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「テキパキ出来ないなら転職しろ」お金を投げた客。去った後、他の客の一言に救われた瞬間

  • 2026.7.22

ドア越しに聞こえた怒鳴り声

自動ドアが開いた瞬間、店の奥まで届く声が飛んできました。

「さっさと会計しろよ、幾らなんだ」

惣菜の棚の前で、足が止まりました。レジでは、上着を腕にかけた男性がカウンターに身を乗り出しています。

「八百六十円でございます」

若い店員がそう言い終わらないうちに、握った小銭がカウンターへ放られました。硬貨が跳ねて、床へ散っていきます。

「落ちたぞ。拾うのが仕事だろ」

店員はレジの横から出てきて、しゃがみ込みました。一枚ずつ、指先で拾い上げていきます。離れた場所からでも、口元がこわばっているのが見えました。

「ちょうど、お預かりいたします」

男性は袋を引ったくると、出口の前で立ち止まって振り返りました。

「テキパキ出来ないなら転職しろ」

ドアが閉まりました。店内に残ったのは、冷蔵ケースの低い音だけです。

列が店員に返した言葉

私はレジに商品を置きながら、迷った末に声をかけました。

「変わり者はどこにでもいるものだから、気にしないで頑張ってください」

立派なことを言ったわけではありません。何も言わずに帰るのが、なんとなく気まずかったのです。

「……恐れ入ります」

返ってきた声が、少しだけ低く揺れました。

会計を終えて横にずれると、次に並んでいた作業着の男性が、こちらを見ないまま言いました。

「気にしないでいいよ。あんなの、たまたまだから」

その後ろの、自転車の鍵を指に引っかけた学生が続きます。

「俺も見てました。全然、悪くないっす」

さらに後ろの女性が、かごを置きながら言いました。

「ここのレジ、いつも気持ちがいいので来てるんですよ」

誰も、帰っていった男性のことは口にしませんでした。悪口も、ため息も出ません。順番が来た人が一言だけ置いて、袋を提げて出ていきます。それが、列の後ろへ順に伝わっていきました。

「……ありがとうございます」

店員は一度だけ深く頭を下げました。

そのまま、しばらく顔を上げませんでした。目を伏せて、レジの縁を握っています。

外へ出て振り返ると、ガラスの向こうで店員が背筋を伸ばしていました。次の客に向かって、はっきりと頭を下げています。

その声は、閉まったドアの外まで届いていました。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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