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一つ目の巨人に美しいセイレーン、キルケの魔女も!『オデュッセイア』を盛り上げるギリシャ神話の住人たち

  • 2026.8.27

クリストファー・ノーランが神話的世界に挑んだ超大作『オデュッセイア』(9月4日~10日IMAX先行上映、9月11日公開)。古代ギリシャの吟遊詩人ホメロスによる冒険譚を映画化した本作は、「トロイの木馬」で有名な英雄オデュッセウス(マット・デイモン)とその仲間の10年にわたる帰還の旅を描いたアドベンチャー大作だ。様々な困難に満ちた本作の冒険を盛り上げているのが、ギリシャ神話でおなじみのモンスターたち。巨人や魔女など個性豊かな怪物たちとの激しいバトルや駆け引きが、スケール感ある映像で描かれていく。本稿では、そんな神話世界の住人たちを紹介したい。

【画像を見る】オデュッセウス一行を次々と薙ぎ払う巨漢の騎士団ライストリュゴネ族

「トロイの木馬」で有名な英雄オデュッセウス [c] 2026 UNIVERSAL STUDIOS
「トロイの木馬」で有名な英雄オデュッセウス [c] 2026 UNIVERSAL STUDIOS

一つ目の巨人キュクロプス

キュクロプスとはオデュッセウス一行が水や食料を探すため立ち寄った島に棲んでいる一つ目の巨人であり、海神ポセイドンの息子。ギリシャ神話では神々の武器を作った鍛冶が得意な巨人族の一体という設定があり、日本では英語読みの「サイクロプス」のほうがなじみ深いかもしれない。原典「オデュッセイア」では旅人を喰らう凶暴な怪物として描かれ、映画版でもその設定を踏襲。羊を追って住処である洞窟に迷い込んだオデュッセウスたちを閉じ込め、腹が減るとおもむろに兵士を掴み上げ頭からガブリとかじりつく。寄りや動き回る全身のカットは特殊メイクを施したビル・アーウィン(『インターステラー』のロボット「TARS」の声優)が演じ、オデュッセウスたちと絡むカットには巨大パペットが用いられた。

兵士たちを片手で掴み取り、頭から喰らいつく一つ目の巨人キュクロプス イラスト/koto nakajo
兵士たちを片手で掴み取り、頭から喰らいつく一つ目の巨人キュクロプス イラスト/koto nakajo

映像化されたキュクロプス(サイクロプス)の代表格は、ノーランが心酔する特撮クリエイター、レイ・ハリーハウゼンが作り上げた『シンバッド 七回目の航海』(58)の巨人。『The Cyclops(原題)』(57)では放射能の影響で一つ目の怪物と化した青年が、彼を捜しに来た人々を洞窟に閉じ込め、「オデュッセイア」をモチーフにしたコーエン兄弟の『オー・ブラザー!』(00)にはジョン・グッドマン演じる片目の巨漢が登場する。「ドラゴンクエスト」シリーズなどゲームでも一つ目の巨人モンスターはおなじみで、「X-MEN」の主要メンバーであるサイクロプスも単眼のようなバイザーを付けている姿からその名で呼ばれている。

巨漢の騎士団、ライストリュゴネ族

圧倒的な戦闘力を持つ巨人たちで構成されるライストリュゴネ族。ギリシャ神話では人喰い巨人として登場し、ホメロスの原典でもオデュッセウスの部下が大勢喰い殺され、彼の乗る本船以外の船すべてが破壊されてしまう。想像上の世界をできるだけ地に足のついたものにしたいというノーランならではの解釈もあり、本作では甲冑に身を包み、剣を手にした巨漢の騎士団として描かれている。身長は3m近くあり、子どもでさえ人間の大人と同じ背の高さ。撮影には2mを超えるスタントマンが起用され、オデュッセウスらは150cm未満のスタントプレイヤーが演じている。

 【画像を見る】オデュッセウス一行を次々と薙ぎ払う巨漢の騎士団ライストリュゴネ族 イラスト/koto nakajo
【画像を見る】オデュッセウス一行を次々と薙ぎ払う巨漢の騎士団ライストリュゴネ族 イラスト/koto nakajo

テリトリーに立ち入った者を獲物とみなし、襲撃する狂暴な集団という属性は、『ヒルズ・ハブ・アイズ』(06)の核の影響で怪物化した一家や、西部劇『トマホーク ガンマンvs食人族』(15)の穴居族トログロダイトなどのキャラクター造形にも影響を与えたといえる。「ロード・オブ・ザ・リング」の前日譚「ホビット」でも、3体のトロルが捕えたドワーフたちをどう調理するかで揉める様子にその片鱗をうかがわせる。

人間を動物に変えてしまう魔女キルケ

変身の魔法を操る邪悪な存在が魔女キルケ。ギリシャ神話では太陽神ヘリオスの娘とされている。粗末な小屋で暮らすか弱い女性に見えるが、魔法の薬を使って人間を豚やヒョウ、ライオン、鹿など動物に変える力を持つ。映画でも小屋に上がり込んできたオデュッセウスの部下たちにご馳走を振る舞うと、夢中でむさぼり食う彼らを豚に変えてしまう。そんな二面性を持つ魔女を、本作では2度のアカデミー賞ノミネート経験を持つイギリスの名優サマンサ・モートン(『ギター弾きの恋』『イン・アメリカ/三つの小さな願いごと』など)が演じている。

