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小難しくなかった!若き日のゴダールを描く『ヌーヴェルヴァーグ』&ゴダールの名作2本を劇場で楽しむ【50代の映画好き必見】

  • 2026.7.13

『ヌーヴェルヴァーグ』
© 2025 ARP - Detour Development LLC ©JeanLouisFernandez


1950年代後半にフランス映画界で起きた映画革命「ヌーヴェルヴァーグ(新しい波)」と、その代表的作家であるジャン=リュック・ゴダール。50代の映画好きなら、若い頃に一度は興味を持ったことがあるのではないでしょうか。ただ、当時すでにゴダールは大御所で、「ヌーヴェルヴァーグとは何だったのか」が論じられていたこともあり、「小難しそう」「よくわからない」というイメージを抱いている人も少なくありません。

でも、そんなイメージを一新する新作映画『ヌーヴェルヴァーグ』が現在、公開中です。監督は、『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離 <ディスタンス>』などの『ビフォア』シリーズでおなじみのリチャード・リンクレイター。

アメリカ人のリンクレイター監督は、フランス・パリを舞台に、ゴダール初の長編映画『勝手にしやがれ』ができるまでの舞台裏を描写。ここにいるのは神格化されたゴダールではなく、同世代の仲間であるフランソワ・トリュフォーに映画監督として先を越されて焦っている若者ゴダールで、彼を中心に映画作りに熱中する若者たちの姿がいきいきと描かれています。これを観ると、ゴダールをはじめヌーヴェルヴァーグの作品に一気に親近感がわいてくるでしょう。

そして、“舞台裏”を知った後は、本物の『勝手にしやがれ』を確認したくなるものですが、ご安心を! 7月24日から『勝手にしやがれ』、さらに7月31日からゴダールの『気狂いピエロ』が連続で劇場公開されます。かつて“小難しい”と思っていた作品も、『ヌーヴェルヴァーグ』を観た後なら、また違った感想を持つかもしれません。この夏は、“ゴダール漬け”を楽しんでみてはいかがでしょうか。

若きゴダールの情熱、『勝手にしやがれ』の舞台裏を描いた青春映画 『ヌーヴェルヴァーグ』

『ヌーヴェルヴァーグ』© 2025 ARP - Detour Development LLC ©JeanLouisFernandez

「これは映画が作れると信じさせてくれた人々と、“映画を作るべきだ”と確信させてくれた人々へのラブレターだ」とリチャード・リンクレイター監督が語る本作は、ゴダールが28歳の時に撮った『勝手にしやがれ』の舞台裏を描写した斬新な作品。ジーン・セバーグ役のゾーイ・ドゥイッチ以外は無名の俳優を起用しており、当時の状況や雰囲気を忠実に再現しています。

『ヌーヴェルヴァーグ』© 2025 ARP - Detour Development LLC ©JeanLouisFernandez

舞台は、トリュフォーの長編デビュー作『大人は判ってくれない』がカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した1959年。ゴダールは、トリュフォーらと共にカイエ・デュ・シネマ誌で映画評論を執筆していましたが、自分も長編映画を撮りたいと熱望し、フランスの俳優ジャン=ポール・ベルモンドとアメリカの若手女優ジーン・セバーグを主演に起用した映画の撮影にこぎつけます。

しかし、ゴダールは型にはまった演技を嫌い、リハーサルもしない、脚本もない、挙句には気分がのらない時は撮影をしない、というありさま。そんな監督の型破りなやり方に、プロデューサーやスタッフ、セバーグは困惑を隠せません。それでも、全員に共通しているのは、映画作りの夢と情熱。ゴダールに振り回されながらも、ついにラストシーンの撮影へ。

『ヌーヴェルヴァーグ』© 2025 ARP - Detour Development LLC ©JeanLouisFernandez

新しい何かが生まれる予感にワクワクしている現場の雰囲気がしっかり伝わってくる、青春映画のような作品。

リンクレイター監督といえば、『ビフォア』シリーズ3部作では主役の男女が街を歩きながら会話する約90分を実際に約90分の映画にしたり、男女の9年後を9年後に公開したり、さらには『6才のボクが、大人になるまで。』では少年の12年間(6歳~18歳)を実際に12年間かけて撮影したりと、時間へのこだわりと実験的な作風で知られています。本作でも、『勝手にしやがれ』の撮影期間20日を順を追って描写したり、まるでリンクレイター監督自身が1959年の撮影現場に立ち会ってゴダールたちのドキュメンタリーを撮っていたかのような没入感で、時間の魔法を見せてくれます。

