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「人見知りなんだと思うよ」挨拶もしなかった隣の奥さん。だが、初めて言葉を交わせた理由とは

  • 2026.7.27

越してきた家族と、朝の会釈

隣の家に若い家族が越してきたのは、四年ほど前の春でした。

引っ越しの挨拶に来てくれたのはご主人のほうで、タオルの箱を抱えていました。

「子供もいて音が出るかもしれません。すみません」

穏やかな方でした。奥さんはその後ろに半歩下がったまま、こちらを見ませんでした。

会釈だけして、先に家へ入っていきます。

それきり、奥さんと言葉を交わしたことはありません。

ごみ捨て場で会っても、目が合いそうになると視線が下がります。スーパーの通路で見かけた日は、かごを持ったまま別の棚のほうへ曲がっていきました。

「人見知りなんだと思うよ」

夫はそう言って、それ以上は何も言いませんでした。私もそう思うことにして、四年が過ぎました。

子供との挨拶が始まる

代わりに、隣の男の子がよく声をかけてくれます。

四歳くらいでしょうか。

「ヤッホー」

うちの玄関が開く音がすると、庭を走ってきてフェンス越しに手を振ります。

はじめは私も嬉しくて、そのたびに手を振り返していました。

「ヤッホー」

返すと、また返ってきます。

十回、二十回と続いて、先に切り上げるのがどうしても申し訳なくなりました。

「玄関が開くと、いつもヤッホーが始まる」

夫が笑いながら言いました。

笑いごとのつもりだったと思います。けれど私は、息子が外で遊びたいと言っても、すぐにいいよと言えなくなっていました。

手を挙げた人

その日も、庭に出た息子の後ろで、私はドアの取っ手を握ったままでいました。

「ヤッホー」

「あのね、きょうは、なわとびもってきた」

フェンスの向こうから、縄を持った手が突き出されました。

返事をしようとしたとき、隣の玄関の網戸が開く音がしました。

「すみません、いつもうるさくして」

奥さんの声を聞いたのは、越してきてから初めてでした。

「うるさいなんて。うちも、返すのが楽しくて」

「ずっと、挨拶できてなくて。言おうと思うたびに、いまさら遅いなと思ってしまって」

奥さんは言いながら、自分の指先のあたりを見ていました。

「私も、声をかけそびれていました。おあいこですね」

「ママ、ヤッホーは」

男の子がフェンスをつかんで、下から奥さんを見上げました。

奥さんは少し笑って、小さく手を挙げました。

「ヤッホー」

それから、玄関が開く音がしても、私は身構えなくなりました。返す声が、二つになったからです。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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