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強い倦怠感が続く「慢性疲労症候群」、脳の掃除機能との関連を発見

  • 2026.7.10
慢性疲労症候群と「脳の掃除機能」の関連を発見 / Credit:Canva

慢性疲労症候群は、単なる「疲れ」ではありません。

強い倦怠感、睡眠障害、思考がぼんやりするブレインフォグなどが続き、日常生活に大きな影響を及ぼす深刻な疾患です。

しかし、なぜこうした症状が起こるのかは、今もはっきりしていません。

オーストラリア・グリフィス大学(Griffith University)の研究チームは今回、脳の“掃除機能”の異常が、慢性疲労症候群の新たな手がかりになる可能性を示しました。

研究の詳細は2026年6月19日付で学術誌『Frontiers in Neuroscience』に掲載されています。

目次

  • 慢性疲労症候群の原因は?脳の「老廃物処理システム」に注目
  • 脳の「掃除機能」の低下が、「睡眠障害」や「ブレインフォグ」と関係していた

慢性疲労症候群の原因は?脳の「老廃物処理システム」に注目

慢性疲労症候群は、医学的には筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)とも呼ばれます。

代表的な症状には、強い疲労感、睡眠障害、集中力の低下、認知機能の不調などがあります。

これらは本人の意思や気分だけで説明できるものではなく、近年では免疫や炎症、神経系の異常との関係が調べられています。

今回の研究が注目したのは、脳の「グリンパティック系」です。

これは、脳脊髄液と脳内の液体の流れを通じて、脳内にたまった代謝老廃物を洗い流す仕組みだと考えられています。

とくに興味深いのは、このグリンパティック系が睡眠中に活発になるとされている点です。

脳は起きて活動している間に老廃物を生み出します。

そして眠っている間に、脳脊髄液などの流れを通じて、その老廃物を処理しているというのです。

もしこの仕組みがうまく働かなければ、脳内の老廃物処理が滞り、それが神経炎症や認知症状に関わる可能性があります。

そこで研究チームは、ME/CFS患者31名と健康な対照群27名を対象に、MRIを使って脳を調べました。

DTI-ALPSという非侵襲的なMRI解析法によって、脳内の水分子の拡散を測り、グリンパティック系の働きを間接的に推定したのです。

解析の結果、ME/CFS患者では健康な対照群よりもDTI-ALPS指数が低く、グリンパティック機能が低下している可能性が示されました。

より詳細な結果は次項で見ていきます。

脳の「掃除機能」の低下が、「睡眠障害」や「ブレインフォグ」と関係していた

研究でまず示されたのは、ME/CFS患者の全体的なDTI-ALPS指数が、健康な対照群より有意に低かったことです。

これは、ME/CFSの人では、脳の老廃物処理システムがうまく働いていない可能性を示します。

さらに左右の脳を分けて調べると、右半球ではME/CFS群のDTI-ALPS指数が健康な人より低くなっていました。

一方で、左半球では有意な差は確認されませんでした。

つまり今回の研究では、グリンパティック機能の低下がとくに右半球で目立つ可能性が示されたのです。

しかし、なぜ右半球で目立つのか、まだ分かっていません。

研究チームは、過去にもパーキンソン病や側頭葉てんかん、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などで、左右差を伴うグリンパティック機能の異常が報告されていると指摘しています。

また、今回の結果で重要な別の点は、DTI-ALPS指数の低下が症状の重さとも関係していたことです。

ME/CFS患者では、全体のDTI-ALPS指数が低いほど、睡眠障害が重い傾向がありました。

また、同じく指数が低いほど、集中困難の症状も重い傾向が見られました。

これは、ME/CFSでよく見られる睡眠の問題や、頭がぼんやりして集中しにくい症状と、脳の掃除機能の低下が関係している可能性を示すものです。

一方で、疲労そのもの、痛み、病歴の長さ、身体機能などとは、今回の解析では明確な関連は見られませんでした。

そのため、この研究を「慢性疲労症候群の原因が完全に分かった」と受け取るのは早すぎます。

正確には、ME/CFSのなかでも睡眠障害やブレインフォグを説明しうる、新しい生物学的な手がかりが見つかったという段階です。

また、この研究には限界もあります。

対象人数はME/CFS患者31名と健康な対照群27名であり、まだ小規模な予備的研究です。

さらに一時点の状態を調べた横断研究であるため、グリンパティック機能の低下がME/CFSの症状を引き起こしているのか、逆に症状や睡眠障害の結果として低下しているのかは分かりません。

利き手や睡眠姿勢など、グリンパティック機能に影響しうる要因も十分には調整されていません。

それでも今回の結果は、長らく原因が分かりにくかったME/CFSを、脳の生理的な仕組みから理解するための重要な一歩となりました。

強い倦怠感やブレインフォグの背後には、脳が眠っている間に行う「掃除」の不調が関わっているのかもしれません。

参考文献

In a First, Chronic Fatigue Syndrome Linked to The Brain’s Clearing System
https://www.sciencealert.com/scientists-discover-a-potential-driver-of-chronic-fatigue-syndrome-hiding-deep-in-the-brain

元論文

Disrupted glymphatic function and its relationship with sleep and cognitive impairment in ME/CFS assessed via DTI-ALPS
https://doi.org/10.3389/fnins.2026.1875420

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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