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80代男性「猛暑日のふらつき」で通報「転んでいません」と訴えるが…救急隊が気づいた“重要な違和感”

  • 2026.8.20
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。ライターのとしです。

救急現場では、傷病者本人の訴えをもとに、体調不良の原因やけがの有無を確認していきます。

しかし、本人が出来事を覚えていなかったり、大したことではないと思っていたりして、説明と体に残った痕跡が食い違うこともあります。

今回は、「転んでいない」と話す80代男性の膝や頭に、気になる痕跡が見つかった事案をご紹介します。

「ふらつく」と訴えた80代男性

暑さの厳しい夏の日、80代男性がふらつきを訴えているとの救急要請が入りました。

現場へ到着すると、男性の意識ははっきりしており、救急隊からの質問にも答えられる状態です。

本人によると、少し前から足元が安定せず、立っていると体が揺れるような感覚があったとのことでした。

救急隊は、ふらつきが始まった時間や食事、水分摂取の状況、持病、服用している薬などを確認します。
ふらつきには、暑さによる体調不良だけでなく、血圧の変化や低血糖、脳や心臓の病気など、さまざまな原因が考えられるためです。

転倒していないか尋ねると、男性は「転んでいません」と繰り返しました。

膝に残っていた不自然な汚れ

男性の話を聞きながら全身を観察していると、膝や衣服に付いた汚れが気になりました。

屋外の地面に膝をついたような汚れ方で、普通に歩いていただけでは付きにくいように見えます。

そこで改めて、「どこかで転んだり、膝をついたりしませんでしたか」と確認しました。

しかし、男性はやはり転倒した覚えはないと答えます。

本人が隠しているというより、転んだ瞬間を覚えていないか、膝をついた程度で転倒とは考えていなかった可能性もありました。

説明と衣服の状態が一致しないため、救急隊は全身をさらに詳しく観察することにしました。

一時的に意識を失った可能性も

頭部を確認すると、何かにぶつけたような痕跡も見つかりました。

大きな出血はありませんでしたが、転倒した際に頭を打った可能性を否定できません。

さらに気になったのは、男性に転倒した記憶がなかったことです。

暑さやふらつきによってバランスを崩しただけでなく、一時的に意識を失い、そのまま倒れた可能性も考える必要がありました。

救急隊は、倒れる前に目の前が暗くならなかったか、胸の苦しさや動悸、吐き気を感じなかったか、前後の記憶が残っているかを確認しました。

一時的な意識消失の背景には、血圧の変化や不整脈、脳の病気などが隠れている場合があります。

そのため、意識状態や血圧、脈拍、心電図を確認するとともに、手足の動きや顔の左右差、話しにくさなども観察しました。

本人の言葉だけでは分からないこともある

救急隊は、ふらつきの原因に加え、一時的な意識消失や頭部、膝のけがも考慮して医療機関へ搬送しました。

搬送中は意識状態や血圧、手足の動きなどを繰り返し確認しましたが、容体に大きな変化はありませんでした。

無事に医療機関へ引き継ぎ、検査を受けた結果、頭部や膝に大きな異常は見つかりませんでした

ふらつきの原因は暑さによる体調不良と考えられ、その際に転倒した可能性がありました。

結果的に重大なけがはありませんでしたが、「転んでいない」という言葉だけで判断していれば、頭を打ったことや、一時的に意識を失って倒れた可能性を見落としていたかもしれません。

救急現場では、傷病者の訴えを大切にしながら、衣服の汚れや体に残った小さな痕跡にも目を向けます。

本人が覚えていない出来事が、体や周囲の状況に残されていることもあるからです。

話を聞くだけで終わらず、全身を丁寧に観察することの大切さを改めて感じた事案でした。


ライター:とし
元救急隊員。消防で17年、主に救急隊として活動し救急救命士資格を取得。現場経験をもとに、救急の分かりにくい部分を一般向けに噛み砕いて発信しています。


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