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「少しくらい詰められる」優先エレベーターに割り込んだ女性と鳴り続けるブザー

  • 2026.8.16
ハウコレ

誰も声を上げませんでした。開いたままの扉の中で鳴り続けた音と、彼女が最後に選んだ行動を、私は今も覚えています。

1台見送ったあと、ようやく乗り込んだエレベーターの扉が、閉まる寸前に外から押し戻されました。

1台見送ったあとで

最初に来たエレベーターは人でいっぱいで、ベビーカーの入る余地がありませんでした。私は優先エレベーターの前で次を待ち、乗り込むと、奥の方たちが体を寄せてくださったので、声をかけながらベビーカーを壁際に収めました。扉が閉まりかけたそのとき、外から手が伸びて、大きな紙袋が先にすべり込んできました。

「少しくらい詰められるでしょ。こっちは急いでるの」

紙袋を提げた女性が、体を斜めにして入ってきました。

鳴りはじめたブザー

「ベビーカーが、これ以上動かせないんです」

そう伝えた声に重なって、頭の上でブザーが鳴りはじめました。定員超過を知らせる音です。扉は開いたまま、音だけが続きます。奥の男性が足元を見直し、隣の学生も体を寄せ直しましたが、音は止まりませんでした。女性は降りずに、乗っている人たちへ助けを求めるような顔を向けていました。後から来た人の都合で、さらに場所を譲ることを求められました。

後ろ向きの一歩

女性を促す声はなく、ブザーだけが同じ調子で続きました。女性の耳のあたりが赤くなっていくのが、ベビーカー越しにも見えました。

「次にします」

女性が後ろ向きに乗り場へ降りると、ブザーは止まりました。扉が閉まり、エレベーターはゆっくり上がりはじめます。誰かが小さく息を吐いたのが聞こえました。

そして...

降りる階に着くまで、子どもは毛布の中で眠ったままでした。扉が開くと、場所を空けてくれた人たちへ礼を伝え、私はベビーカーを押し出しました。1台待ったあとに乗れた場所を、無理に譲らなくてもよかったのだと、今は思っています。

(30代女性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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