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「どんなコネ使ったの」必死に勉強して掴んだ就職。だが、祖母の第一声が踏みつけた瞬間

  • 2026.7.31

求人票を一枚だけ選んだ夏

地元の高校を出たら、この町で働く。

進路希望の紙にそう書いたのは、誰かに言われたからではありません。

「本当にそれでええんか」

「うん。ここで働きたいから」

父はそれ以上は聞かずに、進路指導室の面談の日だけ手帳に書きこみました。並んでいる求人票は多くありません。

その中の一社に絞って、放課後は毎日、筆記の過去問と面接の受け答えを繰り返しました。

担任には滑り止めも受けておけと言われましたが、志望はその一社だけで通しました。

内定の封筒を持って帰った日、母は台所で泣いていました。

「よう頑張ったねえ」

初任給は18万円。

求人票のその数字を、私は何度も指でなぞりました。父は親戚に一軒ずつ、うちの子が決まったと電話をかけていきます。

受話器を取った瞬間

家の電話が鳴ったのは、その二日あとの夕方でした。

「もしもし」

返ってきたのは、父方の祖母の声です。

「どんなコネ使ったの」

おめでとうも、お疲れさまもありませんでした。何と答えればいいのか分からず、私は受話器を握ったまま立っています。

「大学も行かんと、就職なんてねえ」

「……はい」

「まあ、あんたが決めたんならええけど。じゃ、たまには遊びに来なさいね」

言いたいことを言い終えると、通話は切れました。あとに残ったのは、耳に押し当てたままの短い電子音だけです。

父が黙ってかけ直した

受話器を戻した私を見て、父が新聞を畳みました。

「ばあちゃんか」

「うん」

父は何も聞かずに立ち上がり、廊下の電話の前に座ります。番号を押す音が続いて、それから低い声がしました。

「母さん、俺や」

怒鳴りはしません。いつもの、少し眠たそうな声のままです。

「あの子は一年かけて自分で勉強して、あの会社に受かった。コネなんぞ一つも使うてない」

向こうの返事は聞こえません。

父はしばらく間を置いて、それだけ言い足しました。

「次に電話くれるときは、おめでとうから頼むわ」

受話器を置いて戻ってきた父は、卓袱台の湯呑みを持ち上げました。

「初給料出たら、うまいもん食いに行こか」

「……うん」

次に祖母から電話があったのは、その週の日曜です。私が出ると、受話器の向こうが一度だけ黙りました。それから聞こえた第一声は、前とは違っていました。

「おめでとう。体だけは壊さんようにね」

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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