1. トップ
  2. エンタメ
  3. 恋愛映画の枠に収まらない!反戦への想いも込められた『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』を観るべき理由

恋愛映画の枠に収まらない!反戦への想いも込められた『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』を観るべき理由

  • 2026.8.16

現代から第二次世界大戦末期の1945年へタイムスリップした女子高生が、そこで出会った特攻隊員との恋と別れを経験する『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(23)。この作品は興収45億円突破を記録したが、タイムスリップと恋愛は映画のテーマとしてはとても相性がいいし、そこに反戦というメッセージを付加したことがヒットした要因の一つだったと思う。あれから約3年、物語上では7年後に設定された続編『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』が現在公開中だ。

【写真を見る】戦争で命を散らした特攻隊員たちの想いも描かれるなど強い反戦へのメッセージを感じさせる

象徴的な百合が咲き誇る丘も登場 [c]2026「あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。」製作委員会
象徴的な百合が咲き誇る丘も登場 [c]2026「あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。」製作委員会

過去の恋愛との訣別を描くだけに終わらない、多くの日本人が感じているジレンマ

高校3年生から大人になった百合(福原遥)は、特攻隊員として空に消えた彰(水上恒司)の夢でもあった高校教師になっていた。忙しい日々を送っているものの、いまだ彼女の心は1945年の“百合”が咲く丘に取り残されたままであり、そこには彰との思い出が強く刻まれていた。そんな百合の前に現れるのが、臨時的任用教員として百合が受け持つクラスの副担任に着任した青年、涼(細田佳央太)だ。

特攻隊員だった彰の夢を叶え、高校教師となった百合 [c]2026「あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。」製作委員会
特攻隊員だった彰の夢を叶え、高校教師となった百合 [c]2026「あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。」製作委員会

涼には一途で純粋なところがあり、どこか彰の生まれ変わりのようにも見える。前作のラストで、空を見上げながら彰や共に旅立った特攻隊員たちのことを想い、「あなたたちが命を懸けて守った未来を私は精一杯生きます」と心に誓ったはずなのに、現実ではいまも時間の狭間で止まり続ける百合の気持ちが、涼との出会いによってどう変化していくか。そこが続編のメインプロットだ。

百合のクラスに赴任してきた臨時的任用教員の涼 [c]2026「あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。」製作委員会
百合のクラスに赴任してきた臨時的任用教員の涼 [c]2026「あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。」製作委員会

彰を介して描かれる、忘れ去られようとする戦争の記憶と、一方で涼が運んでくる未来へ突き進む勇気との間で揺れ動く百合の葛藤。それは置き換えると、現代を生きる多くの日本人が感じているジレンマであり、この物語が過去の恋愛との訣別を描いただけで終わらない理由でもある。

【写真を見る】戦争で命を散らした特攻隊員たちの想いも描かれるなど強い反戦へのメッセージを感じさせる [c]2026「あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。」製作委員会
【写真を見る】戦争で命を散らした特攻隊員たちの想いも描かれるなど強い反戦へのメッセージを感じさせる [c]2026「あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。」製作委員会

倍賞千恵子と細田佳央太が物語の重要なキーパーソンに

配役のキーパーソンはおもに2人。前作で1945年の日本で百合が親交を深めた魚屋の娘、千代(出口夏希)は歳を重ね、続編ではホスピスで穏やかな日々を送っている。彰が出撃前に遺した未来の百合に贈る一冊の本を預かっていた千代の知られざるヒストリーが、百合の決断に大きな影響を及ぼす。現代の千代を演じるのは倍賞千恵子。松竹映画の良心とも言えるレジェンドが安心安定の名演でここでも作品を引き締めている。

現代の千代を倍賞千恵子が演じる [c]2026「あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。」製作委員会
現代の千代を倍賞千恵子が演じる [c]2026「あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。」製作委員会

それ以上に抜群の存在感を発散するのが、涼を演じる細田佳央太ではないかと思う。百合が過去に囚われていることがわかってもなお、変わらぬ思いをぶつけてくる涼は希望の象徴だが、そもそもタイムスリップものの設えからなかなか脱却できない物語を強引にシフトチェンジする難しいポジションも担っている。そんな難役を細田は、持ち前の手垢に塗れていない透明感でクリアしている。

百合の失った愛への葛藤と未来への希望を描く『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』 [c]2026「あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。」製作委員会
百合の失った愛への葛藤と未来への希望を描く『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』 [c]2026「あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。」製作委員会

スクリーンデビュー作『町田くんの世界』(19)で演じた冷めたキャンパスに潤いをもたらす天然青年、町田くん役然り、『人はなぜラブレターを書くのか』(26)で演じたすでにこの世にはいない青年役も同じく、彼が画面に現れるとなんとなく映画的な奇跡が起こりそうな気がするから不思議だ。

日本人の記憶に刷り込まれた四季折々の風景

撮影は関東近郊から長崎ロケにまでわたり、前作に続いて、象徴的な百合が咲き誇る丘ももちろん登場する。長崎の美しい街並みがどこか懐かしい記憶を呼び起こすだけでなく、夜空に瞬く星、茜色の夕焼け、ビルの間に打ち上がる花火、夜店が軒を連ねる夏祭り、潮風が心地よい砂浜なども印象的。時代は変わっても色褪せない日本人の記憶に刷り込まれている四季折々の風景が、過去と現在、さらに未来をつなぐための大事な役目を果たしている。

百合が抱える葛藤と新たな出会い、そこに反戦へのメッセージも込められた『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』。本作は現代、そして未来を生きることを見つめ直す、そのきっかけになるはず。

文/清藤秀人

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