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timelesz佐藤勝利主演『君と花火と約束と』が“王道の恋愛青春アニメ映画”なのに「意外な要素」を含むワケ

  • 2026.7.21
佐藤勝利がアニメ映画で初主演を務めた『君と花火と約束と』は、『君の名は。』を思わせる「王道の青春恋愛物語」が紡がれながらも、実は「意外な要素」こそが重要な作品でした。(画像出典:(C) 映画「君と花火と約束と」製作委員会 2026年7月17日(金)公開)
佐藤勝利がアニメ映画で初主演を務めた『君と花火と約束と』は、『君の名は。』を思わせる「王道の青春恋愛物語」が紡がれながらも、実は「意外な要素」こそが重要な作品でした。(画像出典:(C) 映画「君と花火と約束と」製作委員会 2026年7月17日(金)公開)

劇場アニメ『君と花火と約束と』が劇場公開中です。結論から申し上げれば、本作は「王道の恋愛青春アニメ映画」として老若男女におすすめできる良作でした。それでいて、パッと見のイメージではわからない「意外な要素」が重要だったのです。

前置き:『君の名は。』のような王道の青春恋愛に思えるけど、実は……?

何しろ王道と言えるのは「高校生のひと夏の恋」や「過去に交わされた約束」というロマンティックな要素。『君の名は。』を連想する人も多いでしょう。

しかし、中盤からは「これまでの流れとは異なるようで実は繋がっている」展開とメッセージ性があり、そこに作り手の「誠実さ」がはっきりと表れており、同時に「多くの人が知らないこと」をエンターテインメントとして示すことに意義があった、と思えたのです。

(C) 映画「君と花火と約束と」製作委員会
(C) 映画「君と花火と約束と」製作委員会

そして、「長岡花火大会」が重要なモチーフとなっており、夜空で開く花火の美しさは「暗がり」の空間である映画館でこそ際立ちます。見た後は、きっと新潟県長岡市へ「聖地巡礼」にも行きたくなるでしょうし、特に毎年8月1日から3日にかけて開催される「長岡まつり」を楽しみたくもなるはず。timeleszの主題歌『消えない花火』も高揚感たっぷりで、作品の余韻とマッチした名曲でした。それ以外の予備知識はなくてもいい、というくらいですが、ここから内容に触れつつ、3つのポイントから作品の魅力を紹介しましょう。前述した意外な要素にも触れているので、予備知識なく見て驚きたいという人は、先に映画館へ足を運ぶことをおすすめします。

1:いきなり「運命の人」と言われる? 佐藤勝利がナイーブで不器用な高校生を体現

物語の発端は、高校生の夏目誠が、初めて出会った同級生の葉山煌に「ずっと会いたかった…!」と声をかけられたこと。というのも、煌は幼い頃からおばあちゃんに「いつか夏目誠という男の子と出会い、お前のために絵を描いてくれる」と聞かされていたというのです。

(C) 映画「君と花火と約束と」製作委員会
(C) 映画「君と花火と約束と」製作委員会

「初対面の女の子にいきなり運命の人だと言われる」という、意図的にせよ突飛にもほどがある始まり方なので戸惑う人も多いでしょうが、だからと言って、この2人がすぐに恋仲になるわけではない、ということが重要でした。

何しろ、その煌の言葉をきっかけに、誠は中学時代に一度は辞めたはずの絵を再び描き始める……のですが、思い通りにはいかず、そのために煌の言う運命の人と自分自身が重ならず、誠は次第に煌と距離を取るようになっていくのです。そんな誠は、本作の原作となる小説を執筆した真戸香が、取材で高校1年生の男子と一対一で話した全員から、「やりたいことは昔からありましたか?」という切実な悩みを問われたからこそ、生まれた主人公像だったようです。

「夢中になれるものがなかなか見つからない」というのはなるほど今の若者らしい悩みでしょうし、好きだったことに再び向き合う(劇中では初対面の女の子から)きっかけを与えられてもなおも、思うようにはいかないというのも、とても普遍的な悩みであり、そこに向き合う物語の発端から、誠実だと思えたのです。

(C) 映画「君と花火と約束と」製作委員会
(C) 映画「君と花火と約束と」製作委員会

また、アニメ映画で初主演となるtimeleszの佐藤勝利は、正直に申し上げると、序盤はアニメのかわいらしい絵柄から、元々の特徴のある声質が少し浮いている印象で、厳しい声も届くかもしれない、と思う部分もありました。しかし、ナイーブかつ不器用で、それでいて誠実さを根底に備えたような「どこにでもいる高校生」を佐藤勝利はしっかり体現しており、終盤の感情が大きく動く演技には確かな感動もありました。

2:実はヒロインが2人? 高橋李依の「愛らしいけど過酷さも感じさせる」熱演

そんな風に「運命の人と言われても、そうはなれない」序盤の流れも面白く観られるのですが、物語の大きな転換となるのは、それから1年後の夏の出来事。煌が急に長岡に引っ越すことを知らされた誠は、彼女と同じ新幹線に飛び乗って、自分たちを繋いだ“花火の絵”の謎を調べようとするのですが……待ち合わせ場所で、今の時代とは思えない服装と言葉遣いの少女・ハルと出会うのです。

(C) 映画「君と花火と約束と」製作委員会
(C) 映画「君と花火と約束と」製作委員会

もっとはっきり言えば、「戦争の時代からタイムスリップをしてきた少女と交流する」SF物語になるのです。ここで「あれ? ヒロインが変わった?」「誠と煌の2人の恋物語じゃなかったの?」と唐突に思う人もいるでしょうが、それもまた意図的かつ重要なこと。詳細は伏せておきますが、「煌というこれまでのヒロインが中盤から姿を見せなくなる」ことも、とある切実な心情につながっています。

