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“奇跡の世代”と称される『国民的美少女たち』に突然舞い込んだ“オファー” 声だけで踏み出す【静かな挑戦】

  • 2026.9.10
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一ノ瀬美空 (C)SANKEI

坂道グループのメンバーが、アニメーションの世界でも存在感を見せ始めている。

櫻坂46の山﨑天は、9月25日公開の映画『我々は宇宙人』で声優に初挑戦。主人公・翼のクラスメイトである小夏を演じる。さらに乃木坂46からは、奇跡の世代とも称される5期生の一ノ瀬美空、井上和、冨里奈央、中西アルノが、錦織敦史監督とCloverWorksによるオリジナルアニメーション映画『GROTESQQQUE-グロテスク-』に参加。日向坂46でも今年、小坂菜緒、藤嶌果歩、渡辺莉奈が立て続けに劇場アニメで声優を経験した。声の芝居が、坂道メンバーにとって新たな表現の場になりつつある。

井上和、『銭天堂』で見せた“声だけ”のキャラクター作り

中でもすでに声優として複数の役を経験しているのが、乃木坂46の井上だ。2024年、『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』で声優に初挑戦。最初に演じたのは、銭天堂の地下工房で働く金色の招き猫・にゃぎだった。その後、女中など異なる役で出演を重ね、第141話「六条教授の新発明」からは準レギュラーとなる人工知能の少女・つぐみを担当した。ゲスト出演から始まった挑戦が、継続的な出演へとつながっている。

特に興味深いのが、つぐみという役だ。彼女は六条教授が作ったアプリの中に存在するAIで、人々の悩みに寄り添い、優しく答えを返していく。一見すると人間の少女のようだが、その内側にあるのはあくまでも人工知能。そのため井上には、分かりやすく機械的な声を作るのではなく、柔らかく相手に寄り添いながら、その奥にわずかな“人間ではなさ”を残す芝居が求められた。

つぐみは、人々の悩みに優しく寄り添いながらも、その正体はあくまでAIというキャラクター。井上は、柔らかな声色を保ちながら、どこか一定の温度を感じさせる話し方で、人間らしさと機械的な無機質さが同居するつぐみを表現している。アイドルとして華やかな表情を見せる井上とは対照的な、抑制を利かせた役柄である。

小坂菜緒、藤嶌果歩、渡辺莉奈 日向坂46メンバーが見せた異なる声の芝居

日向坂46の小坂と藤嶌が『劇場版 転生したらスライムだった件 蒼海の涙編』で演じたミオとヨリも、二人の違いが声によく表れた役だった。

二人はともに、海底の国・カイエン国の巫女・ユラに仕える侍女。追手からユラを守りながら、主人公・リムルたちと出会う重要なポジションだ。同じ立場にいる二人だが、そのキャラクターは対照的。小坂演じるミオは大人びて落ち着きがあり、藤嶌演じるヨリは明るく行動的。二人を並べることで、主従だけではない姉妹のような関係性も見えてくる。

小坂が演じるミオは、落ち着きがあり、ユラをそばで支える芯の強さを持ったキャラクター。小坂の穏やかな声質ともよく重なり、抑えたトーンの中にもユラを守ろうとする強い意志を感じさせる。一方、藤嶌演じるヨリは、明るく行動的な性格が印象的だ。ハキハキとした声で快活さを表しながら、ユラに仕える侍女としての振る舞いも崩さず、ミオとは対照的なキャラクターを作り上げている。

普段の日向坂46では、藤嶌の弾けるような笑顔や明るい声も大きな魅力だ。しかしヨリでは、その明るさをそのまま持ち込むのではなく、一度キャラクターに合わせて調整している。対する小坂も、センターとしてステージに立つ際の強い存在感とは違い、声を押し出しすぎずにミオの静かな強さを形にした。同じアイドルグループに所属する二人が、声だけになったことで異なる個性をよりはっきりと見せた例と言える。

そして『新劇場版☆ケロロ軍曹 復活して速攻地球滅亡の危機であります!』では、日向坂46の渡辺が初めて声優を務めた。役名は“渋谷の女性”。主人公たちと行動をともにするメインキャラクターではなく、物語の中に存在する市井の一人だ。

こうした役では、本人の個性を強く押し出すことよりも、『ケロロ軍曹』というすでに完成された世界へ自然に溶け込むことが重要になる。名前の付いたキャラクターを背負う井上や小坂らとはまた違い、短い登場の中で「日向坂46の渡辺莉奈」を感じさせすぎず、一人の登場人物として成立させることが求められる。ゲスト声優というと派手な役を想像しやすいが、こうした小さな役で作品の空気に入っていく経験もまた、声の芝居ならではだ。

山﨑天、一ノ瀬美空らの挑戦へ 声優で見えてくる新たな個性

そう考えると、今回山﨑が『我々は宇宙人』で演じる小夏にも期待が高まる。山﨑は櫻坂46で、視線、表情、身体の角度まで使って楽曲の世界を作ってきたメンバーだ。しかし小夏を演じる際に、その身体は画面には映らない。

『我々は宇宙人』は、平成の田舎町で出会った少年たちの30年にわたる友情を描く作品。小夏は主人公・翼と同じ学校に通い、互いに連絡帳を届け合うような日常に近い存在だ。大げさなキャラクター性よりも、作品に流れる生活感や少年少女の距離感を声で作ることが求められる役になりそうだ。

そして一ノ瀬、井上、冨里、中西が参加する『GROTESQQQUE-グロテスク-』も控えている。現時点ではそれぞれが演じる役は明らかになっていない。それでも、柔らかな一ノ瀬、落ち着きのある井上、穏やかな冨里、歌でも豊かな声色を聞かせる中西と、4人の声にはそれぞれ明確な違いがある。

歌ではメロディや歌詞があり、ライブでは表情や身体がある。しかし声優では、その多くを封じられた状態でキャラクターを成立させなければならない。だからこそ、そこで見えてくるのは、普段のステージとはまた違ったメンバーの表現力だ。

それぞれがステージで磨いてきた表現力や声の個性が、アニメーションという場所でどのような形に変わっていくのか。そして、そこで得た経験が再び歌やライブ、俳優としての芝居に還元されていくのか。坂道メンバーにとって、声優は新たな一面を見せる場所になりつつある。


※記事は執筆時点の情報です。

ライター:川崎龍也
大学卒業後にフリーランスとして独立。現在はアイドル雑誌を中心に、取材・インタビュー/コラム執筆を主軸に活動している。主な執筆媒体は『BOMB』『MARQUEE』『EX大衆』『音楽ナタリー』『RealSound』など。
X(旧Twitter):@ryuya_s04

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