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奨学金生活の女子大生と、才能あふれる芸術男子。住む世界の違うふたりがだんだん惹かれあっていく、眩しくて切ない青春群像劇『嵐に舞うプシュケ』【書評】

  • 2026.7.8

【漫画】本編を読む

『嵐に舞うプシュケ』(おむ・ザ・ライス/KADOKAWA)は、奨学金で大学に通い、勉強とアルバイトに追われる主人公・卯野みつばが、芸術専攻の満谷怜との出会いから、退屈で平凡だった日常が少しずつ変わっていく青春群像劇である。

みつばは、ある日ひょんなことで出会った怜に、研究室を掃除する代わりに、コンビニで好きなだけ買っていいという少し変わった雇用関係を結ぶ。そこから、住む世界の違うふたりの距離がゆっくりと近づき始める。怜は、ハイブランドの服を着こなし、絵の才能があり、読者モデルをしているという人気者。だが口数は少なく、愛想もなく、偏食で、どこか掴みどころがない。みつばにとっては、自分とはまったく違う世界で生きる人間だ。それでも怜が時折見せる優しさや、ふとした言葉に触れるたびに、みつばの心が少しずつ動いていく。貧しさや忙しさの中で「余白」を持てずにいた彼女の日常が、怜との出会いによって色づいていく様子が繊細に描かれる。

第2巻ではその感情がさらに深まっていく。「怜は単なる雇い主で、自分とは住む世界が違う人」と思っているのに、みつばは彼の一言に一喜一憂してしまう。怜から美術史の個人授業を受けたり、美術専攻の他の学生たちと交流したりと、アルバイトと勉強だけだったみつばの毎日は怜とかかわっていくことで明らかに変わり、彼にとっての特別な存在になりたいという気持ちが止められなくなっていくのだ。

本作の魅力は、恋のときめきだけでなく、「足りなさ」を抱えた若者たちの姿が描かれるところにもある。お金、才能、居場所、愛情、自信など、誰もが何かを持っていて、同時に何かを欲している。その不完全さが相手への興味や憧れ、時には痛みとなって表れる。だからみつばと怜の関係は甘いだけではなく、少し苦く、危うく、目が離せなくなる。

誰かの存在によって昨日までの景色が違って見える瞬間がある。平凡だった日々がだんだん色づいていく、まぶしい青春の物語だ。

文=練馬麟

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