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忘れられないおもちゃの話。「緑に光る、ドラゴンマスターソード」書店店主・夢眠ねむ

  • 2026.8.5

あの頃夢中になったおもちゃは、今でもはっきりと覚えている。あの時買ってもらえなかったおもちゃも心の片隅に残っている。年を重ねても、記憶に残り続けるのはなぜだろう。書店店主・夢眠ねむさんが語る、おもちゃとの話。

illustration: Tomo Oriyama / text: Nemu Yumemi

織山朋 イラスト
BRUTUS

今息子は2歳。絶賛強き者に憧れを抱いており、「おれは……かいぞくだ」と目つきを鋭くして商店街の夏祭りでもらった短剣を振り回す。ウルトラマンも好きでサンタさんからもらったDXアークアイソードを七色に光らせながらうっとり見ていたりする。

ちょっとしたお土産物屋さんに行ってもすぐ剣の形のおもちゃを見つけてくるので、こりゃ修学旅行に行ったら木刀を買ってくるタイプの子どもだなと微笑ましく思っていた。

年始に実家に帰った時、今流行っているシール帳の当時のものがないか部屋に探しに行った。私の部屋は片付けが苦手な収集癖の見本みたいにめちゃくちゃで数年前に母が大掃除をしてほぼ全てのものを捨てたと聞いていたが、見事にからっぽ。

シール帳なんてないかと諦め気味で押し入れを開けると、母も捨てられなかったであろうおもちゃ数点と本が生き残っていた。その一番手前に鎮座していたのが、蛍光グリーンの剣《ドラゴンマスター》だった。

ソフトビニールみたいな素材で、鞘付き。引き抜くと明るい黄色のブレイドが出てきて、スイッチを入れると光る。小さい頃、毎夏ディズニー・オン・アイスに連れて行ってもらっていて、入り口でキャラクターを模したカップに入ったまんまるのかき氷とおもちゃを買ってもらうのが定番のお楽しみだった。

織山朋 イラスト
BRUTUS

この剣は一目惚れで絶対に欲しかったやつだ。私は冒険物語が好きで、RPGが好きで、魔法使いも好きだけど勇者になりたかった。『美少女戦士セーラームーン』も大好きで憧れだったけど、なりたかったのは鎧に身を包み大剣で戦う『魔法騎士(マジックナイト)レイアース』だった。

忘れていた大切な剣を手に懐かしさで胸がギュッとなっていると、傍で見ていた息子に「これ、ママの?」と羨望の眼差しで見られた。あっ、これってこの剣を見つけた小さい頃の私と同じじゃないか。

「かっこいいでしょ~。光るんだよこれ」大いに自慢して、一緒に戦いごっこをした。


profile

夢眠ねむ(書店店主)

ゆめみ・ねむ/10年間続けたアイドル活動を引退後、本好きのためではなくこれからの本好きを育てる〈夢眠書店〉を東京・下北沢で開業。そのほかキャラクターデザインやプロデュース、コラム執筆など活動は多岐にわたる。

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