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「生姜焼き、二つで」妻の注文を飛ばした夫。だが、向かいの義父が店員を呼び戻した一言

  • 2026.7.12
「生姜焼き、二つで」妻の注文を飛ばした夫。だが、向かいの義父が店員を呼び戻した一言

義父の招待で入った定食屋

その日は義父が、私たち夫婦を行きつけの定食屋に誘ってくれた。

「たまには外で飯でも食おう。ここの生姜焼きはうまいぞ」

席に着くと、私は義父におしぼりを手渡した。

夫もメニューを広げて、機嫌よく義父に勧める。

「親父、遠慮なく好きなの頼んでよ」

義父は「今日は俺のおごりだ、遠慮なく食え」と、あごをしゃくって笑った。

和やかな空気に、私も肩の力が抜けていく。

義父を立てるその横顔に、私はいい食事会になりそうだと思っていた。

全員が生姜焼き定食に決まると、注文は夫が引き受けた。呼ばれた店員に、夫はよく通る声で告げる。

「生姜焼き、二つで」

私は自分の耳を疑った。二つ。その数のなかに、私は入っていない。

店員が「生姜焼き二つですね」と復唱して下がっていく。夫は平然と水を飲み、まるで隣に私がいることを忘れたようだった。

「ねえ、私の分は?」

小声で袖を引くと、夫は「あ」と間の抜けた声を出しただけだった。

けれど店員を呼び直すでもなく、夫はおしぼりで手を拭いている。私の分は、宙に浮いたままだった。

義父が店員を呼び戻した一言

厨房へ下がりかけた店員を、向かいの義父が呼び止めた。

「すみません、もう一つ頼みます」

そして夫を見据え、静かに、けれどはっきりと言った。

「生姜焼きをもう一つ。……お前、自分の女房の分を忘れてどうする」

夫の顔から、さっと血の気が引いた。

「あ、いや、頼んだつもりで…」

言い訳は途中でしぼみ、夫はそれきり黙り込んだ。呼び戻された店員も、気の毒そうに私を見て、伝票にペンを走らせている。

義父はふう、と息をついて、私に向き直った。

「悪かったね。息子がぼんやりしてて」

「いえ。お義父さんが気づいてくださって、うれしかったです」

忘れられて情けなかったぶん、庇ってもらえたことがしみた。私は下を向かず、まっすぐ義父に頭を下げた。

やがて運ばれてきた生姜焼きは、湯気の立つ三皿。ようやく食事会が始まった。

箸を進めながらも、義父はときどき夫をたしなめた。

「所帯を持ったなら、まず女房を立てるもんだ」

夫は「……はい」と、小さくなって皿に目を落としている。私はその隣で、義父の気遣いに何度も頭を下げた。

その日以来、夫は外食のたび、まず私の顔を先に見るようになった。

「お前は何にする?」

先日も、家族での食事で夫は真っ先に私の分を頼んだ。義父が「ようやく一人前だな」と笑うと、夫は照れくさそうに首をすくめる。忘れられていた席は、もうどこにもなかった。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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