのもありますが、会いたい一番の理由は

「本当のその人になっているから」です。

今まで、30人以上は会ったと思うのですが色んな人がいます。

ある芸人は、割と礼儀がちゃんとしてた後輩だったのですが、辞めた後会ったら

「おー! 久しぶりだな! 最近どう?」

、、、、

聞くと、「もうお笑いを辞めてるからタメ口でいいっしょ」ということだそうです。

また、別の芸人でかなり口が悪かった後輩とご飯に行きました。「お前他の芸人の悪口ばっか言ってたよな!」と言ったら、そいつが僕に

「え、僕そんな人でしたっけ? 僕、最低ですね。」

、、、、

覚えてないの? ビックリしました。

色々話したら、当時は“売れなければいけないプレッシャー”と戦っていたから、どんどん人が悪くなってたのかもしれません。

今は「テレビに出てる芸人さんは全員面白いからテレビを見るのが楽しい」と言っていました。

すごいです。

二人とも芸人をやってた頃とは別人です。

お笑いをやっているから、先輩にとにかく礼儀正しくした方が良いと自分を矯正したり

お笑いをやっていてしんどくて、精神的に追い込まれて噛みつきまくってたり

「ブレイクしたい」という気持ちがあったから、人が変わってしまったというのがあるのです。

良い人だろうが悪い人だろうが、その人的にストレスがないから本当の自分に戻れたなら良かったっちゃあ良かったのかなと思います。

この前、新潟でのお笑いライブに出演させていただきました。そのライブが決まってから僕のLINEが鳴って

「布川さん! 新潟来るんですよね! 観に行きます!」

数年前にお笑いを辞めた兄弟コンビ「マンテンブラザーズ」のお兄ちゃんから連絡がきました。

上京して少しして、「ホッピーの中を満タンにして外をちょっとだけ垂らして飲む」という破滅的な飲み方をしてた男で、アホすぎて仲良くなった芸人です。

お兄ちゃんは体育の先生みたいな見た目で(実際にやっていた)、弟はバンドのボーカルのようなビューティーフェイスのコンビなのですが、このコンビはまぁよくケンカをしていました。普通に取っ組み合いになったりもしていましたし。

「兄弟のくせに仲悪いな!」

みたいなことをよく言ってましたが、そういえば兄弟コンビって家族なので仲悪いって人あんまり見た記憶がなかったなぁと思ってたら

ほどなくしてコンビは解散して、お兄ちゃんは新潟に帰り、弟は一人で東京に残りお笑いをやっていました。

兄弟コンビで片方だけ続けるとかはなかなか珍しいです。

コンビは修復できないくらい仲が悪くなると続けられなくなったりもするので、兄弟コンビでもそんなことあるのかぁとも思っていたりもしました。

その後、弟には1年とか2年に1回くらいだけライブで会うくらいで、なかなか会わなくなり気がついたら

「お笑いを辞めます。」

という風になって、マンテンブラザーズは二人とも辞めていきました。

お兄ちゃんとはたまぁに連絡を取ったりしていたので何となくの動向は知っていたのですが、弟は何をしてるんだろうなぁとふと思ったりしていた時。お兄ちゃんから連絡があったので、今度会う時に聞いてみようと思っていました。

新潟でのライブが終わり

「ご挨拶したい方がいるそうなので通していいですか?」

お兄ちゃんが来たんだなと思い、通してもらってドアを開けたら、そこにはマンテンブラザーズの二人がいました。お兄ちゃんの横に弟も立っていたのです。

「え!? 久しぶりだね! え!? 何で二人でなの!?」

「いやぁ、実は今俺が作った会社でこいつと一緒に仕事してるんですよ!」

弟がなんか恥ずかしそうに後頭部をかいています。

「何でも屋を一緒にやってるんで、何かありましたら言って下さい!」

弟がなんか恥ずかしそうにニヤついています。

その光景には、中野の30人キャパのライブハウスでバチバチした目で重苦しい空気だった雰囲気はなく、ただの普通の家族・兄弟に戻っていました。

二人はお笑いとして大成はしませんでしたが、そんなことより死ぬまで、いや死んだ後も一緒にいるであろう家族とお笑いを始める前の、ふんわり空気の仲が良い兄弟に戻っててとても素敵な二人でした。

辞めた後、本当の人が出て嫌な感じになる人もいますが、マンテンブラザーズは良い人間なのが本当の姿でとても嬉しかったです。

あ、

自分がもし辞めたらどうなるのか考えてみよう。お笑いを始める前の自分

中学生の頃

○○○○○○○○○○○○。

高校生の頃

××××××××××××××××××。

高校卒業からお笑い1年目になるまで

○×○×○×○×○×○×○×○×○×。

、、、、

嫌な人にならないためにお笑いを続けよう。

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