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「ウルトラマン」の理解者ギレルモ・デル・トロ!『THE ORIGIN OF ULTRAMAN』で語る言葉から『パシフィック・リム』『シェイプ・オブ・ウォーター』への影響を探る

  • 2026.7.11

日本を代表する特撮ヒーロー番組「ウルトラマン」シリーズ。第1作放映開始から60年を記念して製作された『THE ORIGIN OF ULTRAMAN』が公開中だ。本作は作品誕生の舞台裏やその魅力、のちのメディアに与えた影響など、「ウルトラマン」を多角的に分析し、「『ウルトラマン』とはなんなのか?」に迫る長編ドキュメンタリー。豊富な映像資料やキャスト&スタッフなどの関係者、是枝裕和や庵野秀明、樋口真嗣、小島秀夫ほか国内外クリエイターの証言や考察で構成され、その証言者の一人としてギレルモ・デル・トロが登場する。特撮映画の大ファンであり、「ウルトラ」シリーズの生みの親、円谷英二からの影響を公言している熱烈なフォロワーだ。本作で語られる言葉を通し、デル・トロに受け継がれた「ウルトラマン」のDNAを探ってみたい。

【写真を見る】ウルトラマンと怪獣の関係は陰と陽であり、両者は宇宙のバランスを保つために戦っている

シンプルで美しい造形がウルトラマンの魅力

ロボットアニメや怪獣映画へのオマージュを盛り込んだ『パシフィック・リム』(13)や、第90回アカデミー賞作品賞、監督賞に輝いた『シェイプ・オブ・ウォーター』(17)で知られるデル・トロ。ウルトラマンマニアの彼への敬意を込めて、2015年放送の「ウルトラマンX」に“惑星ギレルモ”としてその名が刻まれるなど、両者は相思相愛の関係にある。

「ウルトラマン」を愛して止まないギレルモ・デル・トロ [c]Everett Collection/AFLO
「ウルトラマン」を愛して止まないギレルモ・デル・トロ [c]Everett Collection/AFLO

デル・トロが生まれたのは1964年。「ウルトラマン」の前章ともいうべき特撮シリーズ「ウルトラQ」(1966年放映)の製作がスタートした年でもある。彼によると、メキシコで「ウルトラマン」の放映が始まったのは彼が4歳の頃。すぐに夢中になり、ウルトラマンの絵を描いたり、空き缶や電球でマスクを自作してケガをするなど、劇中では少年時代のエピソードも明かされている。キャリア初期には特殊メイクアーティストとして活躍していたデル・トロだが、「ウルトラマン」はその原点の一つだったのだろう。

シンプルで美しい造形がウルトラマンの魅力 [c]TSUBURAYA PRODUCTIONS
シンプルで美しい造形がウルトラマンの魅力 [c]TSUBURAYA PRODUCTIONS

初代ウルトラマンは頭からつま先までシルバー一色のスリムなボディに、筋肉に沿って引かれた赤いラインが特徴。頭部には目と口のほか、なめらかな突起があるだけと極めてシンプルだ。これをデル・トロは、わずかなエレメントだけで美しく見えるよう構成された絶妙なデザインだと分析し、「ウルトラマンというどこにもない芸術形式」と絶賛する。考えてみると「ヘルボーイ」シリーズの半魚人エイブ・サピエンや『パンズ・ラビリンス』(06)のペイルマンなど、デル・トロのシンプル系クリーチャーのデザインは、ウルトラマンに通じる佇まいを持っている。

ヘルボーイと共に戦う半魚人エイブ・サピエン(『ヘルボーイ』) [c]Everett Collection/AFLO
ヘルボーイと共に戦う半魚人エイブ・サピエン(『ヘルボーイ』) [c]Everett Collection/AFLO

宇宙のバランスを保つために戦うウルトラマンと怪獣

そんなウルトラマンが闘うのが個性豊かな怪獣たちだ。『パシフィック・リム』で巨大モンスターを“カイジュウ”と呼称し話題を呼んだデル・トロは、怪獣たちを自分にとって信仰の対象だと明言。お気に入りのモンスターにレッドキングやバルタン星人、アントラー、ピグモンなどを挙げ、その理由としてデザインの美しさに加え、無邪気で愛らしく、子どものような感性を持っていることだという。怪獣は邪悪で恐ろしいが同時に人間と同じように個性の持ち主であり、そこが人間に殺されるだけの存在として描かれるアメリカ映画のモンスターとの違いだと指摘する。

「ウルトラマン」など特撮作品の怪獣を思わせるカイジュウ(『パシフィック・リム』) [c]Everett Collection/AFLO
「ウルトラマン」など特撮作品の怪獣を思わせるカイジュウ(『パシフィック・リム』) [c]Everett Collection/AFLO

