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パラシュートを切られ1,200m落下…夫の恐ろしい殺人計画から奇跡の生還を果たした女性が絶望の先で見つけた「生き抜く力」

  • 2026.7.21

パラシュートへの細工、そして二度目の暗殺計画――絶望の淵から新たな幸せを掴み取った女性の奇跡のストーリー。

スカイダイビング中にパラシュートが開かず、4,000フィートから落下しながらも奇跡的に生還したヴィクトリア。犯人は愛する夫だった。巧妙な精神的支配(強制的制御)の罠から抜け出し、新たな人生を歩む彼女の現在と、私たちが見習うべき心の強さを紐解く。

4,000フィートからの落下と奇跡の生還

陸軍の理学療法士であるヴィクトリア・シリアスが、細工されたパラシュートで約4,000フィート(約1,219メートル)の上空から落下したとき、誰もが彼女の死を確信したはずだ。しかし、彼女は生きていた。そして悲劇的なことに、それは単なる事故ではなかったのである。この恐ろしい事件は、イギリスのドキュメンタリー番組『The Fall: Skydive Murder Plot』(現在は日本のNetflixでも視聴可能)で描かれ話題となった。ヴィクトリアの生還はまさに「奇跡」だったが、その裏には夫エミール・シリアスによる恐ろしい殺人計画が隠されていたのだ。さらに捜査官たちは、これが初めての犯行ではないという衝撃の証拠を見つけ出すことになる。

スカイダイビング中に起きた悪夢の真実

ヴィクトリアは2015年4月の事件までに数千回ものジャンプを経験しており、非常にスキルの高いスカイダイバーだった。しかし、上空約4,000フィート(約1,219メートル)からジャンプした直後、メインと予備のパラシュートがともに機能しなくなる。

彼女は脊椎と内臓に深刻な損傷を負ったが、一命を取り留めた。海外の捜査官の一人は「彼女が耕されたばかりの柔らかい畑に落ちたことが幸いした。生きていること自体が奇跡だ」と当時を振り返る。落下する猛烈な恐怖の中で、ヴィクトリアが考えていたのはただ一つ、残される子どもたちのことだけだったという。

Matt Cardy

なぜ警察は愛する夫を疑ったのか?

警察の疑いの目は、事件直後から夫のエミールへと向けられた。プロの手によって完璧に梱包されていたパラシュートだったが、ジャンプの前日、エミールが幼い娘をトイレに連れていくために数分間席を外していた時間があったのだ。当日は悪天候のためジャンプが中止となり、ヴィクトリアは用具をロッカーに保管。翌日、異変に気づかぬまま飛び立ち、大惨事に巻き込まれた。

陸軍将校だったエミールは、警察の最初の取り調べに対し、弁護士もつけずに6時間も饒舌に語り続けた。彼はインストラクターの女性と不倫関係にあり、離婚を望んでいたことをあっさりと認めたのである。

巧妙に隠されたモラハラと裏切りのサイン

エミールは取り調べ中、ヴィクトリアへの不満を漏らすだけでなく、女性捜査官に対して媚びを売るような態度さえ見せたという。担当した捜査官は「自らの男性的魅力を誇示して味方につけようとする、不気味な邪悪さを感じた」と証言している。

当初、ヴィクトリアは「夫を心から愛し、命を預けられる存在だ」と信じ込んでいた。しかし、警察がエミールのスマートフォンを押収したことで、仮面夫婦の実態が暴かれる。彼は不倫相手に対し、生まれたばかりの息子の父親は自分ではないという嘘のメッセージを送っていたのだ。ヴィクトリアが重傷を負い、必死に子どもたちの世話をしている間、彼は別の女性との未来を描いていた。

突きつけられた残酷な現実と「ガス漏れ」の記憶

ヴィクトリアの入院中、警察はさらなる絶望的な事実を彼女に告げた。「ご主人は不倫を認めており、宿舎にはあなたや家族の写真は一枚もありません。新生児が自分の子であることも否定しています。彼はあなたを捨てるつもりだったのです」。それを聞いた彼女は、喉の奥から絞り出すような悲鳴をあげたという。

