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朝ドラ視聴者に愛された“苦労人”「絡みが好きだった」「不憫だったけど」最終話までにもう一度“笑顔”が見たくなる男性

  • 2026.9.17
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『風、薫る』第11週(C)NHK

明治の看護の道を切り開く女性たちを描いてきた連続テレビ小説『風、薫る』。緊迫した医療や人生の岐路が続く物語に、軽やかな余白を生んだのが、瑞穂屋の手代・松原喜介(小倉史也)だ。りん(見上愛)の母・美津(水野美紀)の無茶ぶりに翻弄され、夕凪(村上穂乃佳)への思いを不器用に空回りさせながら、いつも誰かのために懸命に動いていた。物語が終盤に差し掛かっている今、視聴者に愛された名脇役の足跡と、再登場への期待を振り返りたい。

※以下本文には放送内容が含まれます。

瑞穂屋を陰から支えた“中間管理職”

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『風、薫る』第25週(C)NHK

松原は、日本橋の舶来品問屋・瑞穂屋で働く手代だ。手代でありながら番頭に近い役目も任され、主人の清水卯三郎(坂東彌十郎)を支えながら、店の実務を取り仕切ってきた。

物語の中心に立つ人物ではないけれど、瑞穂屋で何かが起きると、たいてい松原が動いている気配がした。主人の意向をくみ取り、働く者たちを陰でまとめ、予想外の来客や頼み事にも対応する。上からの指示と現場の事情に挟まれながら、なんとか店を回そうとする姿は、明治を生きる商人というより、現代の中間管理職を思わせる。

松原には特定の実在モデルはいないようだ。だからこそ、歴史上に名を残した偉人ではない、当時を懸命に生きた市井の人々の姿が投影されているように見える。

誰かが新しいことを始めるとき、その隣には必ず、帳尻を合わせたり、頭を下げたり、現場を整えたりする人がいる。松原は、まさにその役割を担ってきた。りんや直美(上坂樹里)が大きな志を抱いて看護の世界を切り開く一方で、彼は毎日の仕事を着実に回し続ける。そんな人物がいるからこそ、『風、薫る』の明治の町は、作り物ではない生活の場として立ち上がっていた。

松原を演じる小倉史也の芝居も絶妙だ。真面目に振る舞おうとすればするほど、なぜか可笑しみが生まれる。困惑した視線や一瞬の間、所在なさそうな立ち姿によって、松原の苦労と人の良さを同時に伝えていた。

微笑ましさを生んだ名コンビ?

松原の魅力がもっとも鮮やかに表れていたのが、美津とのやり取りだろう。

思い立ったらすぐに動き、周囲を巻き込みながら前へ進んでいく美津。そんな彼女から次々と頼み事をされるたび、松原は困り果てた顔を見せる。それでも強く拒絶することはできず、結局は美津の勢いに押されて引き受けてしまう。その姿からは、気の弱さだけでなく、頼まれた相手を放っておけない律義さも感じられた。

美津と松原、姫様と従者のような正反対の二人が作るリズムは心地よく、重い医療描写が続く物語のなかで、瑞穂屋の場面はほっと息をつける時間になっていた。

SNS上で寄せられた「美津さんとの絡みが好きだった」という声にも納得だ。松原が戸惑いながら受け止めるからこそ、美津の豪快さや情の深さが、より魅力的に映っていた。出番の多さにかかわらず、2人の掛け合いは『風、薫る』の日常を豊かにする大切な風景だったのだ。

夕凪へ届けた不器用な善意

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『風、薫る』第11週(C)NHK

松原の愛すべき人柄が凝縮されていたのが、夕凪こと魚住セツを見舞おうとした場面だ。

病院へ運び込まれ、療養していた夕凪。彼女を励ましたい松原は、瑞穂屋に置かれていた“縁起がよいらしいアフリカの置物”を持って病院を訪れ、りんに託した。

その思いはどこまでも真っすぐだ。しかし、見舞いの品としてアフリカの置物はあまりにも独特だった。ほかに選択肢はなかったのかと思わず突っ込みたくなるが、本人が大真面目だからこそ、余計に可笑しい。

松原の思いが報われる展開にはならず、SNS上では「不憫だったけど……」と同情する声も上がった。確かに恋愛として見れば切ない。しかし気の利いた言葉も贈り物も選べない彼が、自分なりの方法で傷ついた夕凪を励まそうとしたことに意味がある。

選んだ品はずれていても、込められた気持ちに偽りはない。相手から何かを返してもらうためではなく、ただ元気になってほしいと願う。その不器用な善意があったからこそ、この場面はコミカルなだけで終わらず、松原を象徴する名シーンとして心に残ったのだろう。

物語は第25週「風媒花」に入り、いよいよ最終盤を迎えている。りんと直美は看護婦養成所の設立を志し、セツもまた、自分の人生を取り戻して新たな道を歩み始めた。一方で、松原の“その後”はまだ大きく描かれていない。

美津との名コンビをふたたび見ることはできない。それでも、瑞穂屋を守り続ける松原の姿や、成長したセツとの再会が描かれる可能性は残っている。たとえ大団円の中心に立たなくても、画面の片隅で慌てながら誰かを支える彼がいれば、『風、薫る』の世界は少しだけ明るく、温かくなる。最後にもう一度、愛すべき苦労人の笑顔を見せてほしい。


連続テレビ小説『風、薫る』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHK ONE(新NHKプラス)同時見逃し配信中・過去回はNHKオンデマンドで配信

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