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「お菓子は女だけで分けましょう」法事の供え物を振り分けた義母。だが、夫の一言で状況が一変

  • 2026.7.21

線香の匂いが残る座敷で

義父の法要の日でした。

読経が終わっても、座敷にはまだ線香の匂いが濃く残っていました。仕出しの膳が下げられ、親戚たちがようやく肩の力を抜いたころのことです。

祭壇の前には、お供えのお菓子や果物が山のように積まれていました。

それを親戚の家ごとに分けて持ち帰る作業が、まだ残っています。

義母が、ぱんと手を打ちました。

「お菓子は女だけで分けましょう」

ざわめきが、すっと引きました。

義母はにこやかに続けます。

「男の人はお茶でも飲んで、くつろいでてくださいね」

義姉が黙って立ち上がり、私も膝を立てかけました。嫁いで四十年、法事のたびに同じ光景を見てきたからです。

男たちは座布団の上でビールの栓を抜き、女たちは廊下に出て包み紙と格闘する。

台所からは食器を洗う水音が絶えず聞こえて、誰かの笑い声だけが座敷から流れてくるのです。

膝は痛みます。

正座のまま箱を数えていると、足の指の感覚がなくなってくる。

それでも、おかしいと口に出す人はいませんでした。

夫が湯呑みを置いて言った

ところが、その日は違いました。

夫が湯呑みを置いて、口を開いたのです。

「みんなでやれば、いいやん。早く済むよ」

義母の笑顔が、途中で止まりました。

「あら、でも…男の人がそんなこと」

「そんなことって、袋に入れるだけやろ」

夫はもう立ち上がっていました。祭壇の前にどかりと座り、菓子折りの箱を開け始めます。

隣にいた甥が「僕もやります」と腰を上げました。義兄も「そりゃそうや、人数おったほうが早い」と続きます。

気づけば、座敷にいた男たちがぞろぞろと集まってきました。缶ビールは、栓を抜かれないまま盆の上に残っています。

「これ、どの家に何個ずつ?」

「そこの紙に書いてありますよ」

義母は畳に座ったまま、ぽかんとした顔で私たちを見ていました。何か言おうとして、口が半分開いたまま止まります。

やがて小さく苦笑いをして、「……まあ、たまにはねえ」とだけ言い、目を逸らしたのです。

いつもなら一時間はかかる作業が、二十分もかかりませんでした。廊下で正座をする人も、台所にこもる人もいません。分け終えたお菓子を囲んで、みんなでお茶を飲む時間まで残ったのです。

帰り際、義母が玄関でぽつりと言いました。

「あんたのご主人は、変わってるねえ」

「そうですね。おかげで助かりました」

はっきりそう返すと、義母はもう何も言いませんでした。次の法事から、義母はあの一声を出しません。誰よりも先に、自分から箱を開けて座っています。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、60代以上・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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