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廃校の窓辺に立つ“何かを抱えた人影”…体育会系の同僚たちが撮影した心霊写真が招いた不可解な出来事

  • 2026.8.12
写真はイメージです。提供:アフロ

今年で10年の節目を迎えた生配信サービス「TwitCasting」の怪談語りチャンネル「禍話(まがばなし)」。その語り手であるかぁなっきさんは、北九州で書店員として働くかたわらで実話怪談を集めに集め、その数は今や3,000話を超えています。

今回はそんな熟練のホラーファンを唸らせ続けている禍話から、とある“写真”にまつわる恐ろしいお話をご紹介します――。


幸か不幸か受かってしまった大手ベンチャー企業

写真はイメージです。写真:mapo/イメージマート

2010年代前半の地方都市での出来事です。

当時20代の大学生だったHさんは、人生に大きな展望を抱いて生きるほど真剣になれていませんでした。

『あそこの会社、学歴よりもガッツ重視で一括採用してくれるらしい』

ぼんやりとした虚無感は就職活動の段階になっても変わらず、就職への焦りのみに突き動かされた彼は、そんな不確かな噂に判断をゆだねるように、当時盛んだった通信インフラ販売の大手ベンチャーに応募したところ、幸か不幸かあっさりと受かってしまったのです。

配属された部署は事務や契約管理だったそうですが、入ってみると噂通り“ガッツ”で新規開拓営業やテレアポに勤しむ戦力も多く在籍しており、出身大学からもUさん率いる体育会系のメンバーが5人ほど採用されていました。

外回りから戻ってくるなり上司と大声で談笑するUさんたち。そんな様子を遠巻きに眺めていると、Hさんの中に“就職したのに学生時代の肩身の狭さがそのままスライドしたかのようなそこはかとない居心地の悪さ”が滲んできたといいます。

Uさんらとは一方的に距離を置こうとしていたHさんでしたが、出身校が同じだからか、はたまた同じ喫煙者だったからなのか、時折、社内で「よお! Hさーん、元気してる?」と肩を叩かれて自慢話をされることも時折ありました。

そんなある日のお昼過ぎ。

またミスで上司に嫌味を言われたHさんが、缶コーヒー片手に喫煙所で2本目のタバコに火をつけていると、喫煙所の扉が勢いよく開き、外回りから戻ってきたUさんらと鉢合わせになりました。

「だって、霊感あんだろ?」

写真はイメージです。提供:アフロ

「てか、マジで客の質が低すぎるのが全部の原因だろ……お、Hさんお疲れさまです。タバコなんか吸っちゃって、余裕ですねぇ~」

「あ、お疲れさまです」

「あーあ、俺も事務方に配属されればよかったなぁ。涼しい部屋でコーヒー飲みながら仕事したいっすよ。こっちなんか『ネットとかよくわかんねえから』って抜かす爺さんに、30分も説明してるんですから」

「もはやボランティアだよな」

「本当に社会貢献よ。徳積んじゃったわ、俺」

「ご苦労さまです」

Uさんが吸い込んだタバコの煙を吐きながら壁に寄りかかると、タバコ片手にスマホをいじっていたグループの1人であるTさんがこう切り出しました。

「てかさ、明日の飲みで先週の写真のこと話すつもりなん?」

「え、だって霊感あんだろ? 前回あんなの撮れたし、話すしかないっしょ。ねえ、Hさん?」

夜のドライブの先で…

突然Uさんに肩を抱かれたHさんでしたが、何の話なのか見当もつきません。

「おい、Hさん困惑しちゃってるって」

「あ、冗談、冗談」

「いや、別に大丈夫……」

「先週の金曜日の夜に車でこいつらとドライブ行ったんすよ。んで、そのときにね――」

Uさんが滔々と語り始めたのは、一同が先週金曜日の仕事終わりにUさんの家に集まって飲み会をしたときの話でした。

仕事の愚痴やら学生時代のやんちゃエピソードやらで盛り上がっていた彼らは、次第に“社会人になって真面目になった今こそ、かつての自由さを忘れてはいけない”などと、よくわからない方向に火がついてしまったそうで、メンバーの1人が大学時代に先輩から聞いていたとある廃校に肝試しへ行こうということになったのだとか。

