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便利さの先にある静かな恐怖。映画『チルド』が映し出す、現代人

  • 2026.7.19

コンビニという名の小さな社会

©︎『チルド』製作委員会(NOTHING NEW・東北新社)

映画『チルド』は、ホラーというジャンルをまといながら、私たちの日常に静かに潜む違和感を映し出した作品。舞台は24時間営業のコンビニ。コンビニ店員の堺(役/染谷将太さん)は、同じ商品、同じ挨拶、同じ作業を繰り返す毎日を無感動に過ごしている。そこへ夢を持った新人アルバイト・小河(役/唐田えりかさん)が現れたことで、均衡していた世界が少しずつ揺らぎ始める。

本作には、いわゆるホラー映画に登場するような怪物も心霊現象もない。それでも不気味なのは、描かれている世界があまりにも私たちの日常に近いから。監督の岩崎裕介さんは、「効率性や利便性に支配された現代社会」を新たな恐怖として描こうとしたという。コンビニという誰もが利用する空間を通して映し出されるのは、秩序やルールに従ううちに主体性を失い、自ら考えることを手放してしまった人々の姿。

©︎『チルド』製作委員会(NOTHING NEW・東北新社)

主人公の堺は、その象徴ともいえる存在である。生の実感を失い、ただシステムの一部として機能し続ける彼の姿は決して特別ではない。忙しさに流され、気が付けば同じ日々を繰り返している様子に思い当たるところがあるのではないだろうか。その虚ろな目やわずかな表情の変化から、言葉にならない閉塞感が伝わってくる。

ベルリン国際映画祭で高い評価を受けた理由も、そこにあるのだろう。映画『チルド』が描くのは、突然訪れる破滅ではなく、“終わらないこと”の恐怖。この物語はフィクションでありながら妙にリアルで、どこか他人事とは思えない。

©︎『チルド』製作委員会(NOTHING NEW・東北新社)

そして何より忘れられないのが、システムや秩序に飲み込まれた人々の表情である。感情を失ったわけではないものの、考えることをやめ、そこにいることが当たり前になってしまった人たちの顔。その姿はスクリーンの向こう側の話ではなく、もしかすると今を生きる私たち自身の姿なのかもしれない。

【7月17日公開】映画『チルド』

©︎『チルド』製作委員会(NOTHING NEW・東北新社)

出演/染谷将太

唐田えりか 西村まさ彦

くるま 長島竜也

監督・脚本/岩崎裕介

配給/NOTHING NEW

※テアトル新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷、テアトル梅田ほか 全国で公開中

nothingnew.film/chilled_anymart

TEXT=南雲凛子

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