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「まあ座れ、お菓子でも食べていけ」なかなか会えない息子と私を間違えた叔父。その日だけ私が答えた言葉とは

  • 2026.8.18

玄関先で、叔父は私の名前を思い出せませんでした

法事の帰り、私は久しぶりに叔父の家へ立ち寄りました。

父の兄にあたる人で、子どものころは夏休みになると何度も泊まりに行った家です。

呼び鈴を押して少し待つと、引き戸が開きました。

叔父は私の顔をじっと見つめたあと、困ったような表情を浮かべました。

「誰さんだったかな」

叔父の物忘れが増えていることは、親戚から聞いていました。

実の息子である従兄弟のことも、すぐには分からない日があるそうです。

従兄弟は県外で仕事をしていて、以前のように頻繁には帰省できません。叔父もきっと、息子が帰ってくるのを心待ちにしているのでしょう。

私が自分の名前を伝えようとした、そのときでした。

叔父の顔がぱっと明るくなりました。

「なんだ、帰ってきたのか」

その言葉を聞いて、私はすぐに気づきました。叔父は目の前にいる私を、息子だと思っているのです。

「違うよ」と訂正しかけましたが、うれしそうな叔父の表情を見ると、言葉が止まりました。

ほんの少しの間なら、このままでもいいのではないか。そう思った私は、笑って答えました。

「うん、帰ってきたよ」

すると叔父は安心したようにうなずき、私を家の中へ招いてくれました。

「まあ座れ」と出してくれた、いつものお菓子

「まあ座れ、お菓子でも食べていけ」

叔父は戸棚を開け、煎餅の袋を持ってきました。そして湯呑みにお茶を注ぎ、私の前へ置いてくれました。

その光景を見ていると、子どものころを思い出しました。

遊びに行くたび、叔父は同じようにお菓子を出してくれたものです。

座卓を挟みながら、叔父は庭の木のことや、最近は朝早く目が覚めることなどを話しました。

同じ話を何度か繰り返すこともありましたが、私はそのたびに初めて聞いたように相づちを打ちました。

しばらくすると、叔父が私に聞きました。

「仕事はどうだ。無理してないか」

きっと、本当は息子に聞きたかった言葉なのでしょう。

私は少し迷ってから答えました。

「ちゃんとやってるよ。心配いらないよ」

叔父は「そうか」と小さくうなずきました。その表情があまりに穏やかで、私は訂正しなくてよかったのかもしれないと思いました。

帰り道、本当の息子に伝えようと思いました

帰るころには、外は夕方の色に変わっていました。

叔父は玄関まで見送りに来て、私が靴を履くのをじっと見ていました。

「またな」

そう言って、胸の前で小さく手を振ります。私も同じように手を振り返しました。

家を離れて駅へ向かいながら、私は従兄弟に連絡しようと思いました。

今日、叔父がとてもうれしそうだったこと。煎餅とお茶を出してくれたこと。そして、息子が帰ってきたと思いながら、穏やかな時間を過ごしていたこと。

叔父が私にかけてくれた言葉は、本当は従兄弟に向けたものです。

その日だけ私は、その言葉を預かったのだと思うことにしました。

※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています。

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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