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35歳の魔法少女が一番怖いのは悪の組織じゃない!? 会社で「身バレ」に怯えながら敵に立ち向かう異色のコメディ『魔法少女三十路』【書評】

  • 2026.8.12
 ©三倉ゆめ / ヒーローズ
©三倉ゆめ / ヒーローズ

【漫画】本編を読む

『魔法少女三十路』(三倉ゆめ/ヒーローズ)は、「もし35歳の会社員が突然魔法少女になったら?」という突飛な設定を、とことん現実目線で描いた異色のコメディ漫画である。キラキラした魔法少女への憧れよりも、「こんな格好を会社の人に見られたら人生が終わる」という三十路ならではの悲哀に笑わされる作品で、このたび描き下ろしカバーイラストを使った新装版が登場した。

主人公は35歳独身の会社員・保守ようこ。目立たず平穏に暮らすことを何より大切にしていた彼女は、ある日突然、うさぎのような妖精・ウサによって魔法少女にされてしまう。しかし、変身しても若返ることなどはなく、大人の体のまま、いわゆる魔法少女らしさ満点のフリルいっぱいの衣装をまとって悪の組織「邪心(エビルハート)」と戦わなければならないのであった。しかも、その姿はテレビのニュースで報道されてしまい、会社でも噂になってしまう。ようこにとって最大の敵は悪の組織ではなく、「知り合いに見られること」なのである。

魔法少女という王道の設定を、三十路の大人ならではの価値観で徹底的に描いているところが痛々しくも面白い。ようこの表情は、かわいさや可憐さとは程遠く、年相応だ。身バレという「社会的な死」を避けるため、人目を気にしながら顔を隠して変身し、平日は仕事のために会社にも行く。ファンタジーと現実のギャップが絶妙な笑いを生み出している。

さらに、ようこの意に反して、物語はオフィスの中でも展開していく。勤務先に敵が入社してきたり、後輩が闇落ちしてしまったり……。そのたびに魔法少女として奔走する姿には思わず応援したくなる魅力があり、「大人になったとしてもまだまだ新しい役割を背負うことはある」というメッセージも感じられる……かもしれない。

魔法少女に憧れた子ども時代と、現実に追われる大人になった今。そのギャップを笑い飛ばしながら、「この歳だからこそ楽しめる魔法少女もの」を描いた本作は、とにかく笑って元気になりたい人におすすめの怪作である。

文=七井レコア

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