『ヌーヴェルヴァーグ』© 2025 ARP - Detour Development LLC ©JeanLouisFernandez

“ヌーヴェルヴァーグとは”を語るのではなく、若きゴダールが長編デビュー作を撮るドタバタ青春劇といった作風。ヌーヴェルヴァーグに対する敬意や解釈を織り込みながらも、誰もが楽しめるライトな作品に仕上げているところにリンクレイター監督らしさが光ります。

また、本作はリンクレイター監督にとって初のフランス語映画となり、衣裳はフランスを代表する衣裳デザイナーのパスカリーヌ・シャヴァンヌ(フランソワ・オゾン監督の作品などを担当)が担当。当時を再現したカジュアルでもエレガントな装いにも注目。

『ヌーヴェルヴァーグ』

2025年製作

2026年7月10日(金)より全国公開中

監督:リチャード・リンクレイター
プロデューサー:ミシェル & ローラン・ペタン
脚本:ホリー・ジェント & ヴィンス・パルモ
出演:ギヨーム・マルベック、ゾーイ・ドゥイッチ、オーブリー・デュランほか
協賛:Chanel

配給:AMGエンタテインメント

© 2025 ARP - Detour Development LLC

20代のゴダール、ベルモンド、セバーグが輝くヌーヴェルヴァーグの金字塔 『勝手にしやがれ』

『勝手にしやがれ』
© 1960 STUDIOCANAL - Société Nouvelle de Cinématographie – ALL RIGHTS RESERVED.

2022年9月に逝去したゴダール監督が28歳の時に撮影。当時26歳のジャン=ポール・ベルモンドと20歳のジーン・セバーグを起用し、ヌーヴェルヴァーグを象徴する作品といわれる本作を作り上げました。

『勝手にしやがれ』© 1960 STUDIOCANAL - Société Nouvelle de Cinématographie – ALL RIGHTS RESERVED.

自動車泥棒の常習犯ミシェル(ジャン=ポール・ベルモンド)は、マルセイユで盗んだ車を走らせパリに向かう途中に拳銃で警官を射殺してしまいます。パリに着いた後、刑事の尾行を撒いたミシェルは、シャンゼリゼ通りでヘラルド・トリビューン紙を売るパトリシア(ジーン・セバーグ)に会いに行きます。彼女は記者志望のアメリカ人留学生で、二人は南仏の海岸で出会いベッドを共にした仲でした。

『勝手にしやがれ』© 1960 STUDIOCANAL - Société Nouvelle de Cinématographie – ALL RIGHTS RESERVED.

しかし、パトリシアはミシェルの誘いを断り、新聞社の男に会いに行ってしまいます。一方で、新聞に逃走犯として顔が掲載されたミシェルは、金を調達してパトリシアと二人でイタリアへ逃れようとしますが……。

『勝手にしやがれ』© 1960 STUDIOCANAL - Société Nouvelle de Cinématographie – ALL RIGHTS RESERVED.

フランス人の悪い男と夢を追いかけるアメリカ人の若い女の子の恋の行方を描いたクライム・ロマンス。本作が斬新なのは、ブツ切りの映像をつなげたようなジャンプカットにより、スピード感と強いインパクトがあること。

なぜこうなったのかはリンクレイター監督の『ヌーヴェルヴァーグ』でも描かれていますが、当初ゴダールは2時間半ほどの映像にまとめたものの、契約で90分に収めなければならず、大幅なカットが必要になったとのこと。仕方なく生まれた手法とはいえ、後の映画に大きな影響を及ぼしました。

そして、有名なラストシーンは、ぜひ本作と『ヌーヴェルヴァーグ』を見比べてみてください。

『勝手にしやがれ』

1960年(2020年4Kレストア版)

2026年7月24日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネスイッチ銀座、UPLINK吉祥寺 ほかにて上映予定

監督・脚本・台詞:ジャン=リュック・ゴダール
製作:ジョルジュ・ドゥ・ボールガール
原案:フランソワ・トリュフォー
監修:クロード・シャブロル
撮影:ラウール・クタール
音楽:マルシャル・ソラル

配給:オンリー・ハーツ

© 1960 STUDIOCANAL - Société Nouvelle de Cinématographie – ALL RIGHTS RESERVED.