(C) 映画「君と花火と約束と」製作委員会
(C) 映画「君と花火と約束と」製作委員会

そして、本作で誰もが褒め称えるのは、そのハル役の高橋李依の熱演なのではないでしょうか。

新潟弁が板についた話し方からは確かに昔の人と思わせながらも、天真らんまんな振る舞いがとても愛らしく、一方で言葉の端々から戦争の時代の過酷さもつぶさに感じさせ、終盤で切ない感情をやっと表出させる様などなど……彼女のベストアクトだと思わせるほど。

『魔法つかいプリキュア!』や『【推しの子】』などで高橋李依のファンになったという方には、是が非でも見てほしいです。

(C) 映画「君と花火と約束と」製作委員会
(C) 映画「君と花火と約束と」製作委員会

また、煌役の原菜乃華も『すずめの戸締まり』でその実力は証明済みで、今回は優等生かつちょっと浮世離れした印象が前提にありながらも、高橋李依演じるハルと「似たもの同士」に思えるキャラクターおよび演技になっていることにも聴き入ってほしいです。そして、2人のヒロインがどのように佐藤勝利演じる誠の行動を変えるのかにも、注目してください。

3:「長岡花火の平和への祈りをささげる目的」を知ったからこそ生まれた物語だった

さらに重要なのは、娯楽として広く親しまれている打ち上げ花火に、亡くなった人の魂を慰める「鎮魂」や「供養」の意味が込められていると示したことです。特に、長岡花火大会には「長岡空襲」の犠牲者を悼み、平和への祈りをささげるという明確な目的があるのです。
実はシンエイ動画の代表である梅澤道彦が本作の企画に着手することになったのも、その目的があると知った長岡花火を軸にしたアニメ映画を作りたいという想いにかられたためであり、そこから親交のあった小説家・真戸香に打診して二人三脚で物語を作り上げたのだとか。

つまり、もともとあった人気の小説をアニメ映画化するのではなく、映画化を目的とした小説が書かれたという制作プロセスであり、「長岡花火の平和への祈りをささげる目的」を前提とした物語だったのです。

また、長岡花火大会で2003年から打ち上げられている、3発の真っ白な花火は「白菊」の名で親しまれているそうです。この花火は長岡空襲が始まった時刻である8月1日の22時30分に犠牲者の慰霊の願いを込めて打ち上げられているそうで、元々は花火師・嘉瀬誠次さんがシベリアで亡くなった戦友を弔うために制作されたものであり、そこには「世界中の爆弾をすべて花火に変えたい」との想いが象徴されているのだとか。

(C) 映画「君と花火と約束と」製作委員会
(C) 映画「君と花火と約束と」製作委員会

その想いは、はっきりと『君と花火と約束と』の劇中でも表れており、シンプルでありながら切実な平和へのメッセージとして昇華されていることが、本作の何よりの意義でしょう。

また、本作のタイムスリップに関わる基本的な物語の流れは、SF作品に親しんでいる人であれば、ある程度は予測がつくでしょう。ただ、とあるネタバレ厳禁の事実の提示もあり、それは本当に驚かされると共に、「そうすることができなかった」あるキャラクターの切実な心情を示していました。

(C) 映画「君と花火と約束と」製作委員会
(C) 映画「君と花火と約束と」製作委員会

それは、前述した誠の「好きだった絵も思い通りにはいかなかった」心情ともリンクしており、かつ長岡空襲で亡くなった人への「鎮魂」としても、とても誠実なものと思えたのです。

気になるところもあるけど……

この『君と花火と約束と』には正直に言って気になるところもあります。その1つが、劇場で見るアニメ映画としては、やや簡素に思える作画が多いこと。

シンエイ動画制作の近作では、アニメの表現としても面白い『化け猫あんずちゃん』『トリツカレ男』『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』という名作が続いただけに、どうしても物足りなさを覚えるところがあったのです。

それでも空襲の場面と、それと対比となる花火の画は確かなこだわりを感じさせますし、全体的にも作画の大きな崩れはないので、許容範囲という方もまた多いでしょう。何より、クライマックスの画とシチュエーションは、「劇場で見て本当に良かった」と心から思えるものでした。

(C) 映画「君と花火と約束と」製作委員会
(C) 映画「君と花火と約束と」製作委員会

また、前述したように「初対面の女の子にいきなり運命の人だと言われる」冒頭部は突飛も突飛なので、もう少しだけでもそのことに対する「戸惑い」の感情を描いたほうが飲み込みやすかったのではないか、と思う部分もあります。原作小説では誠が煌にドキドキしている、良い意味で気持ち悪いくらいの心理が克明に記されているので、映画と併せて読んでみてもいいでしょう。

他にもタイムスリップの「トリガー」があいまいすぎないか、キャラクターが「そうする」ことを決意するほどの根拠にやや乏しいのではないか、と思うところもありますが……それでも筆者は、万人が楽しめる青春恋愛映画に仕上げ、かつ長岡花火の目的を汲み取り、今の若い人に向けて戦時中の出来事を示した意義を、心から支持したいですし、掛け値なしに多くの人に観て欲しいと願うことができました。ぜひ、劇場で鑑賞して、これから夏に向けて開催される花火大会を楽しむ時にも、本作のことを思い出してみてほしいです。

この記事の執筆者: ヒナタカ
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。

文:ヒナタカ

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