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「タオルが湿ってる、新品を出して!」大浴場の入口で怒鳴り続けた女性。だが、最後に止めたスタッフの一言とは

  • 2026.8.20

暖簾の手前で、止まらなかった声

今年の春、友人と二人で温泉旅館に泊まった。夕方、浴衣に着替えて館内の大浴場へ向かうと、暖簾の手前からとがった声が聞こえてきた。

ひとりの女性が、タオルの積まれた棚の前でスタッフを呼び止めている。

「タオルが湿ってる、新品を出して!」

スタッフの女性は表情を変えずに頭を下げ、すぐに交換すると答えた。奥から新しいタオルを抱えて戻ってくるまで、そう長くはかからなかったと思う。

それでも、受け取ったあとの声は止まらなかった。

「遅い。客を待たせる気なの?」

友人と目を合わせ、どちらからともなく足を止めた。

スタッフは言い返すことも、困った顔をすることもなく、そのたびに同じ調子で応じている。

私たちは少し離れたところで、なんとなく息をひそめていた。

後ろに並んでいた人たちも同じで、順番を待つというより、その場が収まるのを待っているようだった。

脱衣所を抜けた先でも、その人の居場所はすぐに分かった。

洗い場では、隣り合った椅子を2つ、タオルで押さえている。

「ここは私が使うから」

近づいた人にそう言い放ち、その一角だけが空いたままになった。

サウナの前に順番を待つ列ができていたときも、女性は横から入っていった。

「早く入りたいから」

待っていた人たちが顔を見合わせる。誰も何も言わなかった。譲ったというより、関わらないことを選んだ空気だけがそこに残った。

せっかくの旅先で、どうしてこんなに気を遣っているのだろうと思った。

露天の縁で、決まりを伝えた人

極めつけは露天だった。女性は持ち込んだ端末を取り出し、外の景色に向けて構えた。

他の客が呼んだスタッフがすぐに近づいてくる。

「申し訳ございません、こちらでの撮影は禁止です」

「誰も写してないからいいでしょう」

女性は端末を下ろさずに言い返した。今度も押し切るのだろうと、その場にいた誰もが思ったはずだ。

けれどスタッフは引かなかった。声を荒らげるでもなく、落ち着いた調子のまま続けた。

「ほかのお客様に安心してお過ごしいただくための決まりです。お続けになるようでしたら、ご退出をお願いすることになります」

女性は何か言いかけて、口をつぐんだ。

少しの間があって、端末をタオルに包み、そのまま奥へ引き上げていった。

張りつめていた空気が、ふっとゆるんだのが分かった。

壁際に寄っていた人たちが元の場所へ戻り、近くにいた人が小さく息を吐く。

最後まで声を張り上げたのは女性のほうだけで、決まりを伝えたその人の声は、始めから終わりまで同じ高さのままだった。

※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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