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「1階のポストの前で見たの」他人の郵便物を開けて読んでいる住民。目が合ってしまった結果

  • 2026.8.3
「1階のポストの前で見たの」他人の郵便物を開けて読んでいる住民。目が合ってしまった結果

階段の下に並ぶ箱

以前住んでいたのは、四階建ての集合住宅でした。

各部屋の玄関にも郵便受けはありましたが、届け物はたいてい、1階の集合ポストに入ります。

階段の下、自転車置き場の脇に、金属の箱が横並びになっていました。

夕方に帰ると、いつも誰かがそこに立っています。

その人に気づいたのは、越して二か月ほど経った頃です。同じ階段を使う年配の男性でした。

「こんばんは」

声をかけると、こちらを見て軽くうなずきます。手には、封筒がありました。

立っていたのは、自分の部屋の番号のところではありませんでした。

開いたままの封

二度目に見たのは、雨の日の夜でした。傘をたたみながら階段を上がろうとして、足が止まりました。

男性は、ポストの列の端に体を寄せて、封筒の中身を引き出していました。紙を広げて、蛍光灯の下で読んでいます。

隠すそぶりはありませんでした。私の足音に気づいて顔を上げ、目が合って、それから紙に視線を戻します。

読み終えると、丁寧に折って、元の口へ戻していました。

「……こんばんは」

声が出たのは、こちらのほうでした。男性は同じようにうなずいて、階段を上っていきました。

部屋に戻って、夫に話しました。

「どこで見たの」

「1階のポストの前で見たの」

「見間違いじゃなくて」

「新聞を、そのまま読んでた」

夫は少し考えてから、明日にでも管理の方に言おうか、と言いました。

私はうなずきましたが、次の日には言えませんでした。

早く下りるようになって

その人とは、廊下でよくすれ違います。ごみ出しの朝も、階段の踊り場でも、必ず一度は顔を合わせました。

「おはようございます」

「おはよう」

挨拶は返ってきます。天気の話をされることもありました。

話しているあいだ、私は自分の郵便受けのことを考えていました。

郵便が届く時間を調べて、その少しあとに下りるようにしました。届いていれば、その場ですぐに抜き取ります。

夜のうちに一度、寝る前にもう一度、階段を下りる日もありました。

それでも、下りていくと、たいてい先に誰かが立っています。

引っ越しの日まで、私はその人に何も言えませんでした。

最後に階段ですれ違ったとき、男性はいつもと同じようにうなずいて、ポストのほうへ歩いていきました。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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