人間を豚に変えてしまう魔女キルケ イラスト/koto nakajo
人間を豚に変えてしまう魔女キルケ イラスト/koto nakajo

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』(26)に登場する地球連邦軍のキルケー部隊の名前も彼女が元ネタ。そもそも「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」は「オデュッセイア」をモチーフとしており、ペーネロペーというモビルスーツもオデュッセウスの妻の名から取られている。さらに、湯婆婆(声:夏木マリ)が主人公の千尋(声:柊瑠美)の両親を豚に変えてしまう『千と千尋の神隠し』(01)、森の魔女が魔法のケーキで王妃をクマにしてしまう『メリダとおそろしの森』(12)も着想にモチーフがあると言われている。大ヒットドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」の権力欲の強い魔性の女サーセイ・ラニスターもまた、そのキャラクターや名前の類似性(サーセイ=Cerseiとキルケ=Circe)からキルケが下敷きでは?と考えられている。

聞いた者を破滅に導く歌声の持ち主セイレーン

次々と仲間を犠牲にしながら、一行の船はその歌声を聞くと破滅に導かれるセイレーンの生息域へと進んでいく。セイレーンはギリシャ神話に登場する海の怪物。上半身は女性、下半身は魚(または鳥)で、岩場から歌声を響かせ、船乗りたち誘惑して捕食してしまう。オデュッセウスは部下に密蝋で耳栓をするよう促し、自身は栓をせず身体を帆柱に縛り付けるが、その魔力は強力で、誘惑に抗えず耳栓を外して海に飛び込む兵士の姿も描かれた。

美しい歌声で船乗りを誘惑するセイレーン イラスト/koto nakajo
美しい歌声で船乗りを誘惑するセイレーン イラスト/koto nakajo

『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』(11)には人魚が船乗りを誘惑して襲う描写があり、『リトル・マーメイド』(89)のアリエルが、世界で一番美しい歌声を持つという設定もセイレーンがヒントだろう。最近では、『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』(公開中)に登場する巨大な人魚でその名を知った人も多いかもしれない。スターバックス コーヒーのロゴのモチーフになっているのも、2つの尾を持つセイレーンである。

船を海底に引きずり込むカリュブディスの大渦

オデュッセウスの苦難は続き、それぞれに大きな犠牲を伴う2つの航路のどちらかに進む選択を迫られる。その1つに待ち受けているのが、激しい飛沫を噴き上げる巨大な渦潮カリュブディスだ。渦潮を擬人化した怪物で、ギリシャ神話では1日に3回海水を飲み込み、その際の渦で船を沈めるとされている。

『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還(エピソード6)』(83)のサルラックは、砂漠に潜む触手と鋭い牙を備えた巨大生物。アリジゴクのようなすり鉢状の穴を作って捕食する姿が、カリュブディスにも通じる。『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』(06)のクラーケンも巨大なイカのような怪物だが、海水を吸い込んで巨大な渦を生みだすほか、嘴のビジュアルもカリュブディスを思わせる。

6つの頭を持つ怪物スキュラ

ヘビのような頭を6つ有するスキュラは、カリュブディスの大渦とは別の航路に潜んでいる。ギリシャ神話では、キルケーの魔法で6本の首と12本の脚を持つ邪悪な怪物にされた美しい海の精霊だった。映画ではその長い首を伸ばしてオデュッセウスの部下を次々に餌食にしていく。撮影現場にはフルスケールの頭部が用意され、スタントマンにかみつきクレーンで上昇する様子が撮影され、そこにCGの頭部や長い首が合成されている。

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(19)、『ゴジラxコング 新たなる帝国』(24)にはこのスキュラをモチーフにした怪獣が登場。長い6本の脚を持つカニを思わせるデザインになっている。

オデュッセウスを癒す海の精霊カリュプソ

神の怒りに触れて嵐に襲われたオデュッセウスは、楽園のような美しい島に漂着。そこに暮らす海の精霊カリュプソに救われ、彼女のもとで心身共に癒しの時を過ごす。カリュプソは巨人アトラスを父に持つ海の精霊で、ギリシャ神話では3姉妹という設定。甘美でどこか危険な匂いを漂わせるこのカリュプソを、オスカー女優シャーリーズ・セロンが演じている。

海の精霊カリュプソのもとで癒しの時を過ごすオデュッセウス [c] 2026 UNIVERSAL STUDIOS
海の精霊カリュプソのもとで癒しの時を過ごすオデュッセウス [c] 2026 UNIVERSAL STUDIOS

『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』、『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』(07)に登場したブードゥー教の予言者ティア・ダルマ(ナオミ・ハリス)は、人間の姿にされた海の女神カリュプソという設定。神話をモチーフにした『シャザム!~神々の怒り~』(23)にはアトラスの3姉妹の次女としてカリュプソが登場。人間に復讐心を抱くヴィランという役どころで、アクションも得意なルーシー・リューが演じていた。

冒険物語の原点とされる「オデュッセイア」。そこに登場する怪物など神話世界の住人たちは、姿かたちを変えながら多くの作品のなかに息づいている。そんな個性派キャラの魅力を味わうのも映画『オデュッセイア』の楽しみなのだ。

ついに全米でも、8月25日までに興収約5億4491万ドルを記録してノーラン史上歴代1位の『ダークナイト』(08/約5億3334万ドル、再上映を含むと約5億3498万ドル)超えを達成した『オデュッセイア』。日本でも約2週間後には映画館で観ることができる。 2D(字幕/吹替)、IMAX(字幕)、Dolby Cinema(字幕)、4DX(字幕/吹替)、MX4D(字幕/吹替)、35mm(字幕)の全6種9バージョンでの上映が決定している。

文/神武団四郎

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