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「立っての撮影は、ご遠慮ください」運動会で他の保護者の視界を遮ってしまった父親。だが、3度目のアナウンスで見せた顔とは

  • 2026.7.30
「立っての撮影は、ご遠慮ください」運動会で他の保護者の視界を遮ってしまった父親。だが、3度目のアナウンスで見せた顔とは

自由席の朝

娘の運動会は自由席で、開場と同時に保護者が一気に流れ込みます。

私も朝いちばんに並んで、本部テントの斜め後ろにシートを広げました。

隣に来たのは、カメラを首から下げた男性でした。

四つ折りのシートを勢いよく開くと、端がこちらの家族の場所まで伸びてきます。

「ここ空いてますよね」

確認というより、もう決めた口調でした。

妻が荷物を寄せて、私たちは膝を抱えるかたちで座り直します。

前の列の家族が、こちらを見て少しだけ眉を上げました。

妻が肩をすくめて、プログラムを膝の上で開き直します。

立ったままのレンズ

競技が始まると、その男性は立ち上がりました。

両手でスマートフォンを高く構えて、トラックのほうへレンズを向けています。

座ったままの私たちの視界は、その背中でふさがれました。

トラックの白線は、手前の半分しか見えません。

後ろの列は、もっと見えていないはずです。

しばらくして、本部テントから放送が入りました。

「立っての撮影は、ご遠慮ください」

背中は動きません。

二つ目の競技が終わるころ、二度目の放送がありました。

「後ろの方が見えにくいので、立っての撮影はご遠慮ください」

それでも変わりませんでした。

周りの保護者は顔を見合わせて、苦笑いのまま座っています。誰も声をかけません。

3度目の放送が流れて

娘の学年の出番が近づいたころ、3度目の放送が流れました。先生の声は、それまでと同じ落ち着いた調子です。

「周りの方が見えなくなるので、座ってご覧ください」

男性がスマートフォンを下ろして、初めて振り返りました。

後ろには、折りたたみ椅子に座ったおばあさんと、その膝にいる小さな子がいます。

顔から、それまでの構えが抜けました。

何か言いかけて、口を開いたまま止まります。

目線が下がって、自分の足元のシートに座りました。

男性はその場にしゃがみ、伸びていたシートの端を手前にたたみ込みます。

「すみません、広げすぎてました」

「いえ、助かります」

それだけ返して、私も膝の位置を戻しました。前の列の家族がうなずくのが見えます。

男性は最後まで座ったまま、腕だけを伸ばして撮っていました。

徒競走で娘が二着になった瞬間、私の横で拍手の音がひとつ増えます。

同じ放送は、その日それきり流れませんでした。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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