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「もうちょっとだけ、我慢してね」預け先がなかった娘。預かると言っていた義母の態度に絶句

  • 2026.7.21

受話器の向こうの、断り文句

呼び出し音が三回鳴って、義母が出ました。

「来週の水曜日、ご都合はいかがですか」

「水曜はコーラスなのよ」

「じゃあ、木曜日は」

「その日もバレエ、3件も予定が」

お願いしたかったのは、たった一時間です。娘を見ていてもらえれば、病院の予約を済ませられました。

義母は、とにかく多趣味な人です。

バレエにコーラス、俳句の会。専業主婦なのに、手帳は隙間なく埋まっています。

それでも会うたびに、義母はこう言います。

「いつでも見るからね。遠慮しないで頼って」

その言葉を信じて電話をかけるたび、私は予定を聞かされる側になりました。

結局その週も、娘を抱えて病院へ向かいました。

消毒液の匂いのする待合室で、娘は椅子に座っていられず、膝の上で身をよじります。

「もうちょっとだけ、我慢してね」

握り返す娘の手のひらが、汗で熱くなっていきます。診察室に呼ばれた頃には、私の方が疲れ果てていました。

自分で預け先を決めた日

こちらの都合でお願いしている手前、責める気にはなれませんでした。

それでも次の用事のとき、受話器を持ち上げたまま指が止まりました。

また呼び出し音を聞いて、また断られる。その繰り返しに、心が先に折れたのです。

次の日曜日、義実家で私は自分から切り出しました。

「お義母さん。娘のこと、もうお願いしません」

「どうしたの急に。いつでも見るって言ってるでしょう」

「いつでも見ると言われて頼るたびに断られるのが、一番こたえるんです」

義母の笑顔が、そこで固まりました。

「断ってなんて…ちょっと予定が重なっただけで」

「一時保育に申し込みました。預け先は、自分で確保します」

義母は湯呑みを持ち上げかけて、置き直しました。言い返そうと口を開いては、そのたびに飲み込んでいます。

そこへ、新聞をたたんだ義父が口を挟みました。

「お前の手帳、いつ見ても真っ黒だからな。断られる方の身にもなってやれ」

義母はうつむいて、それきり何も言えませんでした。

それから、電話をかけてくるのは義母のほうになりました。

「来月の予定、全部空けてあるから。いつでも言ってね」

「ありがとうございます。でも、もう申し込んだので」

「……本当に、いつでもいいのよ」

声が、少しずつ細くなっていきます。

一時保育の先生は、約束の時間に預かって、約束の時間に返してくれます。断られるかもと身構えなくていい。

それだけで、病院へ行く足取りが違いました。

今では義母のほうが、会うたびに手帳を開いて見せてきます。ここも空けた、ここも空けたと。

頼むか頼まないかを決めるのは、私になったのでした。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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