シンプルなウルトラマンのデザインに対し、怪獣たちは様々な生き物をかけ合わせたりデフォルメしたりと個性的。ウルトラマンをはじめ怪獣たちをデザインしたのは彫刻家の成田亨であり、生前の当人によると美しく秩序を体現するウルトラマンと対をなす混沌としたカオスが怪獣のコンセプトだったそうだ。このことからもデル・トロは、両者を“陰と陽”だと説明し、宇宙のバランスを保つために戦うのだという。この陰陽の図式は『ブレイド2』(02)や「ヘルボーイ」、『パシフィック・リム』などヒーロー映画のほか、想像力豊かな少女がファシズムを体現する義父に命を懸けて抗う『パンズ・ラビリンス』にも見て取れる。

【写真を見る】ウルトラマンと怪獣の関係は陰と陽であり、両者は宇宙のバランスを保つために戦っている [c]TSUBURAYA PRODUCTIONS
【写真を見る】ウルトラマンと怪獣の関係は陰と陽であり、両者は宇宙のバランスを保つために戦っている [c]TSUBURAYA PRODUCTIONS

神聖さや畏怖を感じさせる怪獣とアニミズムな宗教観

忌み嫌われながらも人間のために戦うブレイドやヘルボーイをはじめ、『シェイプ・オブ・ウォーター』や『フランケンシュタイン』(25)でも人間から迫害される異形の者を題材にしてきたデル・トロ。その魅力についてアウトサイダーへの共感を挙げているが、是枝監督との対談では、怪獣に惹かれる理由として日本とも共通するメキシコの宗教観に触れている。

孤独な女性が人間に捕らわれた異形の「半魚人」と心を通わせる『シェイプ・オブ・ウォーター』 [c]Everett Collection/AFLO
孤独な女性が人間に捕らわれた異形の「半魚人」と心を通わせる『シェイプ・オブ・ウォーター』 [c]Everett Collection/AFLO

カトリック人口の多いメキシコだが、スペインからカトリックが入る以前は日本と同じくあらゆるものに霊や神が宿る多神教(アニミズム思想)の国だった。モンスターを単なる悪とせず、神聖さや畏怖を感じる存在として描かれたウルトラ怪獣はメキシコ人にとっても受け入れやすい存在なのだ。デル・トロが「ウルトラマン」に夢中になった要因には、趣味や好みを超えた深い部分での共感があったのかもしれない。

「ウルトラマン」とはなんなのか? [c]TSUBURAYA PRODUCTIONS
「ウルトラマン」とはなんなのか? [c]TSUBURAYA PRODUCTIONS

『パシフィック・リム』で“円谷節”を再現してみせたギレルモ・デル・トロ

「ゴジラ」シリーズで知られ、円谷プロを設立して「ウルトラマン」を生みだしたキーマンといえば、日本特撮の父、円谷英二。デル・トロは円谷について、ウォルト・ディズニーや宮崎駿と同様、自身の世界を作り上げた日本の映像史上最も重要なクリエイターだと語る。緻密なミニチュアへのこだわり、ダイナミックな炎や爆発の演出を称え、ウルトラマンと怪獣の闘いで崩れゆくビルの映像すら美しさを持っていると惜しみない称賛を送る。

「ウルトラマン」を生みだした日本特撮の父、円谷英二 [c]TSUBURAYA PRODUCTIONS
「ウルトラマン」を生みだした日本特撮の父、円谷英二 [c]TSUBURAYA PRODUCTIONS

そして『パシフィック・リム』ではそのスタイルが意識されている。デル・トロは都市を破壊しながら取っ組み合う人型巨大兵器イェーガーとカイジュウによるバトルだけでなく、カメラワークや中に人が入っているかのようなカイジュウたちの振り付けなど、細部に至るまで“円谷節”を再現。メタリックなイェーガーと有機的なカイジュウたちの皮膚感、カラーリングを含め、そのベースにあるのはまさに「ウルトラマン」なのだ。

イェーガーとカイジュウの取っ組み合いには「ウルトラマン」の影響が(『パシフィック・リム』) [c]Everett Collection/AFLO
イェーガーとカイジュウの取っ組み合いには「ウルトラマン」の影響が(『パシフィック・リム』) [c]Everett Collection/AFLO

ロサンゼルス近郊にあるデル・トロの邸宅には、 荒涼館(Bleak House)と名付けられた一角がある。これまで収集してきた希少本や絵画、コミック、彫刻から映画のデザイン画から小道具、フィギュアなどデル・トロの“好き”がぎっしり詰まったミュージアムで、ウルトラマン関連のフィギュアも収められているという。是枝監督との対談にあたりデル・トロは、テーブルに並べられたウルトラマンやゴモラ、ゼットンなどのフィギュアを目にして「全部持ってるよ」とほほ笑む。

クリーチャーに対して、単なる趣向を超えた深い部分で共鳴しているデル・トロ(『ブレイド2』) [c]Everett Collection/AFLO
クリーチャーに対して、単なる趣向を超えた深い部分で共鳴しているデル・トロ(『ブレイド2』) [c]Everett Collection/AFLO

そんなデル・トロが思いの丈を語った『THE ORIGIN OF ULTRAMAN』を観ると、彼が生みだしてきた映画たちの理解や味わいもまた違ったものになるだろう。

文/神武団四郎

※宮崎駿の「崎」は「たつさき」が正式表記

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