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「そのクーラーボックスをベンチに……!」→何となく苦手だった保護者、まさかの正体とは

  • 2026.8.27

これは筆者の友人、佳代(仮名)の話。
息子と同じ少年野球チームに通う、何となく苦手な保護者。
苦手から尊敬に変わった思いがけない出来事とは──?

嫌いじゃない。ただ「何となく苦手」だった

小学生の息子の夏季大会。
夏のグラウンドは、逃げ場のない暑さとの戦いだ。
遮るもののない炎天下。
照り返すグラウンドの熱気。
応援に来ている保護者も、試合が終わる頃には全員ぐったりしている。
この季節の保護者の重要な役目は、子どもたちの体調管理を手伝うことだ。

ベンチ裏で隣に座っていたのは、前田さん(仮名)
初めの頃に何度か話したことはある。
でも、不思議なくらい会話が続かなかった。
嫌いじゃない。ただ、何となく合わない。
そんな距離感のまま、お互い挨拶を交わすだけの関係になっていた。

ところがその日は、いつもサポートに入る保護者たちが体調不良など様々な理由で欠席。
猛暑の中、私たち二人だけでベンチ裏を任されることになった。

炎天下で起きた突然の異変

試合は最終回、一点差。
緊張していたのは選手だけではなかった。
テントの下にいても、熱気がまとわりつく。
そのときだった。
マウンドにいたピッチャーがふらつき、その場に膝をついた。

ベンチも保護者席も一気にざわつく。
私が立ち上がるのと同時に、前田さんも駆け出していた。

「そのクーラーボックスをベンチにお願い!」

そう言って前田さんは監督とコーチの元へ走って行った。
短く、それでいて迷いのない声だった。
言われた通り、クーラーボックスを持ってベンチへ向かう。

そして前田さんと共に、ベンチに戻ってきた子どもに水分を取らせたり、対応して様子を見ていた。
私は、前田さんのおかげでパニックにならなかったのだと思う。
前田さんの的確な指示や、落ち着いた動きを見ていると「この人についていけば大丈夫」と自然に思えた。

苦手だった人が、一番頼れる存在になった

幸い、子どもはすぐに回復し、大事には至らなかった。
試合もそのまま逃げ切り、チームは勝利。
ようやく張りつめていた空気がゆるみ、私たちは顔を見合わせて笑った。

「前田さんの指示のおかげで助かりました。ありがとうございました」

そう伝えると、前田さんは少し照れたように笑って言った。

「実は私、看護師なんです」

その一言に、さっきまでの迷いのない判断や落ち着いた行動の理由がすべてつながった。
あの日以来、前田さんとは自然に話せるようになった。

何となく苦手──

そんな第一印象だけで距離を置いていた自分が、少し恥ずかしい。
あの灼熱のグラウンドで一緒に子どもを守った数十分。
前田さんはただの「保護者」ではなく、私にとって頼れる「戦友」になった。

【体験者:30代・女性主婦、回答時期:2026年7月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

Qolyコラムニスト:maki
学生時代からスポーツ・部活動に打ち込んできた40代。現在はサッカースクールに通う子供の親として、スポーツと関わりを持つ。自身の経験談はもちろん、チームメイトや友人・知人から聞いたスポーツにまつわるリアルなエピソードを中心に取材し、スポーツの現場で起きた人間ドラマをコラムとして執筆している。

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