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「能力を持て余している」という感覚が、仕事に不満を抱かせる

  • 2026.7.9
「能力を持て余している」という感覚が仕事に不満を抱かせる可能性 / Credit:Canva

同じ仕事でも、「必要な業務だ」と受け止める人もいれば、「なぜ自分がこんなことを?」と感じる人もいます。

その違いは、本人が「自分は能力を持て余している」と感じているかどうかにあるのかもしれません。

米ヒューストン大学(University of Houston)などの研究チームは、こうした「過剰資格」感が、仕事を“不当なタスク”として受け止める心理につながることを示しました。

この研究は2026年5月22日に、学術誌『International Journal of Hospitality Management』でオンライン公開されました。

目次

  • 「自分がやる仕事ではない」という感覚はどこから来るのか
  • 不満を強めるのは「ムダな仕事」よりも「自分にやらせるのはおかしい」という感覚

「自分がやる仕事ではない」という感覚はどこから来るのか

職場には、誰かがやらなければならない仕事がたくさんあります。

ホテルやレストランのような接客業では、受付、案内、待機、入力作業、清掃、補助的な業務など、状況に応じて幅広い仕事を担当する必要があります。

しかし同じ仕事でも、ある人にとっては普通の業務であり、別の人にとっては「自分にやらせるのは不当だ」と感じられることがあります。

研究チームが注目したのは、従業員が「自分はこの仕事に対して能力や経験が高すぎる」と感じる状態です。

これは、客観的に見て本当に優秀かどうかではなく、本人がそう感じているかどうかを指します。

研究チームはまず、アメリカとイギリスの参加者109人を対象に、ホテルのフロント係を想定したシナリオ実験を行いました。

参加者には、従業員が「修士号と6年の管理職としての経験を持つ人物」である場合と、「高校卒業で1年の経験を持つ人物」である場合が示されました。

そのうえで、客がいないロビーに立っている、古いソフトの報告書を新しいシステムへ手入力する、といった仕事が、その従業員にとって妥当かどうかを評価してもらいました。

結果として、高い学歴や経験を持つ設定の従業員ほど、同じ仕事を「自分の時間に見合わない」「ふさわしくない」と評価されやすくなりました。

つまり、仕事の内容が同じでも、その人の学歴や経験をどう想定するかによって、仕事の妥当性の評価が変わる可能性が示されたのです。

より詳細な結果は、実際の職場で行われた調査から見えてきました。

不満を強めるのは「ムダな仕事」よりも「自分にやらせるのはおかしい」という感覚

研究チームは次に、中国・北京のチェーンレストラン46店舗で働く従業員225人を対象に、実際の職場での調査を行いました。

ここでは、過剰資格感、不当なタスクの知覚、離職意向、職場での問題行動、上司からの尊重などが調べられました。

論文では、不当なタスクを2種類に分けています。

1つは、そもそも誰がやっても不要だと感じる仕事です。

もう1つは、仕事自体は必要かもしれないが、「それを自分にやらせるのはおかしい」と感じる仕事です。

調査の結果、自分を過剰に有能だと感じている従業員ほど、仕事をこの2種類の不当なタスクとして受け止めやすいことが分かりました。

そして、離職したい気持ちや職場での問題行動と強く関連していたのは、特に「自分にやらせるのはおかしい」という感覚の方でした。

ここでいう問題行動には、遅刻、シフトの欠勤、仕事の質の低下、勤務中の私用などが含まれます。

なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。

研究チームは、その背景に「相対的剥奪感」があると考えています。

これは、「本来なら自分はもっと良い仕事や扱いを受けるはずなのに、それを得られていない」と感じる心理です。

単に作業が面倒なのではなく、その仕事を通じて「自分の能力が軽く見られている」と感じるため、不満が強まりやすいのです。

一方で、上司から尊重されている従業員は、そうでない従業員に比べて、「自分にやらせるのは不公平だ」と感じるタスクの報告が28%少なかったことも分かりました。

これは、上司が仕事の意味を説明し、従業員の貢献を認め、敬意を持って接することで、「自分が軽んじられている」という感覚を和らげられる可能性を示しています。

ただし、そもそも不要だと感じられる仕事については、上司の尊重だけでは改善しにくいことも示されました。

その場合は、仕事の任せ方だけでなく、業務そのものを見直す必要があるでしょう。

この研究は、職場の不満が仕事内容だけでなく、「その仕事を任されることで自分がどう扱われていると感じるか」からも生まれることを示しています。

参考文献

Employees who feel overqualified view more work tasks as unreasonable
https://phys.org/news/2026-07-employees-overqualified-view-tasks-unreasonable.html

元論文

Reasonable for others, but not for me: Perceived overqualification and the perception of illegitimate tasks in the hospitality industry
https://doi.org/10.1016/j.ijhm.2026.104756

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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