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エッセイスト・長瀬ほのかさんの1か月連載コラムがスタート。初回は、「はじめての熱海で、揚げかまぼこを食べる」

  • 2026.7.9

はじめて熱海を訪れた。東京出身の夫は家族と来たことがあるらしいが、私は少し前まで熱海が何県にあるのかさえ知らなかった。遠く離れた北海道で生きてきたから、というのは言い訳でしかないが、地名はよく知っているのに地理も景色も何一つ思い浮かばない場所というのが日本国内にたくさんあって、その多くに電車で行けてしまうことに、東京に越してきたこの数年ずっと驚かされている。

2時間ほど在来線に揺られ、熱海に着いた。熱海といえば食べ歩きらしいという情報は得ていたので、「さあ食べ歩くぞ」とすぐさま意気込んだ。まずは知人から教えてもらった揚げかまぼこの店を目指して商店街を通り抜ける。

熱海について検索すると、若い世代の発信者による食べ歩き動画がたくさん出てきた。SNS映えするスイーツなんかも多数紹介されていたので、今はおしゃれな店が立ち並ぶ場所になっているのかもしれないと想像していたが、実際は古き良き佇まいの店が多く、全体的に落ち着く雰囲気だった。平日だったのでそこまで混雑もしておらず、観光客も年配の人が多かった。

揚げかまぼこで頭をいっぱいにしながら歩いていると、途中の土産店で夫が急に立ち止まった。何かおいしそうなものでも見つけたのかと思いきや、熱心に眺めていたのは店先に陳列されていたメンダコのキーホルダーだった。「赤はラスイチだ」とかなんとか言いながら、そそくさとレジに向かった。

赤いメンダコを連れ、揚げかまぼこの店へ。お酒も販売しており、店内でかまぼこを食べながら立ち飲みができる。「いか大葉」と「しいたけ坊っちゃん丸」というのを買った。「いか大葉」ももちろんおいしかったが、「しいたけ坊っちゃん丸」がすごい。まるごと入った椎茸が肉厚で、すり身との相性も抜群で大変美味だった。「熱海ビール」のラベルが気分を盛り立てる。私は今、熱海に来ているのだ。そんなふうにはっきりと思わせてくれるのがありがたい。

伊豆揚げ。右から「いか大葉」、「しいたけ坊っちゃん丸」。
夫が真っ先に買ったメンダコのキーホルダー。
気分が上がる熱海ビール。

エッセイスト 長瀬ほのか

出典 andpremium.jp

1988年北海道生まれ。東京都在住。古生物学者の夫との暮らしを記したエッセイ「古生物学者の夫」がnote主催の創作大賞2024で双葉社賞エッセイ部門を受賞。同作を収録した初のエッセイ集『わざわざ書くほどのことだ』(双葉社)を2025年に刊行。https://x.com/nagase_h

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