1. トップ
  2. カルチャー・教養
  3. 浅間山麓の写真祭から注目の3つの展示をピックアップ

浅間山麓の写真祭から注目の3つの展示をピックアップ

  • 2026.8.18

ASAMA INTERNATIONAL PHOTO FESTIVAL 2026

浅間山麓の写真祭から注目の3つの展示をピックアップ

「浅間国際フォトフェスティバル2026 PHOTO MIYOTA」が、MMoP(モップ)他、御代田町内各所にて9月27日(日)まで開催中。

浅間山麓の地域を舞台に2018年より始まった国際的な写真祭「浅間国際フォトフェスティバル」。
美しい自然とそこに佇む建物の静謐な空間の中で、国内外の優れた写真作品が展示される。

2026年のテーマは「After the Image イメージのその後」。
個人の記憶に沈殿し、社会の中を流通し、文脈の変化によってまったく異なる物語を語り始める1枚のイメージ。
デジタル環境の拡張により写真は瞬時に世界を巡り、複製され、切り取られ、再配置されるようになり、 オリジナルとコピー、そして事実とフィクションの境界は曖昧になっている。

本祭では、撮影されたその「後」の時間の中で、解釈、共有、記憶されながら随時その意味が更新され続ける写真というメディアの性質に目を向け、それらが人間の意識や行動に与える変化を見つめる。
写真とは何かという根源的な疑問を提示しながら、同時に鑑賞者のイメージの「その後」への関わり方について問いかける。

Lula Japan Webでは、屋外型写真祭として国内最大規模の本イベントの中から独自に選出した3つのエキシビションをご紹介。

1. Exhibition|Henriette Sabroe Ebbesen

デンマーク・コペンハーゲンを拠点とする写真家 Henriette Sabroe Ebbesen。

医学を学んだ経歴を持つ彼は、科学と芸術の領域を横断しながら、写真を通して知覚やアイデンティティー、人間の精神を探究する。
表現手法として主に鏡や反射素材を扱い、写真と絵画、現実と想像の境界を曖昧にするイメージを生み出している。

出展する「Growing Up」シリーズで花や昆虫、時計などのモチーフと共に繰り返し現れるのは、断片的な子どものイメージ。
そこでは自身の家族アルバムに収められた少女時代の写真と、新しく撮影された写真が混ざり合う。
異なる時期に撮影されたイメージを重ねることで、Ebbesenは大人になった「現在地」から幼少期の思い出を見つめ直し、新たな意味を見出す。

過去をそのまま映し出すのではなく、その後の経験や感情によって上書きされ、姿を変えていくものとしての「記憶」。
写真は失われた時間を保存する器ではなく、見るたびに過去と現在の関係を書き換え、その時々にまだ知らない自分自身と出会う装置となる。

2. Exhibition|Ayaka Endo

1994年に生まれ、主に光、動物、自然を対象とし、それらと人間との間に古くから培われてきた感覚に関心を寄せてきた遠藤文香。
祈りや霊性、森羅万象と個との関係をテーマに制作を続けており、最近では書籍「Pneuma」や「Ayaka Endo: Kanoko」を刊行した。

本祭で展開されるのは、新型コロナウイルス感染症の流行によって、社会との繋がりが突然断ち切られた経験から生まれた作品群「Kamuy Mosir」。
人に会うことがままならない深い孤独の中で、自然や動物は、彼女を外の世界へと開いてくれる存在だったという。
時空を飛び越え、どこか神秘的かつ幻想的な気配を帯びた現実の風景。
遠藤は撮影する中で、人々が「自然」と呼ぶものの多くが、人間の営みとは切っても切り離せない存在であることを理解する。
手入れされた山や森林、家畜動物、人工の光など、自然と人為、自己と他者の間を往復するように、彼女は被写体と向き合い、レンズをのぞき続けた。

自然や動物をカメラという「作られた光」で照らし出した写真。
それらは、自然や動物に畏れを抱き、救いを見出してきたその感覚は手つかずの自然に対してしか生まれないのか、現代の風景の中にもなお祈りや救いは宿り得るのかと、静かに問いを投げかける。

3. Exhibition|Pat Martin

1992年に生まれ、アメリカ・ロサンゼルスを拠点に活動する写真家 Pat Martin。
家族や身近な人々との関係を通して、記憶や喪失、人と人との繋がりをテーマに制作を続ける。
ポートレートを中心に、ドキュメンタリーと個人的な物語の境界を行き来するその作品群は、自身が経験した家庭環境や家族との関係を出発点としながら、「過去を記録するもの」というだけでなく、「新しい記憶や関係を育むもの」として制作されている。

2016年、Martinは弟と共に、長年の放置によってカビや傷みが激しく、写真のほとんどが失われた家族アルバムを発見する。
そこには、途切れてしまったごくありふれた家族の日々の断片だけが、わずかに残されていた。
幼い頃に父親が家を去り、長く薬物依存症を患うシングルマザーのもとで育った彼は、失われたアルバムの発見に、改めて「家族の思い出」の不在を突きつけられたという。
以降、体調が悪化していく母や離れ離れになっていた家族を撮影することは、彼にとって失われた関係を結び直すための切実な行為となった。

柔らかな光の中で撮られた親密で信頼に満ちた写真群は、理想化された家族像ではない。
対立や痛み、赦し、そして壊れやすくも確かに存在する愛をそのまま1つの家族の姿として受け止めた証、「現在の記憶を編み直すもの」として、今回展開される作品シリーズ「Family Album」が紡がれた。

現実を写した記録と紡ぎ直されていく記憶。
その曖昧な輪郭の狭間で、写真が持つ大きな力を体験して。



ASAMA INTERNATIONAL PHOTO FESTIVAL
asamaphotofes.jp/



【ASAMA INTERNATIONAL PHOTO FESTIVAL 2026】
DATE:9月27日(日)まで開催中
※火曜定休
※ただし8月11日(火・祝)、9月22日(火・祝)は開場
TIME:10:00am〜5:00pm
※最終入場は4:30pmまで
PLACE: MMoP他御代田町内各所
ADDRESS:長野県北佐久郡御代田町大字馬瀬口1794-1
ADMISSION:¥1,500
※小学生以下無料、中高生・障害者手帳をお持ちの方は割引あり
WEBSITE:asamaphotofes.jp/
※チケットや詳細情報は写真祭のウェブサイトをご確認ください。

元記事で読む
次の記事
の記事をもっとみる

注目コンテンツ