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「そろそろ行くね」と早く帰る友人を、マンションの下のベンチで見つけた話

  • 2026.8.28
ハウコレ

保冷バッグを届けに下りると、友人はまだ帰っていませんでした。ベンチに座るその背中を見て、私はそのまま引き返しました。歓迎されていないのは私のほうだと思いました。

いつも1杯で終わる時間

学生のころからの友人を部屋に呼ぶようになったのは、私がこのマンションへ移ってからです。プリンやアイスを保冷バッグに入れて持ってきてくれるのに、彼女はいつも短い時間で腰を上げます。呼ぶ回数を重ねても、そこは変わりませんでした。好きそうなお菓子を皿に出しましたが、湯のみが空になると決まってこう言うのです。

「そろそろ行くね」

私が「もう1杯だけ淹れるよ」と引き止めても、返ってくる言葉は毎回同じでした。

「ううん、大丈夫。今日もありがとう」

玄関のドアが閉まったあと、私は皿を片づけながら、うちに呼ぶのはもうやめようかと考えていました。

ベンチに座っていた背中

その日も友人は同じように帰り、テーブルの下に保冷バッグが残っていました。届ければまだ間に合うと思って、私はそれを持ってエレベーターに乗りました。

エントランスを出ると、植え込みの脇のベンチに友人が座っていました。手には自販機の缶があります。急いで帰る用事があったわけではないのだと、その背中を見て分かりました。

保冷バッグを抱えたまま、私はエレベーターの前まで戻りました。届けなかった理由を、自分でもうまく説明できませんでした。

おかわりを断っていた理由

次に友人が来た日、保冷バッグを返してから聞きました。

「うちに来るの、しんどい?」

友人は湯のみに指をかけたまま、しばらく答えませんでした。それから、戸棚のほうを見て言いました。

「おかわりまで頼んだら、また新しいの開けさせちゃうから」

初めてこの部屋に呼んだ日のことでした。私は戸棚から袋を出して封を切り、「これ、おいしいから飲んでみて」と淹れたのです。あの音を、友人は自分のせいだと受け取っていたのでした。

私は湯のみを置いて、友人の顔を見ました。

「あのほうじ茶、私が1人のときも飲んでるやつだよ」

言ってから、皿のお菓子が残ったままだった理由も分かりました。手を伸ばせば、その分だけ長居することになると考えていたのだと思います。

そして...

今は、友人が来る前にほうじ茶を淹れて、ポットごとテーブルへ出しておきます。封を切る音がしなくなってから、彼女は湯のみが空になっても座ったままです。この前は、保冷バッグの中のプリンが溶けかけていました。溶ける前に食べようと言い合いながら、私たちはまだ話の途中でした。

(30代女性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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