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「有給は君が使えばいいだろう」子供の発熱で私だけに面倒を見させようとする夫。私が飲み込むしかなかった言葉とは

  • 2026.7.19

38度2分と、二人分の出勤時間

朝の6時40分、体温計が鳴りました。

38度2分。

「のど、いたいよ」

娘の額に手を当てると、じんわりと熱いのが伝わります。トースターの音、洗濯機の終了音、リビングの時計の針。急かす音ばかりが耳につく朝でした。

私はその日、午前に打ち合わせがありました。夫は夕方に会議です。どちらも、動かせないほどではありません。

有給を出すか、病児保育に電話をして預けてから出るか。娘の赤い顔と、社内のカレンダーが、頭の中で交互に浮かびました。

髪を整えていた夫が、鏡越しに言いました。

「有給は君が使えばいいだろう」

穏やかな声です。押し付ける響きは、少しもありませんでした。

「どっちを選んでも、間違ってないと思うよ」

フォローのつもりだったのでしょう。実際、夫は一度も「休め」とは言っていないのです。

「……なんで、私が使う前提なの」

「え、どういうこと」

「あなたが使ってもいいんだよ、有給」

夫は心底驚いた顔をして、こう返しました。

「そりゃそうだけど、君が決めていいって話だよ」

選ばされる側は、最初から決まっていた

悪気がないのは分かっています。だから、なお厄介でした。

「決めていい」と言えるのは、選ばなくていい側に立っている人だけです。天秤を持たされているのは、いつも私のほうでした。

喉まで来ていた言葉があります。どうして、あなたはその天秤の外に立っていられるの。どうしてこの家では、母親のほうが先に候補になるの。

口にしたら、出勤までの十分では終わりません。娘は熱でぐずっていて、私は結局、飲み込みました。

「……ううん、なんでもない」

「熱、下がるといいな。じゃ、行ってくる」

夫は靴を履き、いつもの声で出ていきました。玄関のドアが閉まる音だけが、やけにはっきり聞こえました。

私は会社に電話をして、有給を申請しました。

「子どもが熱を出しまして、今日はお休みします」

上司は「お大事に」と言ってくれました。誰にも責められていないのに、謝っているのは私だけでした。

冷えたタオルを額に当て直すと、娘が薄目を開けました。

「ママ、おしごと、やすみ?」

「うん、今日はずっと一緒だよ」

そう言えるのは、本当ならうれしいことのはずでした。それでも、飲み込んだ言葉は残ったままです。

あれから、娘が熱を出すたびに同じ問いが浮かびます。私は休みたいから休んでいるのか、私しか休まないから休んでいるのか。

夫は次の朝も、優しい顔で同じことを言うのでしょう。君が決めていいよ、と。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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