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「犬が玉ねぎを食べた! 深夜だけど今すぐ病院に!」は間違っている。情報過多の時代、動物と共生するために大切なこと【獣医師×爬虫類YouTuber対談 後編】

  • 2026.7.30

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ネコにシャンプーするのはありがた迷惑? ウサギにニンジンをあげすぎると病気の原因に!?『いきものたちの言い分 その愛、正直メーワクです。』(田向健一:監修、こざき ゆう:著/KADOKAWA)は、そんなペットに関する思い込みや勘違いを動物視点で教えてくれる一冊。ユーモラスなイラストが添えられ、気軽に読めるので、小学生の読書感想文にもぴったりだ。

このたび、本書を監修した田園調布動物病院 獣医師の田向健一氏と爬虫類YouTuber・ふじぴこ氏の対談が実現! 動物と人間のすれ違い、ペットを飼う時の心構えについて、ふたりに語り合っていただいた。本記事ではインタビューの後編をご紹介。

大事なのは、動物の立場になって考えること

――カメレオンのようなエキゾチックアニマルに限らず、生き物を飼う時に大切にすべき考え方を教えてください。

田向健一氏(以下、田向):飼う前に、その動物がどこに棲み、何を食べ、どんな環境で暮らしていたかを知るのが大事です。つまり地理ですね。原産地はどんなエリアか知っておくのが、基本中の基本です。

ふじぴこ氏(以下、ふじぴこ):僕も同じ意見ですね。まず調べるのが大前提。今はインターネットも普及していますし、優れた本もたくさんあります。YouTubeでサクッと動画を観て、それだけで勉強した気になって間違った飼い方をされている方もいますが、生息地やエサ、寿命、必要なケージのサイズなどを調べたうえで飼うことが重要だと思います。

田向:そう。ペットショップやイベントで買ってきてから調べるのではなく、買う前に調べる。

ただ、今は情報過多ですし、正しい情報と間違った情報が混在しています。飼育初心者が、正誤を見分けるのは難しいのも事実です。

――ふじぴこさんはYouTubeを通じて、情報を発信する立場でもあります。日頃から心がけていることはありますか?

ふじぴこ:言い切らないことですね。この世界は、情報が日々更新されます。昔は正しいとされていた飼い方が、今はNGとされることも多々あります。

間違った情報は発信しないよう、自分なりにしっかり調べて、経験に基づいて情報発信していますが、「現時点では、僕はこの飼い方がいいと思う。ただ、この先もベストかと言ったら、そうではない可能性はありますよ」と常々伝えるようにしていますね。大前提として、飼い主さんには日々しっかり考えて飼ってほしいので。

田向:そう、考えることが大事ですよね。しかも、動物の立場になって考える。いくら愛情があったとしても、人間目線ではうまくいきません。よくトカゲを撫でて、「目をつぶってるから気持ちいいんだな」「飼い主に馴れているんだ」という人がいますが、トカゲからすればただ困っているだけですから。

ふじぴこ:そうですよね。動物視点でしっかり考えることも、飼い主である人間の責任だと思います。

――とはいえ、言葉が通じない動物の気持ちを理解するのは難しいですよね。

田向:そうですね。僕も、幼少期からいろいろな動物を飼い、失敗を重ねてきました。「ああ、自分が良かれと思ってしたことがアダになったんだな」という経験もたくさんしています。

例えば、子どもの頃、僕が大事にしていたイモリ。本を調べたら「冬になると、落ち葉の下に入って冬眠する」と書いてあったんですね。それで、冬には落ち葉の代わりにオガクズを敷いたんですけど、潜らないんですよ。今思うと、オガクズを入れたからってそんなにすぐ眠るわけがないのですが、「冬眠させなきゃ」と思ってしまって。それで、オガクズに穴を掘ってイモリを入れましたが、出てきてしまう。それを繰り返していたら、弱って死んでしまって。僕がいじり殺しちゃったんですね。

大きなトノサマガエルを飼っていた時も、失敗をしました。ある時、リクガメを飼っているおじさんがテレビで紹介されていたんです。そのおじさんがリクガメをお風呂に入れているのを見て、僕もカエルをお風呂に入れたところ、死んでしまいました。リクガメをお風呂に入れるのは間違っていないのですが、カエルは入れてはいけなかった。そういう経験を通して、動物にとって迷惑な行為を学んできたんだと思います。

ふじぴこ:僕も、これまでにいろんな失敗をしてきましたね。トゲオアガマを飼っていた時は、便秘が原因で死なせてしまったこともありました。トゲオアガマを温浴させるかどうかは、飼い主によって意見が分かれるところ。僕は「乾燥地帯に棲むトカゲだし、水浴びをする習性もないので必要ないだろう」と思っていました。ただ、温浴してお腹をマッサージするとうんちが出る場合もあると、後から知って。最初から「温浴は必要ない」と決めつけず、試してみればよかったなと後悔しました。

田向:それも難しい問題ですよね。確かに排便を促す方法のひとつとして、温浴やマッサージがあります。ただ、便秘の時に試すだけで十分なのに、定期的にやり続ける飼い主さんがいるんです。そうやって情報を自分本位に変換すると、動物にとって迷惑行為になりかねません。

