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「玄関まで持ってこい、遅いんだよ」指定の時刻に着いていた配達員。だが、文句を言う客につきつけた事実とは

  • 2026.7.27
「玄関まで持ってこい、遅いんだよ」指定の時刻に着いていた配達員。だが、文句を言う客につきつけた事実とは

指定の時刻に押した呼び鈴

配達の仕事を始めて半年、その日の最後の一件は住宅街の奥にある一戸建てでした。

指定は午後1時から2時のあいだです。

端末の画面で時刻を確かめてから、表札の下のインターホンを押しました。家の中で呼び出し音が鳴っているのは、外に立っていても分かります。

返事はありません。もう一度押して、少し下がって二階の窓を見上げました。

登録された番号にかけても、呼び出し音が続くだけです。

荷物を抱え直し、玄関前の日陰で待ちました。

次の便の時刻が近づき、端末に不在の入力画面を出しかけたときでした。内側で鍵の回る音がして、扉が開きます。

「遅いんだけど」

五十代くらいの男性が、ドアノブに手をかけたまま言いました。

「お待たせして申し訳ございません。1時40分にお伺いして、何度かお呼びしておりました」

「聞こえてないよ、そんなの」

たたきの端に置いた箱

箱を差し出しても、男性は受け取ろうとせず、片足を後ろへ引きました。

「玄関まで持ってこい、遅いんだよ」

「失礼いたします」

靴を脱がないまま、たたきの端へそっと箱を下ろします。

伝票の控えを差し出しましたが、男性は署名の欄をにらんだきり動きません。

「もっと早く来てくれればよかったのに」

私は端末を持ち直し、画面をお客様のほうへ向けました。

画面に並んだ到着の記録

「本日の記録でございます。到着が1時40分、呼び出しが3回、お電話が1件残っております」

並んでいるのは時刻と数字だけです。責める言葉はどこにもありません。

男性の眉が、一度だけ動きました。

「…1時40分って、書いてあるな」

「はい。ご指定のお時間の中でお伺いしております」

「……そんなの、こっちは知らないだろ」

言い返さずに頭を下げると、男性は次の言葉を言いかけて、そのまま飲み込みました。

視線がたたきの箱へ落ち、それから私の顔を避けるように横へ流れていきます。

隣の家の方が庭に水をやりながら、こちらへ小さく会釈をしました。

ずっと聞こえていたのだと分かる会釈でした。

「…ああ、うん。もういいよ」

扉が閉まる音は、開いたときよりずっと静かでした。

翌週、同じ住所の荷物がまた台車に載りました。呼び鈴を押すと、今度は一度で扉が開きます。

「ご苦労さん。ここでいいよ」

男性は玄関先で箱を受け取り、私が礼を言うより先に、小さく頭を下げました。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、20代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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