しかし、ショックを受けながらも、彼女は静かにこう付け加えた。「それなら……自宅のガス漏れのことも話しておくべきね」。これが、警察が後に解き明かすことになる「第二の殺人計画」の始まりだった。

自宅に仕掛けられたもう一つの殺人計画

パラシュート事件のわずか1週間前、ヴィクトリアは自宅でガスの臭いがすることに気づき、エミールにメールを送っていた。通常ならすぐに避難を促すべきところだが、彼の返信は「コンロを確認したか?」というものだった。もし火をつければ、彼女と2人の幼い子どもたちがいる家が大爆発を起こしていた危険性がある。

捜査が進むにつれ、エミールが長年にわたりヴィクトリアから数万ポンド(数百万〜一千万円相当)もの現金を巻き上げていたこと、さらには彼女が集中治療室で意識不明の重体にある間にも、彼女の銀行カードを使って引き出しを行っていたことが判明した。

浮き彫りになった心理的支配(強制的制御)の恐怖

エミールの動機を探る中で、警察は彼が膨大な借金を抱え、複数の女性と関係を持ち、ヴィクトリアの生命保険金をも狙っていた事実を突き止める。海外の精神医学専門家は、エミールに自己愛性およびサイコパス的なパーソナリティ障害の傾向があると分析した。

しかし、殺人未遂罪で起訴された最初の裁判では、陪審員たちの意見が一致せず評決不能となった。警察は、ヴィクトリアが法廷で夫をかばうのではないかと恐れていたが、まさにその通りになってしまったのだ。彼女は「自分が誤って予備のパラシュートを切り離してしまったのかもしれない」と証言したのである。

Ken McKay/ITV/Shutterstock / Getty Images

なぜ被害者は加害者をかばってしまうのか?

後になってヴィクトリアは「嘘をついたのではなく、多くの秘密を隠していただけ」と振り返っている。これこそが、近年海外の法曹界や心理学で注目されている「強制的制御(coercive control)」、つまり長期的な心理的支配とモラハラによる洗脳の結果だった。

再裁判では、この心理的支配が争点となった。エミールはヴィクトリアが集中治療室にいる間も、ほぼ毎日性風俗サービスを利用し、他の女性との間に子どもをもうけていた。専門家たちが法廷で「強制的制御」の仕組みを詳しく解説したことで、陪審員たちはなぜ彼女が自分を殺そうとした男を擁護してしまうのかを正しく理解できたはずだ。

絶望を乗り越え、新たな幸せを掴んだ彼女の現在

2018年にエミールに有罪判決が下された後、ヴィクトリアは表舞台から退き、静かに人生を再建してきた。そして2024年10月、事件から約10年の歳月を経て、彼女は同じスカイダイビングクラブで知り合った元海兵隊員のサイモン・グッドマンと再婚した。

友人たちは「彼女は誰よりも幸せになる権利がある」と祝福している。2024年のドキュメンタリー番組に出演した際、ヴィクトリアは「夫の裏切りという真実を受け入れるまでに何年もかかった」と語った。二度も殺されかけたという残酷な現実と向き合うことは容易ではなかったが、彼女は見事に前を向いて歩み始めている。

加害者の末路と、私たちが未来へ進むためのヒント

再審の結果、エミール・シリアスには終身刑(最低18年間の服役)が言い渡された。ヴィクトリアは後に刑務所の彼を訪ねたが、彼は未だに犯行を否定し、「いつか一緒にビーチで引退生活を送ろう」と口にしたという。歪んだ支配欲は決して消えることはないのだ。

しかし現在のヴィクトリアは、自身の経験を通じて「強制的制御」の危険性を世に発信し、人々をエンパワーメントすることに注力している。どんなに深い絶望の淵にあっても、周囲のサポートがあれば必ず人生を取り戻せる。私たちも健全な人間関係について一度見つめ直してみよう。

※この記事はイギリス版コスモポリタンの翻訳をもとに、ウィメンズヘルス日本版が編集して掲載しています。

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