ゴダールが元妻アンナ・カリーナを迎えて撮った強烈な愛の逃避行 『気狂いピエロ』

『気狂いピエロ』
© 1965 STUDIOCANAL / SOCIETE NOUVELLE DE CINEMATOGRAPHIE / DINO DE LAURENTIS CINEMATOGRAPHICA, S.P.A. (ROME). ALL RIGHTS

1965年の作品で、主演は常連のジャン=ポール・ベルモンド、ヒロインはアンナ・カリーナ。ゴダールとカリーナはこのときすでに元夫婦でした。ゴダールが長編2作目の『小さな兵隊』(60年)を撮った際にヒロインに抜擢したのがカリーナで、二人は結婚し、『女は女である』(61年)『女と男のいる舗道』(62年)『はなればなれに』(64年)と立て続けにコンビを組みました。しかし、64年に離婚。その翌年に撮影したのが、本作『気狂いピエロ』です。

『気狂いピエロ』© 1965 STUDIOCANAL / SOCIETE NOUVELLE DE CINEMATOGRAPHIE / DINO DE LAURENTIS CINEMATOGRAPHICA, S.P.A. (ROME). ALL RIGHTS

フェルディナン(ジャン=ポール・ベルモンド)は、金持ちの妻との生活に飽き飽きしており、逃げ出したい欲求にかられていました。そんなある夜、夫妻がパーティに出かけるためベビーシッターを頼んだところ、フェルディナンのかつての恋人マリアンヌ(アンナ・カリーナ)が現れます。

パーティを抜け出して一人で帰宅したフェルディナンは、マリアンヌを車で送り、一夜を共に。翌朝目覚めると、なんと彼女の部屋に男の死体が転がっていました。驚く彼とは裏腹に、朝食を作っているマリアンヌ。フェルディナンはマリアンヌと共に着の身着のままでパリを後にし、彼女の兄がいる南仏へ向かいます。

『気狂いピエロ』© 1965 STUDIOCANAL / SOCIETE NOUVELLE DE CINEMATOGRAPHIE / DINO DE LAURENTIS CINEMATOGRAPHICA, S.P.A. (ROME). ALL RIGHTS

フェルディナンが無謀な逃避行を楽しんでいる一方で、マリアンヌは欲求不満を募らせて逃亡してしまいます。しかし、再び事件が発生。ギャングに捕まったフェルディナンは、消えたマリアンヌの居場所を教えろと拷問されますが、彼は何も知らず……。

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本作は小説が原作ですが、『勝手にしやがれ』などと同様に脚本といえるものはなく、ほとんどのシーンは即興で撮影されたといいます。死体があっても平然としている壊れた女と、それに同調していく男もまただいぶ壊れていて、そんな二人がどこかかみ合わない会話をしながら破滅へと向かう物語。

ゴダールの初期における集大成ともいえる作品で、カリーナの小悪魔的な魅力と、赤や青の鮮烈な色彩が強烈なインパクトを残します。

『気狂いピエロ』

1965年(2015年2Kレストア版)

2026年7月31日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネスイッチ銀座、UPLINK吉祥寺 ほかにて上映予定

監督・脚本・台詞:ジャン=リュック・ゴダール
製作:ジョルジュ・ドゥ・ボールガール、ディノ・デ・ラウレンティス
原作:ライオネル・ホワイト
撮影:ラウール・クタール
美術:ピエール・ギュフロワ、音楽:アントワーヌ・デュアメル

配給:オンリー・ハーツ

© 1965 STUDIOCANAL / SOCIETE NOUVELLE DE CINEMATOGRAPHIE / DINO DE LAURENTIS CINEMATOGRAPHICA, S.P.A. (ROME). ALL RIGHTS

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※この記事の内容は、2026年7月時点の情報です

構成・文

ライター 中山恵子

中山恵子

ライター。2000年頃から映画雑誌やウェブサイトを中心にコラムやインタビュー記事を執筆。好きな作品は、ラブコメ、ラブストーリー系が多い。趣味は、お菓子作り、海水浴。

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