1. トップ
  2. カルチャー・教養
  3. ゲームに「AIの対戦相手」を入れると、人は”ゲーム内で社交的になる”可能性

ゲームに「AIの対戦相手」を入れると、人は”ゲーム内で社交的になる”可能性

  • 2026.7.17
AI対戦相手で、人間同士のチームプレイが増加する / Credit:Canva

AIは、人間の交流を奪う存在として語られることがあります。

しかし使い方によっては、AIが人と人をつなぐ「練習相手」になるのかもしれません。

米ジョージ・メイソン大学(GMU)などの研究チームは、オンラインゲームに弱めのAI対戦相手を加えると、プレイヤーの参加と友人とのチームプレイが増える可能性を報告しました。

研究成果は2026年6月30日付で学術誌『Information Systems Research』にオンライン掲載されています。

目次

  • 熟練者だらけのゲームに、初心者が勝てるAIを加える
  • AIとの成功体験が、友人とのプレイを後押しした可能性

熟練者だらけのゲームに、初心者が勝てるAIを加える

研究対象となったのは、多数のプレイヤーが同じマップで生き残りを競うオンラインゲーム『PUBG: BATTLEGROUNDS』です。

長く運営されている対戦ゲームでは、時間がたつほど熟練者が増え、後から参加した初心者が勝ちにくくなります。

何度挑戦してもすぐに倒されてしまうなら、操作を覚える前にゲームをやめたり、友人の足を引っ張ることを恐れてチームプレイを避けたりする可能性があります。

そこで『PUBG』は2020年から、一部の試合にAI操作の対戦相手を導入しました。

このAIは平均的な人間より少し弱く設計される一方、人間に近い動きをします。

そのためプレイヤーたちは試合にAIが含まれていることを知っていても、目の前の相手が人間かAIかをその場で見分けることは困難でした。

研究チームは、この運営施策を利用して、AIとの対戦経験がゲームへの参加や友人との交流にどのような変化を与えるかを調べました。

分析対象は3798人で、2019年12月2日から2020年8月3日までの36週間にわたる行動を追跡しました。

合計すると、1人の1週間分を一つの単位とした13万6728件のプレイヤー週データになります。

研究チームは、AIを含む試合を初めて経験する前後で、参加した試合数、プレイ時間、友人と参加した試合数、友人と遊んだ時間がどう変化したかを分析しました。

さらに、もともとのプレイ傾向が異なる人同士を単純に比べないよう、プレイヤーごとの違いや、その週に全員へ影響した出来事を統計的に調整しています。

その結果、AIとの対戦を経験した後には、ゲームへの参加量と友人とのチームプレイの両方が増えていました。

特に大きな変化が見られたのは初心者でした。

では、なぜAIとの対戦が、人間の友人と遊ぶ行動につながったのでしょうか。

より詳しい結果を次項で見ていきます。

AIとの成功体験が、友人とのプレイを後押しした可能性

研究者たちの発表によると、AI対戦相手の導入後、プレイヤーがゲームに費やす時間は約50%増え、友人とのチームプレイも約28%増加しました。

つまり、プレイヤーは一人でAIだけを相手にするようになったのではありません。

AIとの試合を経験した後、ゲームを以前より長く続け、友人とも多く遊ぶようになったのです。

研究チームは、この変化に「自己効力感」と「チームへの責任感」が関係していると考えています。

自己効力感とは、「自分ならこの課題をうまくこなせる」という感覚です。

初心者が熟練者に負け続ければ、「自分にはこのゲームは無理だ」と感じやすくなります。

一方、比較的倒しやすいAIを相手に成功すれば、その結果を自分の技能やチームへの貢献を示すものとして受け取る可能性があります。

特に今回のAIは人間と見分けにくかったため、成功を単に「弱いボットを倒しただけ」と片づけにくかったと考えられます。

ちなみに、AIが敵を倒した平均距離は、ゲーム内の仮想距離で2.686メートルでした。

これに対し、調査対象者の92.5%に当たる3514人は、AIより遠い距離から敵を倒しており、この指標ではAIの技能が多くの人間より低かったことが分かります。

そして研究では、平均撃破距離を自己効力感、味方の撃破を助けた平均アシスト数をチームへの責任感の代理指標として、媒介分析も行われました。

その結果、これらの行動指標の変化が、ゲームへの参加と友人とのチームプレイの増加を後押しした可能性が示されました。

また、効果は熟練者より初心者で強く、AI導入前には友人よりも見知らぬ相手と組むことを好んでいた人ほど、導入後に友人とチームを組むようになりました。

今回確認されたのは、あくまで一つのゲーム内で友人と遊ぶ行動が増えたことです。

性格そのものが社交的になったことや、現実世界の人間関係が広がったことまでは示していません。

それでも、初心者が無理なく成功体験を積めるよう設計されたAIは、人間を置き換えるだけの存在ではなく、人間同士の交流へ踏み出すための足場になり得ます。

少なくとも今回のように設計されたAIは、交流を奪う「侵入者」ではなく、人と人をつなぐ「触媒」になれるのかもしれません。

参考文献

Video game AI opponents boost play time, gaming with friends
https://news.ufl.edu/2026/07/ai-game-opponents/

元論文

Interlopers or Catalysts? Dissecting the Impact of Incorporating AI Players on Multiplayer Online Games
https://doi.org/10.1287/isre.2024.0996

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