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「しっかりしてよ!不慣れね」新人のミスを嫌味で責めた客。だが、ベテランがそっとかばった結果

  • 2026.8.13

昼下がりに起きた小さな事故

ランチの混雑がようやく引きはじめた午後のカフェ。私はもう十年近く、この店でフロアに立っている。その日、入って三か月の新人が、注文の一品をテーブルに届け忘れていた。

「あの、頼んだサンドイッチ、まだ来てないんですけど」

お客様の声で気づいたときには、注文からずいぶんと時間が過ぎていた。料理はとうに仕上がっていたのに、運ぶ手が回らず忘れられていたのだ。新人の顔がみるみる青ざめ、伝票を握る手が小さく震えている。私はすぐにテーブルへ向かい、深く頭を下げた。

「大変申し訳ございません。ただ今すぐにお持ちします」

遅れたのはこちらの落ち度で、弁解の余地はない。だが、席のお客様は品が届いても矛を収めなかった。

「しっかりしてよ!不慣れね」

吐き捨てるような一言に、新人がびくりと肩をすくめた。

嫌味の矢面に、そっと立つ

「この店、できたばっかり?店員がこんなに使えないなんて、あきれるわ」

お客様は品を口に運びながら、なおもねちねちと言葉を続けた。新人へ向けられた棘は、だんだんと鋭さを増していく。ほかのお客様の視線も、ちらほらとこちらに集まりはじめた。

私は新人を一歩下がらせ、自分がその前に立った。声を荒らげず、ただ静かに向き合う。

「私どもの至らなさで、不快な思いをさせてしまいました。この者はまだ勉強中で、行き届かない点はすべて私の責任でございます。以後、私が承ります」

長年この仕事をしてきて分かったことがある。理不尽な棘には、こちらが慌てるほど相手は勢いづく。だから私は、まっすぐに、落ち着いて受け止めた。

お客様は何か言い返そうと口を開きかけ、私の顔を見て、言葉を飲み込んだ。周りの視線がこちらへ集まる空気に気づいたのか、ばつが悪そうに目を落とす。

「……もういいわ」

そう小さく漏らすと、お客様は残りを平らげ、逃げるように席を立っていった。あれほど続いた嫌味は、その一言でぴたりと止んだ。

張りつめていた新人が、ほっと息をつく。私は伝票を受け取りながら、そっと声をかけた。

「ミスは誰にでもある。次から気をつければいい。矢面はこっちで引き受けるから、あなたは仕事を覚えることに集中しなさい」

新人は唇を噛んで、深く頭を下げた。その目に、うっすら涙がにじんでいる。

「先輩、私……ご迷惑を」

「迷惑なんかじゃない。誰だって通る道よ」

客だからと人を下に見て、日頃の憂さを晴らす人はどこにでもいる。理不尽な棘に、まだ慣れない新人が一人で立ち向かうのは酷だ。

それでも、そんな棘から後輩を守れる自分でいたい。長く続けてきたこの仕事の意味を、静かにかみしめられた午後だった。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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