写真はイメージです。提供:アフロ

Uさんがワンボックスカーを走らせ、一同は大盛り上がりのうちに市街地から離れた目的地の廃校に到着。

人けのない学校はしんと静まり返っており、校門には鍵すらかかっていません。

かつて児童たちで賑わっていたと思われるグラウンドには、ボロボロになったサッカーボールがひとつ転がっているだけでした。

校舎を探検しようと画策していたUさんたちでしたが、あいにくドアも窓もすべてしっかり施錠されていて入ることができず、手持ち無沙汰になった彼らはいつしか2対2に分かれて、グラウンドでサッカーボールを蹴り合っていました。

その日はそのまま帰路につき…

写真はイメージです。提供:アフロ

「おら! 見ろ、この軸足の抜き方! 全盛期のブラジル10番並みだろ!」

「そのまま無回転決められたら褒められるんだけどなぁ~。それは無理だもんな~」

「余裕だろ。営業で培った体幹舐めんなよ、マジで」

「無理すんなって~」

人数的に1人あぶれたUさんは、休憩がてらタバコを吹かしつつ、時折ヤジを入れながらスマホのカメラで彼らをカシャカシャと撮影していました。

その日は、そのまま何事もなく帰路に着いたそうです。

「で、家帰ってからその時撮った写真見返していたんすけど――」

急にわざとらしく声のトーンを下げたUさん。

「おい、Hさん関係ないんだから~」

「俺たちがボール蹴っている後ろの校舎の窓、多分、職員室の入り口辺りにね、人が立っていたんすよ」

「え……!」

「ビビるっしょ!? でも、怖いのはここから。その人影が両手を前に突き出して、お姫様抱っこみたいに、なんかボロボロの布の塊みたいなの持ってんのよ! ほらこれ――」

おもむろにスマホを取り出すUさん。

「いや、いいですって、そういうのは!」

「ちょっと見てみって!」

嫌がるHさんにグイグイと画面を近づけるUさん。

さっさと見たことにしてこの話を切り上げようと考えたHさんは、薄目でパッと見るふりをすると「見た、見た! もういいってほんと!」と早口で言いながらUさんから体を離しました。

「あはは! マジビビりしてるじゃん!」

突然の着信、その主は…

写真はイメージです。提供:アフロ

事態が急展開を迎えたのは、それから2日後の日曜の夕方でした。

Hさんが自宅でくつろいでいると、突然スマホに見知らぬ着信があったのです。

仕事関連で何かミスでもしてしまったのかと焦ってつい電話に出ると、相手はなんとUさんでした。

「も、もしもし……?」

「あ、急にかけてごめんな……。大学の知り合いに頼んで番号聞いてかけた」

「あ、ああ、そうなんだ……。で、どうしたの、こんな休みに」

「ちょっと今日時間ある?」

「え、今日は別にもうご飯作ってお風呂入るくらいだけど……」

「マジ!? よかったぁ~……じゃあ、今から車で迎えに行くわ。住所も聞いているから。てか、実はもう近くに来てるんだわ。ちょっと準備頼むな」

「……え、いやいやいや、どういうこと?」

一方的に切られた電話。あまりに唐突な出来事に面食らっていたHさんでしたが、嫌々ながらもとりあえず出かける準備を済ませると、示し合わせたかのようにインターホンが鳴りました。

ドアを開けるとUさんが立っていました。

「本当ごめんな……あのさ、金曜に写真見せたじゃん。あれさ、ちょっと見ただけでもダメなんだって……」

「……なんの話?」

事態を飲み込む前に、HさんはそのままUさんにワンボックスカーの中に連れ込まれてしまいました。

文=むくろ幽介

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