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「まぁ、もう結婚は諦めろよ」叔父が酔って言った冗談。だが、伯母が一言で止めた瞬間

  • 2026.7.27

床の間から一番遠い席

親戚が集まるのは、毎年正月の二日です。座敷に上がったら、床の間から一番遠い隅に座る。それが私の決まりごとでした。

猪口を持って、煮物をつまんで、時間が過ぎるのを待つ。誰にも話しかけられなければ、その日はうまくいったことになります。

台所からは伯母が皿を運んでいました。父の姉で、この家の正月をずっと仕切ってきた人です。

「今年の酒は俺の奢りだからな」

床の間の前で、叔父が一升瓶を掲げていました。親戚のなかで一番の盛り上げ役だと、本人が言っている人です。

猪口を持ったまま絡まれて

徳利を提げた叔父は、盃をひと通り配り終えると、そのまま私の隣に腰を下ろしました。座卓の煮物を一切れつまんで、こちらへ体を向けます。

「どうだ、彼女は見つかったか」

「はあ」

「見つかったのか、見つかってないのか、どっちだ」

「まあ、ぼちぼちです」

「男が独りでいるのは、よくないんだよ」

「はあ」

去年も一昨年も、同じ問答をしました。私が短く返すほど、叔父の声は大きくなります。座敷の会話が、ひとつずつ止まっていくのが分かりました。

叔父は私の猪口に酒を注いで、それから座敷じゅうに聞こえる声で言いました。

「まぁ、もう結婚は諦めろよ」

笑い声が起きるのを待つような間がありました。

誰も笑いません。叔父は私の肩をどんと叩いて、自分の猪口を空けます。

伯母が置いた短い一言

お盆を持った伯母が、その隣で足を止めました。

「その話、あんたが決めることじゃないでしょう」

叔父の笑いが、途中で止まります。

「いや、俺は励ましてやってるだけで」

「励ましなら、言われた人が笑ってるはずよ」

伯母はお盆を座卓に置いて、私の前の空いた皿を下げました。叔父は何か言いかけて、それを飲み込みます。

「お酒はありがたいわ。付いてくる話はいらないけど」

座敷の端で、いとこが小さくうなずきました。向かいの叔母も「ほんとよね」と続きます。叔父は猪口を置いて立ち上がり、床の間のほうへ戻っていきました。

私は一言も言い返していません。伯母は何事もなかった顔で、私の湯呑みにお茶を注ぎ足していきました。それでも、隅の席が急に広くなった気がします。

帰り際、玄関で靴を履いていると、叔父が横を通ります。

「じゃあな」

目は合いませんでした。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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