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出生数の低下はリベラルに起きていて、保守派は維持している(米国調査)

  • 2026.7.5
Credit:OpenAI,ナゾロジー編集部

現在、世界的に先進国では出生数の低下が広く見られています。

少子化というと、経済的な問題もよく語られますが、同時に社会的な価値観の変化も無視できない要因として語られています。

結婚や出産を避け「自分の時間を大切にする」、こうした考えの人は主に政治的には左派(リベラル)寄りに多いと言われており、実際多くの研究がその相関を報告しています。

しかしリベラルな人ほど子供を作らないなら、将来的にはこの価値観を持つ人は世代を重ねると減っていくことになるのでしょうか?

今回紹介する研究は、この点を米国の長期データから調べたものです。

オーストリア・ウィーン大学(University of Vienna)のFieder氏とHuber氏は、米国GSSのデータを用いて、1903〜1982年生まれの人々の政治志向と、最終的に持った子どもの数との関係を分析しました。

その結果、古い世代では左派・中道・右派の出生数に大きな差は見られませんでしたが、1940年代半ば以降に生まれた世代では、左派寄りの人々の出生数が大きく下がる一方、右派・保守寄りの人々では比較的維持される傾向が見つかったのです。

もちろん、これは米国のデータであり、日本にそのまま当てはめられるものではありません。

それでも、「少子化は経済だけでなく、結婚・家族・個人の自由をめぐる価値観とも関係するのか」という問いを考えるうえで、興味深い手がかりになります。

この研究の詳細は、2026年6月19日付けで、科学雑誌『Scientific Reports』で公開されています。

目次

  • 少子化は「誰の出生数が減っているのか」
  • 将来的にリベラルな意見は減っていく?

少子化は「誰の出生数が減っているのか」

少子化は、ふつう「国全体の出生率が下がっている」という数字で語られます。

しかし平均値だけを見ると、その内側でどのような人たちの出生数が変化しているのかは見えにくくなります。

同じ社会にいても、結婚や子どもを持つことを「自然な人生の流れ」と考える人もいれば、「それは選択肢の一つでしかない」と考える人もいます。

研究者たちが注目したのは、このような価値観の違いが、実際の出生数との間に関連が見られるのかという点です。

今回の研究では、米国の人々の政治意識、宗教、家族観、教育、生活意識などを長期的に調べてきた代表的な社会調査「General Social Survey(GSS)」のデータが使われました。

対象となったのは、1903〜1982年に生まれた40歳以上の人々で、男性1万681人、女性1万2294人です。

研究者たちは、対象者を5年ごとの出生世代に分け、政治志向と最終的に持った子どもの数を比較しました。

ここで重要なのが、今回は「子どもを持ちたいか」という希望ではなく、出産期を終えた人々が「実際に何人の子どもを持ったか」を調べたという点です。

出生数を見るうえで目安になるのが、「人口置換水準」です。

これは、人口が長期的に大きく減らないために必要とされる出生数の目安で、先進国では一般に1人の女性あたり約2.1人とされています。

結果を見ると、古い出生世代では、左派・中道・右派の間で出生数に大きな差はありませんでした。

ところが、1943〜1947年生まれ以降の世代では、右派寄りの人々は人口置換水準を保っていたのに対し、左派寄りの人々では出生数が大きく下がり、人口置換水準を下回っていたのです。

さらに分析では、宗教参加が多いことは子どもの数の多さと関連し、教育年数の長さは子どもの数の少なさと関連していました。

つまり、米国では新しい世代ほど、出生数の低下が左派寄りの人々に強く表れ、右派・保守寄りの人々では比較的維持されていたのです。

ではこの結果は、将来的にどのような社会を予測するのでしょうか?

将来的にリベラルな意見は減っていく?

なぜ左派・リベラル寄りの人々では出生数が下がり、右派・保守寄りの人々では比較的維持されたのでしょうか。

論文では、「第二の人口転換」という考え方が示されています。

これは、近代化した社会で、個人の自由、世俗化、家族観の変化が進み、結婚や出産が以前ほど当然視されなくなることで出生率が下がる、という考え方です。

研究者たちは、左派・リベラル寄りの価値観は、個人主義、平等主義、子どもを持たない生き方の受容と結びつきやすいと説明しています。

こうした価値観は、出産を遅らせること、子どもの数を少なくすること、あるいは子どもを持たないことと関連すると考えられます。

一方、右派・保守寄りの価値観は、家族の価値、宗教性、伝統的な役割と結びつきやすいとされます。

そのため、保守寄りの人々では、結婚や子育てが望ましい生き方として位置づけられやすく、出生数が比較的維持されやすい状況にあるのです。

この見方は、日本の少子化を考えるうえでも示唆的です。

日本でも、賃金や雇用、教育費の問題は少子化と深く関わっています。

しかし同時に、「結婚するのが普通」「子どもを持つのが普通」という考え方は以前より弱まっています。

結婚や出産を選ばない生き方への理解が広がることは、個人の自由を広げる一方、社会全体の出生数を下げる方向にも働きます。

しかしこうした考えを持つ人ほど、子供を作らないとなると、その価値観は世代を重ねるほど受け継がれにくくなる可能性があります。

研究者たちは、先行研究において政治志向が親子間で共有・伝達されやすく、一部には遺伝的要因も関わると報告されていることから、こうした出生差が世代を超えて続けば、将来的に社会全体の政治的な構成が変わる可能性があると述べています。

ただし、これは将来の選挙結果を予測するものではありません。投票行動には、経済状況、政党、候補者、教育、投票率など多くの要因が関わるため、今回の結果から将来は保守政党が強くなると言ってしまうのは強引でしょう。

また、あくまで米国の調査であるため、この結果を単純に日本の少子化問題に当てはめて考える事はできません。

米国では、政治的な保守性と宗教、家族観、避妊や中絶への態度が強く結びつきやすい社会的背景があります。

日本では、宗教と政治、政党支持と家族観の関係が米国とは異なります。

また論文では、白人アメリカ人では政治志向による出生差が明確だった一方、黒人アメリカ人では同じような強い分化は見られなかったとされています。

この点について、研究者は黒人アメリカ人では「リベラル」「保守」という分類が白人アメリカ人ほど一貫して理解されていない可能性があり、そのため政治志向が家族観と結びつきにくい可能性を指摘しています。

また、この研究は観察研究であり、政治志向が出生数を変えたのか、子どもを持つ経験が政治態度に影響したのかを完全には切り分けられてはいません。

とはいえ、少子化が進む社会においては、誰が、どのような価値観のもとで、結婚や出産から距離を置くようになっているのかを考慮することは、将来を予測する上で重要な視点になっていくかもしれません。

世間でよく聞く意見も、こうした人口比率変化から変わって行くのかもしれません。

元論文

Falling fertility on the left as key driver of US birth decline
https://doi.org/10.1038/s41598-026-57582-3

ライター

相川 葵: 工学出身のライター。歴史やSF作品と絡めた科学の話が好き。イメージしやすい科学の解説をしていくことを目指す。

編集者

ナゾロジー 編集部

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