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「払えないものは払えない、返品もしない」商品を受け取ったまま代金を払わない客。上司が静かに告げた一言

  • 2026.8.2

催促の電話をかける席

コールセンターでアルバイトをしていたころの話です。

私の担当は、通販で商品を受け取ったものの、期限を過ぎても代金の入金が確認できていないお客様へ、支払いをお願いすることでした。

多くの方は、電話をするとすぐに事情を話してくださいます。

「すみません。振り込んだつもりで忘れていました」

「振込用紙をなくしてしまったのですが」

「承知しました。新しい振込用紙をお送りしますね」

ほとんどの場合は、それだけで解決していました。

そのため、次のお客様の情報を画面に表示したときも、特に身構えてはいませんでした。

呼び出し音が四回鳴り、相手が電話に出ます。

会社名と自分の名前を伝えた途端、受話器の向こうから大きなため息が聞こえました。

「また、その話ですか」

「はい。先日お届けした商品の代金について、現在もご入金が確認できておりません」

「払えないものは払えないの。商品も返さないから」

予想していなかった返答に、一瞬言葉が詰まりました。

「ご事情がある場合は、お支払い方法について担当部署へ確認することもできますが……」

「そんなこと頼んでないでしょ。しつこいのよ」

そのまま電話を切られてしまいました。

耳元には、通話が途切れた音だけが残ります。

支払いの遅れは今回で3回目

対応履歴を入力していると、隣の席にいた先輩が声をかけてきました。

「大丈夫?」

「支払わないし、商品も返さないと言われました」

先輩は私の画面を確認し、小さくうなずきました。

「この方、支払いが遅れるのは今回で3回目なの」

過去の履歴を見ると、以前の注文でも期限までに入金がなく、電話や書面で何度か催促したあとに支払っていました。

「前回までは、最終的に払っているんですね」

「そう。でも、今回はすでに何度も案内しているから、通常の電話対応だけでは終われないと思う」

先輩は上司に状況を伝えました。

しばらくすると、上司が私の席までやってきます。

「次の対応をするので、隣で聞いていてください」

上司は対応履歴を確認しながら、同じ番号へ電話をかけました。

上司が伝えた次の手続き

呼び出し音が二回鳴ったところで、相手が電話に出ました。

「だから、払わないって言ってるでしょ」

相手は名乗る前から、強い口調でそう言いました。

それでも上司は、落ち着いた声で話し始めます。

「これまで複数回ご案内しておりますが、現在もご入金が確認できておりません」

「だから、今は払えないの」

「承知しました。それでは本日付で通常のご案内を終了し、支払期限を記載した書面を郵送いたします」

受話器の向こうが静かになりました。

上司はそのまま続けます。

「書面に記載した期限までにご入金が確認できない場合は、債権管理を担当する部署へ引き継ぎます。また、今後のご注文についても停止の手続きを取らせていただきます」

「ちょっと待って。担当部署って何をするの」

「未払いとなっている代金について、今後の対応を進める部署です。ご入金が確認できれば、引き継ぎは停止いたします」

先ほどまで怒鳴っていた声が、急に小さくなりました。

「今日中に払えば、まだ間に合うの?」

「はい。本日中にご入金いただき、確認が取れましたら、今回の手続きはそこで終了します」

「分かった。今日中に振り込むから」

上司は最後まで声の調子を変えることなく、振込方法を改めて案内して電話を終えました。

その日の夕方、顧客情報の画面に「入金確認済み」と表示されました。

言い返すことが仕事ではない

画面を見ていると、上司が私に声をかけました。

「怒鳴られて、怖かったでしょう」

「何を言えばいいのか分からなくなってしまいました」

「言い返す必要はありませんよ」

上司はそう言って、対応履歴を確認しました。

「こちらが感情的になると、話が余計にこじれます。必要な事実と、次に行う手続きを落ち着いて伝える。それが毅然と対応するということです」

私はそれまで、毅然とした対応とは、相手に負けない強い言葉を返すことだと思っていました。

しかし、本当に必要なのは、声を荒らげることではありません。

相手の勢いに流されず、会社の決まりに沿って、伝えるべきことを淡々と伝えることだったのです。

その日の上司の電話対応は、その後も長く心に残りました。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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