ふじぴこ:間違った愛情を注いでしまうわけですね。

田向:例えば、犬に玉ねぎを与えてはいけないというのも有名な豆知識ですよね。確かにその知識は正しいですが、かと言って大型犬が玉ねぎをほんの少し食べたところで何も問題ありません。「犬は玉ねぎを食べてはいけない」という知識だけで物事を判断するから、夜中に動物病院に走ることになってしまうんです。人間だって毎日醤油を使いますけど、それだけでは毒になりませんよね。でも、大人でも1.8リットルくらい飲んだら死んでしまいます。にわか知識で過剰なことをすると、動物にかえって負担をかけることになる。その点を注意してほしいですね。

人間の常識を動物に押しつけていないか、自問自答を

――大変なことも多いですが、ペットと暮らす日々には苦労を上回る喜びがあるのではないかと思います。おふたりは、動物との暮らしにどんな楽しさを見出していますか?

ふじぴこ:僕も何度も失敗しましたし、挫けそうになったこともたくさんあります。そもそもカメレオンは寿命が長い生き物ではないので、死を経験するたびに「僕が間違っていたのかな」「もっとできることはなかったか」と振り返ることが多くて。それでも、やっぱりカメレオンが好きなのでまた飼う。そうやって経験を重ねて自分自身がレベルアップすることで、その生き物にとって少しでもプラスになればいいなと思いながら、日々爬虫類と向き合っています。

田向:爬虫類や両生類の場合、飼い始めてすぐにはエサを食べないことが多いですよね。今はそうでもないですが、昔の爬虫類はエサをなかなか食べないのが前提だったんです。それをいかにしてエサを食べるように持っていくかが、爬虫類飼育の大きな喜び。飼い始めて環境に慣れさせるまでを「立ち上げ」というのですが、そこが醍醐味ですよね。

ふじぴこ:その通りだと思います。もともとの生態を調べて、それに近いレイアウトで飼って、エサを食べさせて、繁殖も成功させて。試行錯誤を重ねた末に良い成果が出て、「よっしゃ、間違ってなかったんや!」と思うのが一番うれしい瞬間です。もちろん、繁殖によってきれいなモルフ(遺伝的変異による色や模様など外見上の違い)を作出するブリーダーのような楽しみ方もありますが、僕の場合はその子に適した飼い方を考えるのが好きですね。

田向:ふじぴこさんは、爬虫類の背後に広がる景色が好きなんですよね、きっと。

ふじぴこ:そうですね。去年、マダガスカルに行ったのですが、爬虫類が棲息する風景をナマで見てすごく感動しました。

田向:僕もそうなんです。生き物の情景が見えるのが、好きなので。

――最後に、これからペットを迎え入れる人に向けてメッセージをお願いします。

ふじぴこ:しっかり考えて、自分の意思で責任を持って飼いましょう。

田向:僕も同じですね。調べた知識を鵜呑みにせず、自分で考えることが大事。今は、AIが出した答えが正しいと信じる人も多いですが、それではダメですね。

ふじぴこ:AIが間違っていることもありますよね。

田向:そうなんです。僕がある病気のことをAIに質問したら、それらしい答えを出してきたんですよ。でも、出典を聞いたら、「出典はありません」と答えてきて。僕ら獣医師は、学術的な根拠を重視して批判的に物事を見ますが、そうでない人も多いでしょう。裏を取ることをせず、AIの間違った回答を信じてしまうのは危険ですよね。

だからこそ、考えることが重要なんです。「このトカゲはコオロギを食べます」とネットに書かれていたとしても、ただケージに入れるだけでは食べません。コオロギを弱らせたり、ピンセットの動かし方を変えたり、考えて工夫することが必要です。個体によっても差があるので、ネットの情報をそのまま真似してもダメなんです。

ふじぴこ:コオロギの種類を変えるだけでも違いますし、時期によってエサを食べないことも。爬虫類の場合、毎日エサを食べる種類のほうが少ないので、犬や猫と同じ感覚でエサを与える必要はありません。その生き物に合った飼い方を学んでほしいですし、僕が情報を発信する時にも気をつけています。

こうした情報を得るためにも、『いきものたちの言い分』はすごくいいですよね。いろいろな動物について幅広い知識を学べますし、「この生き物ってこうなんだ。じゃあ、もしかしたらこの生き物も似たような種類なので、生態が近いんじゃないか」と考えることもできます。

田向:参考にしてもらえたらうれしいですね。

ふじぴこ:できれば、読んだあとに他の人と話し合ってほしいですね。僕は、爬虫類のイベントを通していろいろなお客さんとお話しさせていただくんですけど、初心者でも上手に飼っていらっしゃる方がいたり、「あ、そういう視点もあるんだ」と気づかせてくださる方がいたりと、すごく勉強になるので。

田向:僕もこの本を作りながら、人間が考えている以上のことを動物も考えているんだなと再認識しました。人間は、必ずしも生物界のトップではありません。種が違えば、常識もまったく違います。自分が人間の常識を動物に押しつけていないか、常に自問自答しながら動物と接してほしいと願っています。

取材・文=野本由起

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