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哲学者の思考法を身につけるための「3つのメソッド」

  • 2026.7.14
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

哲学者は、ものごとを奥深くまで考える達人です。

私たちが当たり前だと思っていることにも、「本当にそうだろうか」と立ち止まり、別の見方がないかを常に探します。

では、私たちが「哲学者のように考える」ためには、普段の生活で何を意識すればよいのでしょうか。

ここでは、そのための3つのメソッドを紹介します。

目次

  • その1「ものの見方の柔軟性を保つ」
  • その2「小難しい考えは、日常の具体例に置き換えてみる」
  • その3「反対意見は、自分が成長するチャンス」

その1「ものの見方の柔軟性を保つ」

哲学者の思考法を身につけるうえで、まず最初に重要となるのが「自分の見方だけが絶対ではない」と考えることです。

英国の哲学者バートランド・ラッセルは、1951年に発表した文章の中で、守るべき「十戒」の最初に「何事についても絶対に確実だと思ってはならない」という趣旨の言葉を掲げました。

これは、何も信じてはいけないという意味ではありません。

現在の自分が正しいと思っていることも、新しい情報や別の視点によって修正される可能性があると認める姿勢です。

たとえば、目の前に一本の木があるとします。

ある人にとって、木は「日陰で休むための場所」かもしれません。

子どもにとっては「登って遊ぶもの」であり、芸術家にとっては「美しさを楽しむもの」、寒い地域で暮らす人にとっては「薪の供給源」になるかもしれません。

木そのものは同じでも、どの目的や立場から見るかによって、見えてくる意味は変化します。

自分の視点を柔軟に変えてみる/ Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

私たちは一度ある見方を採用すると、それが対象そのものの唯一の姿であるかのように感じてしまいがちです。

しかし哲学的に考えるには、現在の見方を少し緩め、別の捉え方に切り替える必要があります。

さらに、視点の距離を変えることも大切です。

自分が抱えている悩みを、私生活から離れて、宇宙や人類史という大きな視点から眺めれば、問題が少し小さく感じられるかもしれません。

実践方法:視点の距離と立場を変えてみる

なにかに悩んだときは、まず「自分とは異なる立場の人には、これはどう見えるだろう」と考えてみます。

上司と部下、親と子ども、消費者と販売者、あるいはアリやクジラといった他の生き物など、立場を入れ替えて考えるだけでも、問題の別の側面が見えてきます。

また、「この問題を10年後の自分が振り返ったら、どう感じるだろう」と時間軸を広げる方法もあります。

それから、自分が生きている間には結果が出ない問題について考えることも有効です。

奴隷制度廃止運動家や社会改革者たちは、自分では成長した姿を見ることのできない木を植えるように、未来の変化のために行動しました。

目の前の利益だけでなく、自分の人生を超えた時間軸で考えることも、ものの見方を柔軟にする訓練になるのです。

その2「小難しい考えは、日常の具体例に置き換えてみる」

哲学というと、日常生活とはかけ離れた抽象的で、小難しい理論を延々と考える学問だと思われることがあります。

しかし、優れた哲学は現実から完全に離れるわけではありません。

むしろ、抽象的な理論が日常生活の中で本当に機能するかどうかを確かめることが、その理論の価値を判断する重要な手がかりになります。

たとえば、ある道徳理論が、私たちが日常的にしている多くの道徳的判断を説明できないのであれば、その理論には問題があるかもしれません。

抽象的な考えを現実の具体例に当てはめることで、理論の弱点や見落としていた条件が見えてくるのです。

また、人間の心は、数字や論理だけではものごとを十分に理解できないことがあります。

戦争によって1000人が亡くなったと聞いた場合と、2000人が亡くなったと聞いた場合では、数字上は大きな違いがあります。

しかし、私たちの心がその差を実感として正確に受け止められるとは限りません。

一方で、被害に遭った一人の人物がどのように暮らし、何を失い、どのような気持ちを抱いたのかという物語を知ると、出来事との距離は急に縮まります。

人間は、統計よりも具体的な物語を通じて、ものごとの意味を深く理解することがあるのです。

小難しい考えは「日常の具体例」に置き換える/ Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

哲学者のように考えるとは、難しい理論を難しいまま抱えることではありません。

その考えが、実際の生活の中でどのような場面に現れるのかを探すことです。

