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刺繡作家・小菅くみさん、犬の思い出と一針入魂

  • 2026.10.5

激似のマイケル・ジャクソンやリアルな動物の刺繡で大人気の小菅くみさんに特集「犬と、暮らせば。」のために作ってもらったのが、付録のステッカーと誌面の見出しに用いたアルファベットを頭文字に持つ犬の顔の刺繡。ひと針ごとに込められたあふれる犬への愛を、幼い頃飼っていた柴犬ハルの話を起点に語ってもらった。

本記事は、BRUTUS「犬と、暮らせば。」(2026年10月1日発売)から特別公開中。

photo: Megumi Seki / text: Mari Matsubara / cooperation: COUNTER BOOKS

刺繡作家・小菅くみさん、犬の思い出と一針入魂
BRUTUS

秋田犬からズーチョンまで、26種類の犬の顔をわずか2cm四方ほどのスペースに一つ一つ刺繡してくれた小菅さん。こんなに小さいのに、どれも犬種の特徴をバッチリ捉えていてさすが!そこには犬に対する並々ならぬ愛情が窺える。

『ブルータス』のために刺繡中のコーイケルホンディエ。大谷翔平が飼っているデコピンの犬種だ。愛嬌と品格がミックスした表情を詳細に捉える。

「今は猫3匹と暮らしていて、犬は飼っていませんが、小学生の頃から実家で飼っていた柴犬のハルのことは忘れられません。ホームセンターのペット売り場でケージの中にギチギチに入れられた、もはや成犬と言えるハルを見るに見かねて、連れ帰りました。

生涯“ワン”と吠えたことがなく、来客があると怯えて隠れるような子でした。散歩は嫌いだけど、抱っこされて外を歩くのは好き。ドッグフードも1種類のカリカリしか食べないというこだわりの強さでしたが、19年も長生きしてくれたんですよ。

ある日、兄が野良の仔猫を拾ってきたら、無表情のハルがお乳を垂れ流していたのが強く印象に残っています。道でほかの犬とすれ違うと身をすくめていたハルにも母性はあるんだなぁと、なんか泣けてきましたね。あまりにもかわいがっていたのでハルが死んで以来、犬は飼っていません。またいつか飼いたいですけどね」

小菅さんが小学校低学年の頃、飼っていた柴犬のハルと
小菅さんが小学校低学年の頃、飼っていた柴犬のハルと。「いつも抱っこだけだと運動不足になるので、わざと家から遠い場所で下ろしてダッシュさせていました。怖がりだから一目散に逃げ帰るの」(小菅さん)。
直径2cmほどの刺繡枠に入れた犬のシリーズ
直径2cmほどの刺繡枠に入れた犬のシリーズ。紐を通してペンダントになる。

下絵をきっちり詳細に描き、「目」から刺していく

「飼っている犬に似せて刺繡してほしい」と頼まれることも多い小菅さん。犬の写真を事前に送ってもらって小菅さんが下絵を起こし、当日はその下絵に沿って参加者自身が刺繡するワークショップも行っている。「犬を一緒に連れてきてくれる方もいて、写真で見ていたワンちゃんに実際に会えるのが嬉しいです」

今回『ブルータス』からの依頼では初めて名前を聞く犬種もあったが、特徴を捉えた写真を見ながら下絵を起こした。この時点でかなり詳細に描くことが肝心だとか。そして絵の具を選ぶように毛の色にぴったり合った刺繡糸を選んで刺していく。使うのは〈DMC〉の25番糸で、6本撚(よ)りを2本どりに分けて使う。

ワークショップを行ったこともある東京・学芸大学の〈COUNTER BOOKS〉で。

「動物でも人間でも、私は“目”から刺していくんです。目がいちばん難しくて、ここを失敗すると全体がうまくいかないんですよね。あとは写真をよく見て、毛の流れに従って刺していきます。ほとんどストレートステッチで、鼻の部分はサテンステッチ。下絵だけは自宅で集中して描きますが、あとは場所はどこでも構わず、どんどん刺し進めます」

刺し始めたら3時間ぐらいで完成するという驚異のスピード!なのに、マズル(鼻面)の立体感や愛嬌までもリアルに写してしまう。

『ブルータス』用に刺繡した犬
『ブルータス』用に刺繡した犬のオリジナルの状態がこちら。白生地に規則正しく並ぶ。
お題「東京にいそうな人」に沿って、同じ犬種を複数同時に散歩させる人を刺繡したもの
以前、雑誌から出されたお題「東京にいそうな人」に沿って、同じ犬種を複数同時に散歩させる人を刺繡した。

「刺繡の技術はあまり関係ないですよ。それよりも飼い主さんしか知らない表情とか、特徴的なポーズを愛情込めてうまく表現できたらいい。それにはやっぱり下絵が大事」

世界中の“かわいーぬ”にアルファベットを添えた小菅さんの作品をシールにしてお届け!あちこちに貼ってかわいがってください。

特集「犬と、暮らせば。」付録のAからZまで、全26種の犬シール。Sはもちろん、ハルを彷彿させる柴犬。眺めて貼って楽しんでね。

profile

小菅くみ(刺繍作家)

こすげ・くみ/1982年東京都生まれ。日本大学藝術学部写真学科卒業。20代前半から本格的に刺繡を始め、動物や人の微細な表情まで再現する高い技術とユーモアが話題に。著書に『小菅くみの刺繡 どうぶつ・たべもの・ひと』(文藝春秋)など。

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