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ゴリエはなぜ2週連続1位を獲れたのか 笑いで入って音で残った40万枚の本気

  • 2026.9.7
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ゴリエ(C)SANKEI

水曜の夜、テレビの前で笑っていたら、屈強なチアガールが急に歌い出した。

フジテレビ系『ワンナイR&R』のキャラクター「松浦ゴリエ」。ガレッジセールのゴリが演じる女の子だ。松浦というのは、後に松浦亜弥の姉という設定でついたもの。その彼女がチアリーダーの格好で、後ろにふたりの少女を従えて、掛け声まじりの曲を踊り始めた。笑う準備をしていた口が、途中から一緒に動いていた。

Gorie with Jasmine&Joann『Mickey』(作詞:ゴリエ美化委員会/作曲:Michael Chapman・Nicky Chinn)ーー2004年9月8日発売

コントのキャラクターが、本家の格をそのまま着て歌い切った1曲。ふざけているのに、歌う側だけがやけに真顔だった。

元祖の掛け声を着こなす女装キャラ

原曲はトニー・バジルの『Mickey』。1982年にアメリカのチャートで1位まで上がった、チアの掛け声で幕が開くあの曲だ。手拍子の上で名前を呼び続けるあの型は、体育館でも街角でも、聴けば体が勝手に応援の構えになる。さらにさかのぼると、イギリスのバンドRaceyが1979年に出した『Kitty』が原型だ。

ゴリエが借りてきたのは、チア曲としておなじみの曲。ここで面白いのは、企画の側が本家の型をほとんどいじらなかったことだ。掛け声の呼びかけも、手拍子の隙間も、踊るための間もそのまま。変えたのは歌う人と言葉だけ。

コントのキャラクターが、あのアメリカの応援団の格をまるごと着て、恥ずかしがる素振りもなく歌い切る。型を守ったからこそ、原曲を知る世代には懐かしい応援として、知らない世代には初めての掛け声として、同じサビで同じ手が鳴った。

ゴリは笑わせる仕事の人なのに、ここでは笑いを取りにいく声をしていないように聴こえる。キャラクターの声を最後まで崩さず、掛け声のひとつひとつを気合いの入った音として出しているから、コントの延長のはずの曲が、いつのまにか本物のチア曲として耳に残る。ふざけた企画ほど、演じる側の本気が効く。この曲はその見本に映る。

声が重なる理由が音でわかる

名義はGorie with Jasmine&Joann。ゴリエのデビューシングルであり、隣に立つのはJasmine(Jasmine Allen)とJoann(山崎ジョアン)のふたりだ。

チア曲は、ひとりで歌うと寂しい。呼びかけがあって、それに応える声があって、初めて応援の形になる。だから三人なのかもしれない。往年の80年代アイドルでもソロアイドルのうしろに2人のコーラス隊がつくことがよくあった。それを踏襲した形かもしれない。いずれにしてもこの3人体制というのが、なんだか賑やかでよい。

日本語詞のクレジットは「ゴリエ美化委員会」。編曲はTOMISIRO、掛川陽介と本澤尚之のユニットだ。原曲の骨組みを保ったまま、日本語の言葉が乗りやすいように音の隙間を整えているように聴こえる。掛け声と手拍子がいちばん前に立ち、伴奏はそれを追いかけて弾む。だからテレビの前で真似する人の声が入る余地が、ちゃんと残っている。

ネタとして企画され、ネタとして売られた。それでも音を作った人たちは、ネタだからと手を抜いていない。デビュー曲の本気は、こういう地味な整え方に出る。

内輪の合図が全員の掛け声に変わるサビ

原曲のサビは、ミッキーという名前を呼び続ける形でできている。日本語版もその呼びかけの型は壊さない。ところが、サビのフレーズに、番組でおなじみのゴリエの口癖が差し込まれている。

「ペコリ」

お辞儀の擬音のようなこの一語は、『ワンナイR&R』でゴリエが繰り返し口にしてきた決めの一言だ。それがサビの頭に「Oh Mickey Love Mickey ペコリ Mickey」という形で加えられている。本家の応援の型に、番組でしか通じないはずの口癖を同じ強さで混ぜてしまったことで、この曲は借り物ではなくゴリエ本人の歌になった。

ネタ曲の棚から主役の棚へ移った

結果は、企画した側の想像も超えたはずだ。発売と同時にランキングの首位に立ち、翌週もその座を守った。2週続けての1位。累計では40万枚を超え、2004年の年間ランキングでもトップ10に入った。

バラエティ番組のキャラクターが歌うカバー曲が、その年の主役級の曲たちと同じ棚に並んだ。笑ってテレビを見ていた人たちが、お店でCDを手に取っていたという事実が、この曲がネタでは終わらなかったことをいちばん正直に語っている。

理由は、笑いの後に残るものがあったからだ。掛け声の気持ちよさ、真似したくなる振り、覚えやすい口癖。笑いで入って、音で残る。この順番が、この曲の強さだった。

翌年、ゴリエは第56回NHK紅白歌合戦の舞台に立つ。ただし歌ったのは次のシングル『Pecori♥Night』で、この曲ではない。『Mickey』はその舞台へ続く入口の一曲だった、というのが正確なところだ。

ひとりになっても止まらない振り

2022年1月2日、ゴリの公式チャンネル「ゴリ☆オキナワ」に、「【official PV】ゴリエちゃん「Mickey」~平成から令和へ~【踊ってみた】」という動画があがった。あの振りをもう一度踊る動画だ。年を重ねたゴリエが、当時と同じ振りを踊っている。ゴリエ以外にもゴリが扮するコントキャラ「落武者」も登場する。しかし踊りはキレキレだ。

ネタ曲は、笑いが薄れると一緒に消えることが多い。この曲が残ったのは、笑いの下に本気の音と本気の振りがあったからだろう。踊りながら気合いを入れるあの声を聴くと、笑わせる人がいちばん真面目だった、という当たり前を思い出す。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

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