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【終わらない戦慄の余韻】「息子はそういう役割だったのです」怪我をした友人の母親が電話越しに告げた言葉と、“黄色い紙”の伝播

  • 2026.8.14

「禍話(まがばなし)」は、毎週土曜日の夜23時から生配信サービス「TwitCasting」で配信されている怪談語りチャンネルです。10周年の節目を迎えてもなお、語り手であるかぁなっきさんが披露するおぞましい実話怪談の数々は、ホラーファンを日夜恐怖に引きずり込んでいます。

今回はそんな禍話から、廃旅館で見つけてしまった不気味な“黄色い紙の束”が引き起こした狂気の一夜をご紹介します――。


朽ちた木の階段を降りていくと…

写真はイメージです。提供:アフロ

突然Bさんたちの前から姿を消した友人Aさん。

そして、彼が“地下に行くのを見た”と、あやふやな記憶を口にしたEさん。

皆、加速度的に起こるその不可解な事態に理解が追いつかなくなっていました。

「一旦静かにしろお前ら! えーっと……まず、EはAが『地下に行く』って言って引き返すのを見たんだな?」

「だから、見たっていうか、急にそういう記憶が蘇ってきたんだよ! 俺だって訳わかんねぇよ!!」

「ねえ、怒鳴るの、やめようよ!!」

「怒鳴ってねぇだろ!!」

「ちょっとみんな一旦静かにしてくれ!! とにかくAがいないのは事実だし、放って帰るわけにもいかないだろ。だから……戻るぞ」

「冗談でしょ!?」

混乱し文句を言いだすメンバーをよそに、Bさんは先陣を切って道を引き返し始めました。

旅館に入ってすぐのあたりに地下に続くボロボロの階段があったはず――記憶を辿るように進んでいくと、確かに階下へ続く、朽ちて数段が抜け落ちた木の階段が姿を現しました。

「おーい! Aー! そこにいるのかー?」

「ねえ、こんなところ降りていくの、危ないって……」

「それはわかっているけど、行くしかないだろ」

押し寄せる不安。再び始まりかけた言い合いを必死に収め、Bさんたちは慎重にその階段を降りていきました。

Aさんは瓦礫だらけの床に横たわり…

写真はイメージです。提供:アフロ

「おい! みんなあれ!」

そろりそろりと朽ちた階段を避けつつ降りていくと、地下の瓦礫だらけの床にAさんがこちらに背を向けて横になっているのが見えました。

彼の名を叫びながら駆け寄る一同。

肩を揺すっても起きない彼の様子にBさんが戸惑っていると、メンバーの女性が甲高い悲鳴をあげました。

「あ、足が……」

視線の先に目を向けると、Aさんのふくらはぎあたりから、細い鉄骨のようなものが突き出し、患部が赤く滲んでいたのです。

「嘘だろ……おい! A起きろって!」
「ヤバイヤバイ、救急車呼んだほうがいいよ」
「こんなところすぐ来てくれないだろ!」
「私たちがここ入ったってバレたらやばいんじゃない……?」
「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!」

プルルル……プルルル……。

「おい、お前何して……」

言い合いの最中、物音に気がついたBさんが振り返ると、Eさんが横たわるAさんの上着から携帯電話を取り出し、どこかに電話をかけているところでした。

「すみません! あの、A、Aくんのお母さんですか?」

地下に行った姿を見ただの、記憶が曖昧だのと皆を混乱させることを無責任に言ったばかりか、この状況で勝手にAさんの両親に電話をかけるだなんて……――Bさんは無軌道な行動ばかりするEさんに怒りを覚えたそうです。

「ええ! そうなんです! はい、サークルの旅行で……はい、旅館です、廃墟の。はい……はい……そうです。はい、Aくんが今、階段から落ちてしまって…………そうだと思います。僕もこの世にはひどいことにまみれていると思います。はい、ええ」

Eさんがしゃべり続けていた戦慄の内容

写真はイメージです。提供:アフロ

電話越しの相手にしゃべっているEさんの言葉に、何か違和感がありました。

「……なあ、E、お前、なんの話してんだ?」

「……はい、誰かが、はい、試しているんだと、そうです。はい、中が見えたら、ええ、終わりだと僕も感じます」

かたわらで呻くAさんのことを他のメンバーに任せると、Bさんは背を向けて話し込むEさんに近づいていきました。

「なあ、お前、ふざけてんのか――」

「紙は開くものです! 開いたものは閉じても同じではありません! 僕らも紙を開きました! もう開かれたんです!!」

突然、絶叫したEさん。

「なので、私は探し出すことにしました。毎日駅前のコンビニの陳列棚の奥や、飲み物コーナーの奥や、求人雑誌の中や、私の方を見てくるやつの瞳の奥もチェックしました。この文章を書くのに黄色を使ったのは目立つからです。私は気づいてほしい。窓は開けるものではなく、向こうがこちらを見るためにあるのです!!」

Eさんは、あの黄色い紙の束に書かれていた内容をしゃべり続けていたのです。

絶句していたBさんたちをよそに、叫び終えたEさんは息を整えると、再び何事もなかったかのように電話越しのAさんの両親と会話を続けようとしました。

Bさんは、思わず彼から携帯をひったくって耳に当てると、息子が怪我をして心配しているであろうAさんの両親をこれ以上動揺させてはいけないと、必死に言葉を探して声をかけました。

「あなたたちは帰っていただいて大丈夫です」

「あの、私Aくんの友人のBという者ですが、今の電話は――」

「いえ、大丈夫です。わかりました。息子はそういう役割だったのです。これは私たちの預かり知らないところで定められた決まり事なので。今から私たちもそちらに行きますので、あなたたちは帰っていただいて大丈夫です」

電話越しの年配の女性は事務的なことを淡々と告げるような口調でそうしゃべっていました。

「すみません! 今ちょっとこっちのバカが携帯を取っちゃって! いえ、大丈夫です! はい、はい、わかりました。はい、じゃあ僕らは失礼します。Aのこと、よろしくお願いします、はい、失礼します」

固まるBさんから携帯を取り上げたEさんは、そう言ってパタリと音を立てて携帯を閉じると、Bさんたちに向かって言いました。

「じゃあ、そういうことだから帰るぞ。Aはもう大丈夫だからそのままにしておいて」

理解不可能な言動を繰り返すEさんに一同は激しく詰め寄ったそうですが、彼はそんな一同の怒りを押し返すほどの凄みで「いいから、このまま帰るんだよ!!」と怒鳴ると、皆の肩をつかんで旅館から無理やり外に連れ出してしまいました。

写真はイメージです。提供:アフロ

結局、両親によって無事旅館から救い出されたAさんは病院へ運ばれ、大きな怪我でしたが、後遺症もなく治ったそうです。

かぁなっきさんはこの話をBさんから直接聞いたそうですが、その際に奇怪な言動を繰り返していたEさんについて深掘りしようと質問をしたところ、「Aの怪我は治ったんです。それでいいじゃないですか。あれ以上僕は深入りしてはいけないと思ったんです」と冷たく返されてしまったそうです。

「まあ、もう少し付け加えるなら――」

話を聞いていた喫茶店の席を立とうとしたとき、Bさんは小声で続けました。

「Aの家もEの家も、今は黄色い紙が玄関にびっしり貼られているみたいですよ」

あの廃旅館はその後なぜか急に解体され、今はもう跡形もないそうです。

文=むくろ幽介

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