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事務的だった大家さんから届いた「近いうちに、少しお時間をいただけないでしょうか。」に身構えた私

  • 2026.8.19
ハウコレ

呼ばれた先で告げられたのは、契約の話でも苦情でもありませんでした。差し出された紙袋を前に、私は身構えていた自分を思い返します。

家賃の連絡にしか使っていなかった大家さんとのメッセージ画面に、見慣れない長さの文面が並んでいました。

一言だけの返信しかくれない人

大家さんは、同じ敷地の母屋に住む60代の女性です。連絡先は入居のときに交換したメッセージアプリだけで、入居して3年、こちらが何を送っても返ってくるのは「承知しました。」だけでした。冷たいというより、線を引いている感じ。私もその距離感に慣れていました。

以前には、入居者全員に宛てて「ゴミ置き場のルールをお守りください。」という一斉送信が届いたこともあります。自分が疑われている気がして、袋の口を縛り直してから出すようになりました。

その大家さんから届いたのが、「近いうちに、少しお時間をいただけないでしょうか。」という文面でした。挨拶も、お願いの形も、今までに一度もなかったものです。あの注意の続きか、契約の話か、それとも退去のお願いか。読み返すたびに、悪い想像だけが増えていきました。

丁寧さの分だけ募る想像

私は「わかりました。いつでも大丈夫です。」とだけ返しました。すると今度は、「お忙しいところ申し訳ありません。ご都合のよい日で構いませんので。」と、また長い返信が届きます。用件を書かないまま重ねられる敬語が、かえって不穏でした。会社の昼休みに賃貸契約書を読み返し、ゴミ出しの決まりが書かれた紙を財布に入れて持ち歩きました。友人に相談すると「更新の値上げじゃない?」と返ってきて、私は貯金のアプリを開きました。

玄関先で下げられた頭

数日後、指定されたのは母屋の玄関先でした。上がり口には、包装された紙袋が1つ置かれていました。大家さんは私の顔を見ると、先に頭を下げました。「変な送り方をしてしまって、ごめんなさいね。」そして、「ゴミ置き場、いつも直してくれていたでしょう。お礼が言いたかったの。」と続けました。カラスに荒らされた袋を私が替えて積み直していたのを、母屋の窓から見ていたこと。あの一斉送信で嫌な思いをさせたのではと、ずっと気になっていたこと。差し出された紙袋には、菓子折りが入っていました。私は「気づいてもらえて、うれしいです。」と返しました。身構えていた自分の想像より、目の前の用件のほうが、ずっと小さくて温かいものでした。

そして...

大家さんの返信は、今も「承知しました。」のままです。それでもゴミ置き場で顔を合わせると、互いに袋を持つ手を止めて、少しだけ話すようになりました。あの長い文面の向こう側を、一度知ってしまったからです。

(20代女性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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