理論を現実に持ち込んだときにうまく機能しないのであれば、現実のほうを無理に理論へ合わせるのではなく、理論そのものを見直す必要があります。

実践方法:「たとえば?」と自分に問いかける

抽象的な言葉を使ったときは、続けて「たとえば、それはどんな場面だろう?」と問いかけてみます。

「自由が大切だ」と考えるなら、学校、職場、家庭の中で、自由とは具体的に何を意味するのかを考えます。

「正義を守るべきだ」と考えたなら、友人同士のトラブルや職場での評価、社会のルールなど、身近な事例に置き換えてみます。

また、統計や大きな数字について考えるときは、その数字の中にいる一人の人物の生活を想像してみます。

抽象的な概念と具体的な物語を往復することで、知識は単なる言葉ではなく、現実を理解するための道具になっていくのです。

その3「反対意見は、自分が成長するチャンス」

人は自分の意見を否定されると、自分自身まで攻撃されたように感じることがあります。

そのため、反対意見を避けたり、自分と同じ考えを持つ人だけを集めたりしてしまいます。

しかし哲学者は、意見の不一致を「個人的な脅威」ではなく、「自分の考えを試すチャンス」として捉える傾向があります。

もちろん、すべての哲学者が穏やかに議論するわけではありません。

それでも哲学の基本的な営みには、自分とは異なる主張と向き合い、その主張によって自分の信念が崩れるかどうかを確かめる作業があります。

先のラッセルは自身の「十戒」の中で、「受動的な同意よりも、知的な異論に喜びを見いだすべきだ」と述べました。

相手がただ賛成してくれるだけでは、自分の考えの弱点は見つかりません。

反対意見によって自分の論理を説明し直し、前提を確認し、場合によっては考えを修正することで、信念はより深いものになります。

反対意見は自分の考えを鍛える絶好のチャンス/ Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

反対意見を聞き入れたり、読み込むことは、相手に屈服することではありません。

むしろ、自分の考えがどの程度の反論に耐えられるのかを確かめる「耐久試験」になります。

反対意見をすべて裏切りや攻撃と見なすようになると、思考は硬直します。

過激な思想が危険なのは、特定の意見を持っているからだけではなく、反論そのものを拒み、自分の考えを修正できなくなるからです。

哲学者のように考えるには、自分が間違っている可能性を残しておかなければなりません。

実践方法:最も強い反対意見を探してみる

自分の意見を確かめたいときは、賛成意見だけでなく、最も説得力のある反対意見を探します。

このとき、極端で雑な反論を選んで簡単に否定するのではなく、自分が思わず考え込んでしまうような強い反論を選ぶことが重要です。

そして、反対意見を読んだら、すぐに言い返そうとせず、まず「この人は何を守ろうとしているのか」「どの前提が自分と違うのか」を整理します。

議論では、相手の人格と意見を切り離すことも大切です。

尊敬している人物にも受け入れがたい面はあり、苦手な人物にも検討する価値のある意見があるかもしれません。

人を「すべて正しい人」と「すべて間違っている人」に分けず、考えを一つずつ検討することで、単純な好き嫌いを超えた判断ができます。

反論を受けたときに、「否定された」と考えるのではなく、「自分では見つけられなかった弱点を教えてもらった」と捉えてみます。

自分の意見を変えることは敗北ではありません。

よりよい考えにたどり着くために、以前の自分を更新できたということなのです。

まとめ:哲学者のように考えるとは「考えを固めない」こと

哲学者の思考法と聞くと、難解な本を読み、専門用語を暗記することだと思うかもしれません。

しかし、今回紹介した3つのメソッドは、特別な知識がなくても、すぐに日常生活で実践できます。

・一つの見方に固執せず、立場や距離を変えて眺めてみる
・抽象的な考えを、身近な出来事や一人ひとりの物語に置き換えてみる
・反対意見を敵の攻撃ではなく、自分の信念を鍛える機会として受け入れる

哲学者らしい思考とは、絶対に正しい答えを持つことではありません。

「自分の考えは正しいかもしれない。しかし、まだ見えていないものがあるかもしれない」と言える柔軟性を保つことです。

その小さな保留こそが、世界をより広く、深く考えるための入り口になるのです。

参考文献

3 ways to think and talk like a philosopher
https://bigthink.com/mini-philosophy/3-ways-to-think-and-talk-like-a-philosopher/

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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